関門橋防衛作戦
「……作戦を確認する。2機1組、計4ユニットで運用。まずは接岸を阻止するため、橋の先端を叩き折る」
出撃した8機の試作機が、瓦礫の荒野を加速しながら中隊長の指示に耳を澄ませる。
「第一射で先端を砕き、構造が不安定になった瞬間、間髪入れずに2機目がその奥を狙い撃て。レールガン発射後は即時離脱。その間の隙は随伴機がカバーしろ。……繰り返すが、安全第一だ。一機の欠損も出すな。……小島、聞こえるか」
『ああ、聞こえている。戦車2両と装甲車を海岸線に展開させた』
「さすがだな。何も言ってねぇのに。小島、もう一つ頼む。俺たちがレールガンで先端を破壊した直後、橋の奥に向かって一斉掃射を叩き込んでくれ。構造体をバラけさせて、再構築の時間を一秒でも長く稼ぎたい」
『了解』
「全機、戦闘に入る」
橋に急行した8機は、小島の部隊が展開する防衛線の背後を抜け、それぞれの狙撃ポイントへと滑り込んだ。海峡を覆う霧の向こう、黒い「橋」が生物的なうねりを伴って迫る。その時、偵察班の冷徹な声が響いた。
『……敵橋頭堡、構築速度がさらに上昇。推定到達まで残り10分を切りました。目標、すでに有効射程内です』
「計算よりは早いが問題ない。岩本と私、次に山本、佐々木で行く。その間バックアップは第二小隊で頼むぞ。そのあとに状況を見てから第二小隊も攻撃に移行する。……各員、合わせろ!」
中隊長機のレールガンが、これまでにない高鳴りとともに強制充填を開始した。モニター越しでもわかる、敵の異常なまでの自己修復・増殖能力。
「――撃て!」
閃光が二条、同時に重なり、橋の先端を粉砕した。
砕け散った結晶構造が海へと崩れ落ちる。その刹那、中隊長機と岩本機は慣性ドリフトで即座に離脱。入れ替わるように山本と佐々機の機体が瓦礫から躍り出た。
「次、3、2、1……!」
山本がカウントに合わせて引き金を引くと同時に、さらに奥の構造体へ向けて次なる「牙」が放たれた。直後、小島の号令が響く。
「戦車隊、撃て! 奴らに暇を与えるな!」
10式戦車の120mm滑腔砲が火を噴き、同軸機銃の曳光弾が橋の奥へと吸い込まれていく。レールガンで穿たれた亀裂に砲弾が着弾し、再構築を試みる黒い触手を木端微塵に吹き飛ばした。
「有効だ。 再構築が止まったぞ」
山本の報告の声。だが、霧の深淵はそれを嘲笑うかのように激しく波打った。橋の崩落を無視し、結晶の破片を足場にして跳躍してくる敵の先遣隊が、こちら側のセンサーに無数の光点を点灯させた。
「第二小隊、突っ込んでくる奴らに撃て! 第一小隊はバックアップに移るぞ。……小島、敵の反撃が来るかもしれない。戦車部隊を下げさせろ、早く!」
中隊長の叫びに応じ、後方に控えていた第二小隊が火蓋を切る。同時に、第一小隊は熱を帯びたレールガンを抱えたまま、遮蔽物へと機体を滑り込ませた。
「何かおかしい。……お前ら、気をつけろ!」
中隊長の背筋を走る、正体不明の悪寒。その直後、下関の橋に、咆哮する第二小隊の火線と、撤退を開始する戦車隊の重低音が交錯する。夜を白く焼き払う、真の激戦が幕を開けた。




