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まったく、その気にならなくて  作者: あけの星
第二章 追っかけ弟子編

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追っかけも修行?


 わたしは、あたりを見回した。

 

 わたしたちが座っているソファの近くには、人はいない。

 さいわい、ほとんどみんな舞踏室へ移動している。


 広間の端の方にマダーの姿がちらりと見える。そのあたりには、まばらに人がたむろしていた。その中には辺境伯の従者もいるのかもしれなかった。

  

「今からお話しすることは、決して口外なさらないと、お約束していただけますか?」


 彼がうなずくのを見て、声を潜める。

「わたしは、まったく魔力がなくなったわけではないのです。魔力を発動することはできませんが、まだ微かに種は生きています。


 今後の修行次第では、魔力を取り戻せるらしいのです。なので、わたしは魔法の修行に出るつもりです」

 

 本当は、ジンクを追っかける旅だけど、それも弟子になるための一つの課題、修行よね?


「魔力を取り戻せましたら、国境の守りにはわたしもお力をお貸しします。それまでは、聖魔女様と父の力で、守りを固めていてください。父も嫌とは言わないと思います」



「なんと! 驚きました。魔力が戻る可能性があるのですね」

「お静かに。決して口外なさらないでください」

「わかりました」

「わたしは、大魔法師になりたいのです。魔力をとりもどせたら、さらに修行に励もうと思っています。ですから、アンバー様は他のお好きな方と、ご結婚なさってくださいね。わたしは大魔法師を目指します」


「あなたは、どこへ修行に行くのです?」


 一瞬、息を止めた。まさかジンクのもとへとは言えない。苦し紛れに言う。


「超大魔法師のもとです」


 彼は首をかしげた。

「それは、どのような魔法師ですか? 聞いたことがありませんが」


「大魔法師を超えている魔法師です」

「おお、そのような方が!?」

「ええ」


 まあ、いいか。ジンクの魔法は本当に大魔法師以上だと思うもの。


 わたしは、あわてて話を変える。


「ああ、そうですわ、もしかしたら修行の途中で、アンバー領に立ち寄らせていただくことがあるかもしれません。そのときは、よろしくお願い致しますね」


「――っも、もちろんですよ、ただ修行のことは、ご両親は?」

 突然、立ち寄ると言われたことに、いっそう驚いたのか詰まりながら言った。


「もちろん知りませんわ。話すと止められるのはわかっています。アンバー様は協力してくださいますよね?」

「しかし。それは……」


「大丈夫です、一人で行くわけではありませんから。案内の者がおります」

 わたしは、アジューを思い出しながら言った。

 

「先日まで、テルナン国で一人、隠れ住んでいたことはご存じでしょう? まったく心配はありませんわ」


 心配げに見つめる彼に言う。


 きっと優しい方なのね。


 その眼差しに嘘は見えなかった。


「では――何かあったら、すぐ、アンバー様にご連絡します。助けてくださるでしょ?」


「そ、それは、もちろん」

「では、このことは、秘密ということで」


「わかった、何かあれば、すぐに知らせてください」

 しぶしぶうなずいた。


「でも、出発はいつ?」

「数日後には」


 さすがに明日とは言えない。完全に信頼したわけではなかったから。両親にこっそり話さないとも限らない。


 わたしは立ち上がった。


「では、ごきげんよう、アンバー様」

 彼も立ち上がる。

「あ、アフィンと呼んでくれますか? それと、あなたをルナーリア嬢と呼んでも? 秘密を共有した者として」

「ええ、アフィン様」

「では、ルナーリア嬢、気をつけて行かれよ」

  

 わたしは淑女の礼をして彼のそばから離れた。


 理解ある人で良かった……


 ほっとしながら、そのまま自分の部屋へ戻ろうと、広間から出た。

 わたしの姿を見ていたのだろう、マダーが後を追いかけてきた。



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