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関門反攻作戦3

「……化け物か、あの人は」


山本の視界の中で、和泉の機体が重力を無視したような軌道で宙を舞った。

山間部から奇襲を仕掛けてきた数機の敵。それに対し、和泉は迷いなく最小限の回避行動から一閃、近接ナイフとレールガンの零距離射撃で、最短経路を塞ぐ敵を次々と沈黙させていく。


「山本、遅れるな」


「了解」


山本は僚機として影のように和泉に追従しながら、戦闘の衝撃で一部が吹き飛んだ山の斜面の合間に、地下へと続くトンネルの入り口を捉えた。新幹線を地下から最高速度で叩き出し、この地形を最大限に利用して奇襲を仕掛ける。そのためには、一分の狂いもないタイミングで「射出口」を確保し、進路を繋がなければならない。


和泉はトンネルへ突入する直前、鋭い声で無線を飛ばした。


「源田、石井。座標PT-09に回れ。そこも時間通りに穴が開くように準備しろ。そこが新幹線の射出口になる。岩本、佐々木! 貴様らは橋の防衛を放棄しろ。そのままトンネル内部に突入、新幹線の線路を力技で曲げて、爆破地点から飛び出すように固定しろ」


橋の死守という絶対命令を覆す指示に、無線越しでも伝わる一瞬の静寂。だが和泉の声は止まらない。


「曲げた線路が『ジャンプ台』だ。……間に合わない場合はそいつを盾にしてでも道を繋げ。この穴が開かなければ、俺たちはただ地下で鉄の塊を走らせて死ぬだけだ」


山本の機体を引き連れ、和泉は暗渠へと飛び込んだ。

静寂が支配するトンネル内を、最速のクリアリングで駆け抜ける。その先に、白銀の巨体が眠っていた。


「……見つけた」


人は乗っておらず、電力も途絶えている。だが、和泉は迷わず自身の機体を車体に接続し、動力パイプを直結させた。

「電力供給、開始。……よし、生きてる。独力で動かせるぞ」


和泉の機体から凄まじい電力が吸い取られ、モニターが警告を発するが、彼は意に介さない。


「山本、持って来た爆薬とガソリンを全部ここへ降ろせ。九州部隊が残していった集積所の予備も、地上からかき集めて積み込め。……急げ、一分も無駄にするな」


山本の機体から爆薬が次々と積み込まれ、新幹線は「巨大な爆弾」へと作り変えられていく。


「俺は地下から行く。山本、お前は地上に戻れ。源田と石井に合流し、地上戦の準備をさせろ」


「了解! 出口で待ってますからね」


山本は機体を反転させ、再び地上の戦火へと飛び出した。その直後、軍の全オープン回線に、和泉の冷徹な、しかし全軍を震わせる声が響き渡った。


『全軍へ。本時刻より30分後、09:34:00を期して作戦を実施する。……小島、あとはお前の仕事だ。道を開けろ』


司令部でその声を受け止めた小島は、短く、しかしどこか懐かしむように答えた。


『了解した。……いつも通りだ。一秒の誤差も出さん』


和泉の咆哮のような通信を背に受け、山本は加速する。


「源田、石井! 座標PT-09を爆破、指定の時間に合わせろ! 岩本、佐々木、線路の固定を急げ! 終わったら橋のポイントへ戻って総員待機だ! 09:34:00、あの中隊長が鉄路を裂いて飛び出してくるぞ!」


地下深く、新幹線の巨大なモーターが唸りを上げ始める。

それは、絶望を打ち砕くための、世界で一番速い「槍」への変貌だった。

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