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強行着艦

「大隊長。……露払いは、俺に任せてもらおうか」


和泉の号令に応えるように、源田の機体がハッチの中央へと進み出た。

強風が吹き荒れる成層圏の中、源田は機体をしっかりと装甲に固定させると、背部にマウントしていた巨大なレールガンを前方に構え、その銃口をハッチの強固な継ぎ目へと力強く押し当てた。


コアの全エネルギーが、レールガンの砲身へと収束していく。

青白いスパークが弾け、極限まで圧縮された破壊の力が臨界点に達した。


「……吹き飛べッ!!」


源田の咆哮と共に、至近距離から放たれた音速の雷弾がハッチの装甲を粉砕した。

鼓膜を破るような轟音と目眩ましの閃光。分厚い銀色のフタが内側へとひしゃげ、母艦の腹に巨大な「暗い穴」が穿たれた。


「一番乗りはもらうぜェッ!!」


穴が開いた直後、誰よりも早くその暗闇へと飛び込んだのは、片腕を失いながらも獰猛な闘志を燃やす酒井の機体だった。そして、砲撃の反動をスラスターで殺した源田の機体も、すぐさま酒井と並ぶようにして内部へと突入していく。


「各機、源田大尉と酒井中隊長に続け! 決して足を止めるな!」

金子の凛とした声が響く。


装甲を失い砲身だけを残した金子中隊、満身創痍の片倉中隊、そして小島の乗る後方支援部隊が、次々と開かれた大穴へと吸い込まれていく。

背後からは、母艦の防空システムによる無数のレーザーが彼らを逃さじと降り注いでいたが、和泉の紫の翼がそれを最後の一瞬まで弾き返し続けた。


そして、味方の全機がハッチを潜り抜けたのを見届けると、和泉は機体を固定していた重力ベクトルを解除し、最後に自らも大穴の中へと身を投じた。


ヒュオォォォォ……ッ。


機体がハッチの内部へ滑り込んだ瞬間、これまで鼓膜を激しく打っていた成層圏の暴風音が嘘のように消え去った。


「……百五十五機、突入完了」


最後尾で着艦姿勢に入った和泉は、自分を含めた全軍が母艦の内部へ入り込んだことをメインモニターで確認し、短く報告した。


「なんだ、ここは……」


メインカメラ越しに広がった光景に、和泉は息を呑んだ。

先行して突入した部隊が、油断なく武器を構えながら円陣を組んでいる。だが、和泉たちを驚かせたのは敵の奇襲ではなかった。


そこは、血と硝煙と鉄錆に塗れた外の世界とは、あまりにもかけ離れた場所だった。


上下左右、果てが見えないほど広大な空間。

壁も、天井も、床も、すべてが影ひとつない「真っ白」で構成されていたのだ。機械的な配管も、電子的なコンソールもない。ただ無機質で、無菌室のように清潔で、狂気すら感じるほどの純白の世界。


だが、その異常な静寂と白さの中で、彼らは決して「歓迎」されていたわけではなかった。


『……全機、構えろ』


源田の極度に緊張した声が、通信帯に低く響く。


真っ白な空間の奥。

影のない光の中に、まるで守り人のような人のシルエットが、無数に、文字通り無数に浮かび上がっていた。


外の荒野で群れていた獣のような通常機体とは明らかに違う。静謐で、洗練され、どこか神聖さすら漂わせる人型の防衛者たち。

純白の死地の中で、奴らは静かに人類の牙を待ち構えていた。

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