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命の防壁

空全体が白く染まり、空間そのものが削り取られるような轟音が響き渡った。


ドズァァァァァァァァァンッ!!


巨大な光の奔流が空域を蹂躙する。

小島が引いた光のラインに沿って、百五十五機がスラスターを極限まで噴射し、猛烈な爆風と熱線を紙一重で躱していく。源田に抱えられた和泉のアグレッサーもまた、極太の光束の横を滑るようにすり抜けた。


「やりやがった……! 抜けられるぞ!」

酒井が歓喜の声を上げる。


誰もが、この圧倒的な破滅を無傷でやり過ごせると思った、その時だった。


「――しまッ!」


通信帯に、焦燥に満ちた声が響く。

酒井たち近接部隊の突出をサポートするため、最も危険な位置でカバーに入っていた片倉中隊の一機だった。直前の対空砲火の至近弾でスラスターの推力が僅かに落ちていたその機体は、回避ルートへの移行がコンマ数秒遅れたのだ。


目前に迫る、世界を消し飛ばすような光の壁。

「回避、間に合いません……ッ!」

パイロットが死を覚悟したように叫ぶ。


『――諦めるなッ!!』


和泉の血を吐くような咆哮が、通信帯を震わせた。

身動き一つ取れないはずのアグレッサーの胸部で、王のコアが狂ったように明滅する。和泉は自身の脳の血管が焼き切れる覚悟で、重力制御の全パルスを、被弾限界にあるその一機へと強制的に収束させた。


「ぐ、あああああッ!!」

和泉の鼻と口から鮮血が噴き出す。


ドガァァァァァンッ!!

破滅の光が、遅れた一機を容赦なく飲み込んだ。


「ああっ……!」

片倉が絶叫する。光の波が通り過ぎた後、そこに残っていたのは、見るも無惨な姿となった機体だった。両手両足の装甲は完全に溶け落ち、武装は蒸発。機体としては完全に大破し、ただのスクラップと化していた。


『……おい、生きてるか』

荒い呼吸を繰り返しながら、和泉が静かに問いかける。


だが、通信機からはノイズが返ってくるだけで、パイロットからの応答はない。


『和泉! パイロットの生体反応は……ある! コアも無事だ!』

後方の小島が、急いでスキャン結果を叫ぶ。

『お前が展開したバリアで直撃は免れた。……だが、完全に防ぎきれたわけじゃない。衝撃と熱量でパイロットは重傷を負い、完全に気を失っている! 機体のメインシステムもダウンしたぞ!』


その報告と同時だった。

推力を完全に失い、ただの鉄塊と化した機体が、重力に引かれて真っ逆さまに落下を始めた。


『くそっ……落ちるな……ッ!』

和泉は視界を血に染めながら、落下していく機体を重力制御で捉え、そのスピードを殺そうとする。

しかし、残る百五十四機をこの空に浮遊させ続ける絶対的な負荷と、先ほどの極限防御によって、和泉のコアと肉体は限界を超えていた。重力場が乱れ、落下速度を抑えきれない。


このまま落ちれば、パイロットは機体ごと地上に叩きつけられて死ぬ。

和泉が焦燥に歯噛みした、その刹那。


『――大隊長は、上だけ見ててください!!』


片倉の鋭い声が響いた。

片倉の操る機体が、自ら重力制御の輪から外れ、機体を反転させてスラスターを全開にする。


『あいつは俺の部下バカヤロウだ! 俺が連れて帰る!』

片倉はリミッターを解除し、遥か下層へと落ちていく味方機を追って、猛スピードで急降下を開始した。

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