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関門反攻作戦

滑走する8機の足元で、アスファルトが悲鳴を上げる。

和泉の視界――メインモニターには、破壊された車両や、倒れた将兵の残骸が流れていく。和泉はそれらを冷徹に視覚情報として処理し、最短の進路を計算し続けた。


敵の数は、こちらの想定を遥かに上回っている。

奴らもこの「橋」さえ架けきれば勝機があることを理解しているのだろう。だが、その戦法はあまりに稚拙だった。洗練された戦術など微塵もなく、ただ圧倒的な「数」という質量でこちらを圧殺しようとする、傲慢なまでの物量作戦。


「山本、左前方11時方向。3機、塊で来るぞ」


「捕捉しました。……誘い込みます」


山本の通常機が囮として一瞬だけ機体を晒し、敵の突撃ラインを直線状に固定する。そこへ和泉のレールガンが、一寸の狂いもなく「串刺し」にする電磁光を放った。火花を散らす間もなく、電磁加速された弾丸が敵3機を同時に貫通・沈黙させ、爆風が橋を震わせる。


「岩本、南雲。そっちに回った連中は遊ばせておけ。引き付けて、脚部関節だけを狙え。弾薬を惜しめ」


敵が数で塗り潰そうとする戦場を、和泉たちは針の穴を通すような精密な連携で切り裂いていく。無駄な射撃は一発もない。すべてが次の一歩を確保するための、最小かつ最大の一撃だった。


和泉は機体を大きく跳躍させ、空中から地形をスキャンする。眼下には関門トンネルへと続く巨大な暗渠、そして線路上に静止したままの在来線と新幹線。


「小島、聞こえるか。作戦を伝える」


落下のGを制動し、襲い掛かる敵の爪を近接ナイフの一閃で切り捨てながら、和泉は通信を入れた。


「現有戦力であれを砕くのは不可能だ。だが、奴らは数に頼って守りを固めている。その慢心を利用する。まず、こちらの合図に合わせて足元のトンネルを爆砕しろ。俺たちは二機で現場に向かう。準備に時間がかかる。地盤から構造を揺さぶるのと同時に、海側へ倒れるよう在来線、新幹線の順で叩き込み、衝撃を最大化させる。小島、トンネルの浸水状況を確認しろ。橋が壊れた時点で死んでいるはずだが、万が一にも奴らに利用させるな」


司令部のモニターを凝視していた小島は、即座に最新の環境データを呼び出した。


『……和泉、トンネル内はすでに海水が流入し、閉塞している。だがお前の懸念はもっともだ。工兵隊の遠隔爆破を連動させ、敵の侵入はないようにする。地盤ごと完全に封鎖してやる』


「了解した。衝撃が最大化した瞬間に、俺たち4機のレールガンを構造物中央に一点収束させる。物理的破壊、あるいは転倒による切断。質量体を真っ二つにするのが狙いだ。……それでも足りない時は、陸海空すべての攻撃を俺たちの着弾地点へ注ぎ込め。貴様が呼んだ連中の出番だ」


通信の向こうで、小島が短く、重みのある「了解した」を返した。


和泉は回避機動を続けながら、全機へ最終指示を飛ばす。


「全機、2マンセルを維持。岩本・佐々木ペアは橋の防衛と監視。南雲・結城ペアは在来線の状況確認に回れ。源田・石井ペアはトンネルの爆破準備だ。敵の数に呑まれるな、無駄玉は使わず足止めに徹しろ。……山本、俺についてこい。一番奥の新幹線を確保する」


「了解、中隊長。……振り切りましょう」


山本の機体が和泉の背後にピタリとつき、背後から迫る敵機のセンサーを電子攪乱で無効化する。

押し寄せる敵の波を、和泉たちは最小限の機動で急所だけを突き、二機のアグレッサーは戦火に包まれた線路へと急降下を開始した。


東の空がさらに白み、鉄路の上が青白い光に照らされる。

ようやく見えた。線路上に静かに眠る、白銀の車体。


「山本、準備するぞ。まずはこれでぶちかますぞ」


和泉の眼下に、新幹線の長い鼻先が映し出される。

敵が物量で押し流そうとするこの場所で、和泉は緻密に計算された「一撃」を研ぎ澄ませていた。

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