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まったく、その気にならなくて  作者: あけの星
第一章

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聖魔女候補を外される


「ルナーリア!」


 母が駆け寄ってきた。

「生きていてくれたのね! よかった……」


 男爵邸に入ったとき、真っ先に手を差し出し、抱きしめてくれた。

 続いて父と兄が。そして乳母は涙を袖で拭っていた。懐かしい家令や侍女たちも集まって、わたしの帰還を喜んでくれたのだった。


 わたしの家族は温かだった。

 身勝手な行動で心配させてしまった。

 それでも、許し受け入れてくれる。

 

 でも、わたしは自分の気持ちに正直に生きたい。

 だから、またみんなを悲しませるかもしれないけれど、ごめんなさい。


 心のなかで頭を下げる。



 その夜、遅く始まったが、久しぶりの家族の夕食は和やかに終わった。

 みんな、二年間のわたしの暮らしを知りたがった。

 記憶喪失だったこと、魔力がなくなったことを話すと、驚き残念がった。


 ある程度は、知らされていたらしい。

 しかし直に本人の口から聞くと、その事実が重くのしかかる。

 両親は、わたしが聖魔女にならないことを、確定だと知ったのだった。



 家に帰る前、神殿に立ち寄り、アルスタル伯父様に会った。


 王子からの知らせで、先を越されたことを知ったらしい。

 本当は、自分が見つけたかった、とさんざんぼやいていた。


 ジンクは、わたしを神殿まで送り、それから王子を迎えに行った。

 あの後すぐなのに、彼の魔力は底なしだろうか?


 王子の護衛の魔法騎士たちが、それぞれ移動魔法でやってきた後に、二人が神殿に現れた。

 わたしの魔力を再確認するために。


 神官長はわたしを椅子に座らせると、緊急に招集された審査員の魔法師たちと、取り囲むように座った。


 いよいよだ。


 魔力状態の確認が始まった。

  

 緊張する。


 ばれたりないかしら……


 かれらの視線が波のように交差する。


 やがて、審査員たちは首を横に振って、神官長と顔を見合わせた。

 魔力は感じ取れなかったらしい。


 ジンクの封印魔法が、これほどとは! 伯父様までわからないなんて! 


 そっとジンクの方に視線を向ける。

 彼はそ知らぬ顔で神官長たちを見ていた。


 判定が確定した。


 そこで聖魔女候補から外された。


 やった! わたしは胸をなでおろした。


 王子とジンクが移動魔法で帰って行った後、伯父様はわたしを呼んで、事の顛末を詳しく聞いた。


「なぜ、魔力がなくなるようなことが起きたのだ?」

 わたしは、王子に告げたと同じことを話した。

「おまえは山に隠れていたのか、そこに魔物が現れるとは! どんな奴だったのだ?」

 

「山に隠れていたら――」

 

 ほんとうは、山小屋だけど……


「黒々とした目に見つめられたと思ったら、魔力を吸い取られていて……」

 

 まあいいわよね、ジンクを魔物にしちゃうけど、ほんとうだもの。魔力を封印されたのは……


「よく見たら、そいつは角の生えた巨大な紺色の化け物、羽の付いた魔物だったの……」


 ごめん、アジューも魔物にしちゃったけど……


「わたしの魔力を吸って飛んで行ったわ」


「そんな魔物がテルナンの山にはいるのか」

「そうみたい。その魔物より、もっと巨大な目も見たことがあるわ」


 魔物とは言ってないので、女神様もお許しくださるわよね……


「ふむ、もう少しテルナン国について調べる必要がありそうだな。その他に何か見たか?」

「ああ、そういえば、恐ろしい煙のようなものが人々を襲っているのを見たわ。みんな一斉に逃げて。逃げ遅れた者は、病気になるのですって」


 伯父様は腕を組んでうなった。

「そういう報告は、聞いてないが……」


 そのとき、神官の一人が顔をのぞかせた。


 彼はうなずいてから言った。

「迎えの馬車が来たらしい。帰ってよいぞ」


 解放されたわたしは二年ぶりのわが家へと急いだのだった。


 馬車の中で、わたしは大きく息を吐いた。

 無事に終わった。

 安堵感で胸が一杯になる。

 

 ふと胸元に何かが微かに当っている。

 収納バッグの口に何かが挟まっているらしい。

 すっと胸元に手を入れて、収納バッグから少しはみ出ているものを、ぐっと掴んで取り出した。


 短剣だ! しかもちゃんと鞘に収まっている。

 

 おじさん――ジンクが、あのとき魔法で移動させたのは、わたしの収納バッグだったの?!

 

 でもドレスに着替えたときは、なかった……いや、気がつかなかっただけだろうか?

 もしかして、時間差で? まさかね……


 そんな魔法が、ないとはいえなかった。

 ジンクなら可能かもしれない。


 決めた!

 わたし、彼の弟子になるわ。

 そして新たな聖魔女が決まったら、封印を解いてもらおう。


 そのとき馬車が、わが家の前に停まった。





ルナーリアは、勝手に弟子になると決めちゃいましたが、

どうなることやら……(^^ゞ

引き続き、『追っかけ弟子』編も、どうぞよろしくお願い致します☆m(__)m

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