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関門反攻作戦4

「……よし、全車両の同調完了。タイマーセット」


薄暗い操車場の片隅で、結城は端末に最終コードを流し込んだ。目の前に並ぶ無人の在来線車両群は、結城のハッキングにより、09:34:00に連動して走り出す「動く質量弾」へと変貌を遂げている。


「南雲、設定完了。……線路はどうだ」


南雲はアグレッサーのマニピュレーターを使い、在来線のポイントを力技で固定し、即席のジャンプ台を築き上げていた。

「完了した。和泉さんの本命を通すための『払い』には十分だ。……これより座標PT-09へ向かう。爆破組を援護するぞ」


二機のアグレッサーは、死の静寂を保つ鉄の群れを背に、爆音が響く山岳地帯へと加速した。


同時刻。地下深くのトンネル内。

「……これを跳ね上げ、ジャンプ台にする」


岩本の機体がサーチライトで新幹線用の鉄路を照らし出す。和泉の指示に迷いはない。やるべきことは一つだ。

「佐々木、来る途中の放置装甲車を持ってこい。土台にする」

「了解。岩本はその間にレールの固定を解除しておけ」


二機は通信を交わす前から駆動系を唸らせていた。佐々木が装甲車を回収しに走るのと同時に、岩本はマニピュレーターをレールの継ぎ目に突き立てる。

「……上がれッ!」

凄まじい金属音が轟き、分厚い鋼鉄がゆっくりと、しかし確実に上向きの「弧」を描き始めた。そこへ佐々木が装甲車を力技で滑り込ませ、即座に溶接補強を開始する。


地上、座標PT-09。

「……源田、敵の哨戒機3機接近。あと30秒で射程に入る」


石井はサーマルセンサーを睨んだまま低く呟いた。

「俺が機銃で2機の足を止める。その隙にレールガンで1機ずつ潰せ」

「了解」


源田の機体が火を吹いた。石井の放つ牽制射撃が夜の闇を切り裂き、先行する2機の進路を強引に逸らす。その一瞬の停滞を源田は見逃さず、レールガンの蒼白い閃光で1機を精密に射抜いた。


「石井、あとは任せる。俺が射撃しつつ爆破地点に向かう」


源田は残る2機に対し、流れるような動作で追撃を見舞った。回避行動を予測したレールガンが2機目を貫き、爆風を抜ける最短経路で3機目の動力部を両断する。


その静寂を待っていたかのように、石井は隔壁を解析し、最後の起爆コードを叩き込んだ。

「小島さん。09:33:45に起爆します。飛び出しの15秒前。瓦礫の落下と気圧変動のマージンを考慮しました」


司令部の小島は、流れてくる膨大な戦術データを冷徹に捌きながら短く答えた。


「了解。設置後、ポイントへ移動しろ」


小島は支援班に指示を飛ばし、座標PT-09周辺へ煙幕弾を投射。敵の残存戦力の視線を遮り、石井たちの離脱を援護する。


『岩本、佐々木。状況は』

『固定完了。一発なら確実に持ちます』


小島の声がさらに鋭さを増す。

『全機離脱。指定合流ポイントへ。……和泉、聞こえるか』


モニターには、地下深くで急速に高まるエネルギー反応が映し出されていた。


『……加速、開始』


和泉の一言が、ノイズ混じりの通信機から流れる。

白銀の槍が、真っ暗なトンネルの奥で爆発的な勢いで滑り出した。


「09:34:00まで、あと300秒。……さあ、見せてみろ、和泉」


小島は、刻一刻と刻まれる秒数を見つめながら、静かに呟いた。

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