閉じ込められちゃった2
わたしは、せせらぎの音で目を覚ました。
調理場の窓から朝日がさして小屋を明るくしていた。
寝返りを打ったところで、はっとした。
あれ?
昨夜、ベッドに入ったかしら?
どうも記憶がない。
しかし自分はベッドに寝ている。
瞬きして、飛び起きた。
薄茶のチュニックワンピースは着たままだ。
皴を伸ばしながら、ベッドから降りる。
ソファの方へ行くと、テーブルの上は、手鏡と櫛以外きれいに片づけられていた。
え、おじさん、帰ってきたの?
小屋の中には、姿はない。
あのまま寝てしまったわたしを、ベッドまで運んでくれたのかもしれない。
少し恥ずかしい気がした。
しかし、それ以上に、話ができなかったことが口惜しかった。
問い詰めたかったのに……
わたしは小屋の外へ出てみた。
誰もいない。
せせらぎの音がしているので、どこだろうと、小屋の周りをまわってみた。
ちょうど、裏手の山肌から湧水が一筋、流れ落ちて下の小さな川に流れ込んでいた。川といっても、溝ほどの川だった。
清浄な水だということは、すぐにわかった。飲んでも大丈夫そうだ。
わたしは、その水で手と顔を洗い。口をすすいだ。
その流れ落ちる水を見ながら、ここから抜け出す方法を、あれこれ考えていたときだった、後ろに人の気配がした。
「無駄だ。この結界からは抜け出せない」
わたしの考えを読んだようなおじさんの声が、耳元で聞こえた。
「ひどいわ! 」
わたしは振り返って、彼に怒りをぶつけた。
思わず彼に向かって手を上げる。
あっさり、両腕を取られたが、わたしはけりを入れた。
一瞬、彼はひるんだかに見えたが、うまくかわして、わたしをひょいと持ち上げ、肩に担いで小屋へ向かった。わたしは、ずっと、じたばたしていた。
魔法が使えないと何もできないことを、嫌でも思い知らされたのだった。
「このじゃじゃ馬! 大人しくしなさい、一応、女だろう?」
小屋に入るとわたしを下ろして言った。
「そんなの関係ないわ! ひどいことをしたのは、そちらでしょ! わたしに封印魔法をかけたわね!」
おじさんは軽く笑った。
「ばれたか。仕方ないのさ、おまえをつかまえる役目だからね。おまえに魔法を使われたら、おれだって、どうなるかわからないからな」
わたしが口惜しげな顔をしているのを見て、可笑しそうな顔で言った。
「これから出かける。コートを着なさい」
「誰に会うの?」
「その前にすることがある」
ソファからコートを取りわたしに着せかけた。
しぶしぶ立ってコートを着たわたしを彼は引き寄せて、瞬間移動魔法を発動した。
瞬間移動魔法は、通常の移動魔法より早いが高度な術で、魔力も使う。
わたしがまだ制御できていないのに、おじさんは、いともたやすく制御している。口惜しい。
発動とほぼ同時に降り立ったのは、立派な邸と思われる部屋の一室だった。
来客用の部屋らしい。
応接の椅子とテーブルの周囲には、高価そうな調度品が置かれている。
わたしが部屋を見回していると、初老のメイドと若いメイドが姿を現した。
おじさんは、わたしの腕を引っぱって、そのままメイドたちに引き渡した。
「頼んだよ」
わたしがあっけにとられているうちに、二人のメイドは、両側から、恐ろしい力でわたしの腕を押さえて、強引に隣の部屋へ連れて行った。
二人とも魔法の心得があるのかもしれなかった。
連れていかれたのは、化粧ルームだった。奥の方にバスタブが用意されている。
「これから、お支度をさせていただきますね、ちょっと失礼いたします」
魔法が使えないわたしは抵抗もできず、あっという間に、バスタブに入れられたのだった。




