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まったく、その気にならなくて  作者: あけの星
第二章 追っかけ弟子編

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山小屋はどこに2


 アジューは、わたしを背に乗せたまま、着地した。


――着いたよー ――


「ああ、アジュー、ありがとう、でもここはどこ?」

 わたしは、頭を少し上げてあたりを見た。

 

 周囲には霧が立ち込めている。

 その向こうに森のような影が見えた。そのあたりから虹色の光が洩れている。


――ここは、ボクたちの居場所、天界との境界。エルフの森と重なった場所だよ。ここなら安全だし、元気になるまでいるといいよー 魔力の実もあるしぃー ――


「そうなの?! ほんとに来ちゃったの?」

 わたしは、半信半疑だったけれど、霧の向こうから洩れてくる虹色の光は、普通の場所ではないことを示していた。


――降りてもいいよー ――


「うん、その前に、わたしを縛っている縄をなんとかしてもらいたいの」


 アジューの背に乗った後、少しずつ身体をずらして、落ちないよう座ったけれど、両手が使えないので、アジューにくっついたままの状態なのだ。


――そうかぁ、それを解かないとね、でもボクには、それを解くのは難しいかな……ああ、そうだ、エルフに頼もう。もう少し我慢してねー ――


 アジューは、駆けだして、虹色の光の洩れる霧の中に入った。

 

 霧を抜けた先は、光の草原が森まで続いていた。


 眩い光の草原を抜けて、森の入口にきたとき、アジューは立ち止まった。

 しばらく、じっとしていたので、誰かと交信しているのかもしれなかった。


 わたしは、上半身を起こして、あたりの幻想的な風景を見回した。

 周囲はキラキラした光が跳ねていた。森からもオーラのような虹色の光が柔らかく射している。


 ほんとうに、天界との境界なのね。この森は、もしかして、エルフの森なのかしら……


 そのとき、森の中から透き通るような長い銀髪の美しい女性が姿を現した。

 白いチュニックを着ている。女性は手招きした。


 アジューが女性に近づいていく。


 森の入口の前で、アジューは立ち止まった。

 すぐ女性がわたしを抱き寄せて、アジューから降ろしてくれた。


――ボクは、ここまでだよ。待ってるから、そのエルフと一緒に行ってきて――


「わかったわ。行ってくる」

 うなずいて、女性と一緒に森の中へ入った。

 

 森の木々の幹は銀色で、その間の道は、どこまでも続くかに思えた。

 しばらく行くと、木々の間に、小さな小屋が見えてきた。せせらぎの音もする。川があるのだろうか。


 女性は、銀の林の中の小さな小屋へ、わたしを案内し、椅子に座らせた。

「今、解いて差し上げますからね」

 鈴を振るというのがぴったりな声だった。


 彼女が縄に手を当てる。

 すると縄は一瞬、光に包まれ、光の粒子になって散って消えた。


 わたしは息を呑んだ。


 エルフの魔法!?


「さあ、これでもう大丈夫ですね」

 女性はにっこり笑った。


「あ、ありがとうございます!」


 わたしは、身体を動かして、自由になったのを確認する。


「あの、今の魔法は? 素晴らしいですね」


「エルフの魔法と言っておきましょうか」

 女性は微笑みながらわたしを見た。


「あなたは、もしかして……」

 彼女は、わたしの両肩に手を置くと、瞳をのぞきこんだ。


「まあ……これは……封印の……」

 そう言ったまま、驚きの目でわたしを見つめ、考え込んだ。


「あなたは、なぜ、封印をされたのです?」

「わたしが逃げ出さないように、です。実は――」

 

 聖魔女になるのを嫌がって逃げていたら、追っ手をかけられ、掴まってしまったのだと話した。

「――だから、わたしが魔力を使えないようにしたのです。でも、そのおかげで、聖魔女候補から外されて……助かりました」


「まあ、そうだったのですか……あなたにかけられている封印魔法は、私たちの世界では、子どもが無茶をしないように、魔法を制御できるまで、かけておく封印魔法なのですよ」

「えっ、そうだったのですか、エルフの魔法……」

 

 ジンクはエルフの魔法を習得しているのかしら?


 わたしは首をかしげた。


「それに、術には、かけた者の印が入っています。見えるものにしか見えませんが」

「それは知っています」

 魔法陣を考案すると、作り手の印が無意識に入る、もしくは意図して自分の印を入れることもできるのだ。魔法学院で習い、実践していることでもあった。

 

「そうですか……あなたのお名前を聞かせてくださるかしら? 私はヘルーネといいます」

「ルナーリアです」

「そう……あなたに封印の魔法をかけた者のことは知っていますか?」

「はい」


「この魔法は、ごく親しい者にしか、かけられない魔法です。思いのこもった相手にしか……」

「えっ」

 わたしはいぶかしげな声を上げた。


 そこまで親しくはないし、思いのこもった相手……ああ、たしかにわたしは、捕まえられる対象だったわね。だからかも。


 一人で納得する。


「この魔法は、かけた者にしか解除できません。それも知っていますね?」

「ええ。それで、彼を探しているのです」


「そう……ということは、あの子は元気にしているのですね」

「えっ?! 」

 わたしは顔を上げ、ヘルーネの顔を見つめた。



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