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まったく、その気にならなくて  作者: あけの星
第一章

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閉じ込められちゃった2


 わたしは、せせらぎの音で目を覚ました。


 調理場の窓から朝日がさして小屋を明るくしていた。

 寝返りを打ったところで、はっとした。


 あれ?


 昨夜、ベッドに入ったかしら?


 どうも記憶がない。

 しかし自分はベッドに寝ている。

 瞬きして、飛び起きた。


 薄茶のチュニックワンピースは着たままだ。

 皴を伸ばしながら、ベッドから降りる。

 ソファの方へ行くと、テーブルの上は、手鏡と櫛以外きれいに片づけられていた。


 え、おじさん、帰ってきたの?


 小屋の中には、姿はない。


 あのまま寝てしまったわたしを、ベッドまで運んでくれたのかもしれない。

 少し恥ずかしい気がした。

 しかし、それ以上に、話ができなかったことが口惜しかった。


 問い詰めたかったのに……


 わたしは小屋の外へ出てみた。

  

 誰もいない。


 せせらぎの音がしているので、どこだろうと、小屋の周りをまわってみた。

 ちょうど、裏手の山肌から湧水が一筋、流れ落ちて下の小さな川に流れ込んでいた。川といっても、溝ほどの川だった。


 清浄な水だということは、すぐにわかった。飲んでも大丈夫そうだ。

  

 わたしは、その水で手と顔を洗い。口をすすいだ。


 その流れ落ちる水を見ながら、ここから抜け出す方法を、あれこれ考えていたときだった、後ろに人の気配がした。


「無駄だ。この結界からは抜け出せない」


 わたしの考えを読んだようなおじさんの声が、耳元で聞こえた。


「ひどいわ! 」

 わたしは振り返って、彼に怒りをぶつけた。


 思わず彼に向かって手を上げる。

 あっさり、両腕を取られたが、わたしはけりを入れた。

 一瞬、彼はひるんだかに見えたが、うまくかわして、わたしをひょいと持ち上げ、肩に担いで小屋へ向かった。わたしは、ずっと、じたばたしていた。

 魔法が使えないと何もできないことを、嫌でも思い知らされたのだった。


「このじゃじゃ馬! 大人しくしなさい、一応、女だろう?」

 小屋に入るとわたしを下ろして言った。


「そんなの関係ないわ! ひどいことをしたのは、そちらでしょ! わたしに封印魔法をかけたわね!」


 おじさんは軽く笑った。

「ばれたか。仕方ないのさ、おまえをつかまえる役目だからね。おまえに魔法を使われたら、おれだって、どうなるかわからないからな」


 わたしが口惜しげな顔をしているのを見て、可笑しそうな顔で言った。

「これから出かける。コートを着なさい」

「誰に会うの?」

「その前にすることがある」

 ソファからコートを取りわたしに着せかけた。


 しぶしぶ立ってコートを着たわたしを彼は引き寄せて、瞬間移動魔法を発動した。


 瞬間移動魔法は、通常の移動魔法より早いが高度な術で、魔力も使う。

 わたしがまだ制御できていないのに、おじさんは、いともたやすく制御している。口惜しい。

 

 発動とほぼ同時に降り立ったのは、立派な邸と思われる部屋の一室だった。 

 来客用の部屋らしい。

 応接の椅子とテーブルの周囲には、高価そうな調度品が置かれている。


 わたしが部屋を見回していると、初老のメイドと若いメイドが姿を現した。


 おじさんは、わたしの腕を引っぱって、そのままメイドたちに引き渡した。


「頼んだよ」


 わたしがあっけにとられているうちに、二人のメイドは、両側から、恐ろしい力でわたしの腕を押さえて、強引に隣の部屋へ連れて行った。

 二人とも魔法の心得があるのかもしれなかった。


 連れていかれたのは、化粧ルームだった。奥の方にバスタブが用意されている。


「これから、お支度をさせていただきますね、ちょっと失礼いたします」

 魔法が使えないわたしは抵抗もできず、あっという間に、バスタブに入れられたのだった。



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