SS 「ヌンチャクニキの受難」
こちらはカクヨム様の作者近況ノートで投稿した、第一章完結記念のSSとなります。ヌンチャクニキ主人公です
「ホアタァアーーーーーーーッッ!!!」
俺の名前は青葉サブロー。28歳、押しも押されぬ中級探索者だ。本業はプログラマーだが、副業兼ストレス発散目的で探索者をしている。
『ゴギャッ!?』
俺の目の前で、ゴブリンソルジャーが頭を叩き潰され、鼻から体液を噴き出しながら白目を剥いて倒れ伏した。
「ふぅ、討伐完了。」
ブオンブオンと、俺は自らの獲物を“振り回して”付着した血液を落とした。
「ふふふ…。高い買い物だったが、買ってよかったぜ。ボーナスを全ツッパした甲斐があった。」
感触を確かめるように再びそれを振り回す。わずかに青い光を放ち高速回転するそれ。鎖がじゃらじゃらと音を立て、先端部分が空を斬り裂く音が響く。
そう、俺の新たなる相棒。ミスリル含有“ヌンチャク”だッ!
◎
何体かモンスターを討伐し、ざっくり数万円くらいの稼ぎになったのでダンジョンを出た。今日は日曜日、明日からまた仕事。はぁ、仕事したくねぇ~…。今抱えてる案件、仕様書の内容コロコロ変えてきやがるからストレス半端ないんだよな…。
俺のスキルは「ヌンチャク」だ。他にもいくつかスキルを持っているが、絶望的にかみ合いが悪い。最近ハマっているモンゴローという配信者のコメント欄では、「ヌンチャクニキ」として認知されている。
なんでこのスキルが発現したのは謎だ。青葉サブローという名前から、学生時代は「ブルー・スリー」なんてあだ名をつけられていたが、まさかそれが原因か…? ダンジョンの神がいるのなら、一言文句を言ってやりたいくらいだぜ。
「あれ、サブロー君?」
「あ、斉藤さん。お久しぶりです。」
新宿ギルド一階、飲み仲間の探索者が声をかけてきた。彼は斉藤さん。ストレスフルという探索者パーティのリーダーだ。ストレス発散で探索者をやっている者同士ということもあって、何度か飲みにも行っている。
「最近ストレスフルの皆さん見なかったですけど、怪我でもされたんですか?」
「いやぁ、実はちょっとやらかしちゃってね。彷徨う影の集団に襲われて療養してたんだ。」
「えぇ!? 大丈夫だったんですか!?」
「ああ、奇跡的にね。死んだかと思ったんだが、突如影たちがどこかに行ってね。うちの田中曰く、“呼び込みさんの音楽が聞こえた”とかなんとか言ってたんだが、幻聴だと思う。今はメンクリに通っているよ。」
ん? 呼び込みさん…? まさか、モンゴローのあの配信か…? うそーん、人知れず斉藤さんたちを救っていたのか。そんなことある…?
「どうした? サブロー君。宇宙猫みたいな顔をしてるぞ。」
「あ、い、いえ。なんでもないです。お互い気をつけましょうね!」
「ああ。また今度飲みに行こう!」
◎
「アチョォオオオァアアアアアーーーッ!! チキショーッ! あのクソ業者、今更仕様変更なんてできるかぁーーーーーッッ!!!」
殺すぞ~~~~~~~~~~~~~!
『『『キーキー!!!』』』
くそーーーーーーーーっっ! 真昼間なのになんでこんなに吸血蝙蝠がいるんだよ! あ、そうかバナナか! 俺が食ってたバナナを狙ってきたのか! ダンジョン内でバナナのパウンドケーキなんて作るんじゃなかった。匂いにつられて群れで出てきたのか?
料理スキルを伸ばしたくてできるだけダンジョン内で料理するようにしてたんだが、チキショウ。モンゴローの配信でフルーツはやばいって聞いていたのに、イライラしすぎて忘れてたぜ。
「オラッ、バナナなんてくれてやらぁっ!」
アイテムボックスから、おやつ用に買ったバナナの房を取り出して、遠くに向かって放り投げた。すると、吸血蝙蝠たちは目の色を変えてバナナを追って去っていった。
「はぁ、はぁ、モンゴローのおかげで命拾いしたぜ。」
配信で見たゴブリンと同じ末路をたどるところだった…。<三半規管強化>が無ければ、あのままやられていただろうな。
「何匹かは倒せてるな。素材だけ回収させてもらうか。」
ミスリルヌンチャク(税込134万円)に頭をつぶされた吸血蝙蝠を解体していく。こいつらの素材は一匹当たり1万円ほどになる。3匹倒したから、悪くない稼ぎだ。魔石をほじくり出して、牙と皮膜をはぎ取っていく。
『ピヒャロロロロロロローーーッ』
む、この鳴き声。シーフカイトか!
見上げると、鋭い爪をまっすぐに伸ばして突っ込んでくる。
「ふん、舐めるなよ…? すれ違いざまに叩き落として、お小遣いの足しにしてくれるわッ!」
ビュンビュンッ
ミスリルヌンチャク(税込134万円)が唸りをあげる。日の光を反射して、ミスリル特有の薄い青色が軌跡を描く。
あと2秒、射程距離に入ッ
『<スティール>』
シーフカイトが、すんでのところで方向転換。そのまま離脱していった。
「…ん?」
あれ?
「え、え、あれ? うそでしょ?」
お、あ、え?
「…俺の、ヌンチャクは???」
空を仰ぎ見ると、シーフカイトが細長い何かを持っている。それは日の光を反射して、うっすらと青い光を反射している。
「あ、あぁ、あぁぁあぁああああ…。」
ぐにゃあ。
俺の、俺のヌンチャクを、返せぇええええええええええ!!!
走って追いかけるも、追いつけるはずもなく。
俺はその場で崩れ落ちた。
【ヌンチャクニキ本日の収支】
ゴブリンソルジャー素材 +1万円
吸血蝙蝠素材 +3万円
ミスリルヌンチャク紛失 -134万円
計:-130万円
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このヌンチャクは本章で無事返却されたことが明言されております()




