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鋼の要塞、胎動の軋み

強襲揚陸艦の司令室。小島は大型モニターに映し出される大陸沿岸部の熱源反応を、無言で凝視していた。


銀色に塗りつぶされた大地の上に、点と点を結ぶように繋がり始めた黒い線――岩本たちが急ピッチで構築を進めている防衛ラインの基礎だ。彼らの手によって切り拓かれたその場所は、かつて絶望の象徴だった銀の大地を、一時的とはいえ人類の足場へと強引に書き換えていた。


小島の脳裏に、かつての九州戦線での光景がフラッシュバックする。

あの時、もし和泉たちが、そして彼らが死守したあの防衛戦が崩壊していたらどうなっていたか。蹂躙され、逃げ場を失い、一人残らず無機質な銀色の一部へと作り替えられていたであろう景色が、今の眼前の銀色の大地と重なる。


小島は強く拳を握りしめ、通信回線を艦隊全域へと切り替えた。

司令室内の空気が一変する。周囲の幹部士官たちが息を呑み、小島へ視線を向けた。彼らの瞳には、九州戦線を生き抜いた者特有の、この戦いに負ければ全てが終わるという極限の覚悟が宿っていた。


「全艦隊へ告ぐ。小島だ。今、諸君が見ている銀色の荒野は、ただの敵地ではない。かつて九州で、我々が踏みとどまった地獄の未来そのものだ」


小島の声は静かだが、艦橋の隅々にまで響き渡る重みがあった。


「あの時、我々が守ったのは日本の地だ。だが今、我々が守るべきは人類の明日だ。ここでの戦いは単なる領土奪還ではない。和泉たちが、いや、彼らと共に歩んできた我々と、先に征った者たちが命を削って切り拓いた道だ。この『橋頭堡』は、彼らの道をつなぎ、世界を救うための第一歩だと私は信じている。和泉たちが築いた足場を、絶対の砦へと昇華させるのが我々の任務だ」


小島は通信を一度切り、冷徹な指揮官の顔へと戻った。


「護衛艦艇は全艦、直ちに散開。沿岸部から沖合にかけての警戒網を敷き、海上および海岸線の索敵を徹底せよ。無用な砲煙で和泉たちや我々の視界を塞がぬよう、今は敵の様子見に徹しつつ、我々の死角を完全にゼロにしろ」

『護衛艦隊、展開! 索敵領域を拡大、敵反応を監視する』


「金子。金子中隊は三つに分割し、揚陸される船団の各所を護衛しろ。各部隊と無線を同期し、地上戦力の展開を死守せよ」

『了解した。金子中隊、三部隊に分割。船団の護衛へ移行する』


「揚陸艦隊、揚陸配置につけ! これより作戦を開始する!」


小島の号令が響き、海上で待機していた重厚な輸送艦群が、一斉にエンジンを唸らせて接岸ポイントへと突き進む。

護衛艦たちは、海上で網を広げるように散開し、いつでも即応できる体制で敵の動向を監視する。上陸船団の安全を守り、敵の反応があれば即座に迎撃する盾として、彼らは水面で静かに待機した。


「司令、モニターを! 大地が……さらに鋭く輝き始めています!」


オペレーターの震える声と共に、モニターの映像が激しく白飛びを起こし始めた。同時に、艦橋の分厚い防弾ガラス越しにも、直接網膜を焼くような強烈な銀の閃光が突き刺さってくる。


敵の防衛システムが、この異分子(人類)の侵入を「排除」すべきウイルスとして認識したのだ。大陸そのものが本格的な防衛反応を起動させ、辺り一面を刺すような光が支配する。


「来たか。……全艦、迎撃準備。これより我々は、この地獄を人類の要塞へと書き換える」


艦隊が整然と動き、銀色の大地が殺意を込めて輝きを増す。

人類史上、最も過酷で、最も誇り高い戦いが、今、幕を開けた。

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