第二十話 いい人
「あははは!朔仁くんキャッチボール下手ー。」
「ちょっと優しく投げてくれない?」
戻ってくるたびに会話を重ねていく。
「やだー。・・・ねぇ、ねえちゃんってグループでどんな感じ?」
しばらくボールを見つめてから質問と一緒に投げてきた。
「瑛華は___」
「お母さん。朔仁は?」
「寛蓮と公園でキャッチボールだって。もうすぐ帰ってくるんじゃない?」
いつの間に仲良くなってる。朔仁、今外に出て大丈夫なのかな?
「ただいま。」
「ただいまー!」
「あ、ヒロ!朔仁!おかえり。」
心配したけど家に来たときより元気が出ている。・・・これは寛蓮にまかせてもいいかな。
「ヒロ仲良くしてあげてね。私は学校の準備あるから。」
「任せて姉ちゃん!」
満面の笑み。安心して任せることができる。寛蓮はすごいな、本当に。
瑛華と何かを話してから寛蓮は、また俺の服の裾を引っ張った。
「朔仁くん!リビングに来て。紹介したい子がいるの。モフィー!」
なんだ?夕暮れの温かい光に照らされて何かが光っている。
「ワフッ!」
「保護犬のモフィー!黒柴ちゃんだよ。」
柴って警戒心が強いんじゃなかったっけ?初対面の俺にお腹を見せているけど、本当に保護犬?
「モフィーは特別なのよ。」
瑛華のお母さんが夕飯の支度を終え、リビングに来た。
「最初はすごかったもんねー。こうやってガウー!って威嚇してたんだよ。」
全身でモフィーの真似をしている。
「でも、寛蓮が根気強くペースに合わせて愛情を注ぎ込んだ結果。黒柴とは思えないほど懐っこくなったのよ。まぁ、ヤバい人には猟犬の血を発揮するけど。」
「そうそう。この前変なオジサンがいたとき吠えて威嚇してたよ。モフィーは賢いもんね。」
「・・・名前どんな意味なの?」
「モフィーはネモフィラの花から、ねえちゃんが名付けたんだ。『どこに行っても、誰にでも心を許せるように』って。モフィーが心を許す人は皆いい人なんだよ!」
誇らしげにモフィーの頭を撫でる寛蓮。
「ワン!」
モフィーは短くなき、俺の足に乗ってきた。恐る恐る手を伸ばす。
「あったかい。」
「でしょ!」
不安で震えて冷たくなっていた手が暖かくなっていく。小さくそれでありながら巨大な存在はゆっくりと、でも確実に俺の体を温めた。
「そういえば、なんで皆電子ゲームとかしないの?今どきの子はそういう感じじゃないの?」
「あー・・・ほら、モフィーと遊びたいからさ!」
「そう、なんだ。」
「瑛華ー!!!ご飯できたよ!」
「はーい!」
我が家のご飯は少し早い。寛蓮が小学生なので早寝早起きを習慣づけるためだ。
リビングに行くと朔仁が立ち尽くしていた。慣れないリズムで朔仁には悪いな。俺も久しぶりの生活習慣だから、ちょっと慣れてないけど。
「瑛華・・・。なんかやることある?」
「いや、座ってていいよ。」
寛蓮と俺がお母さんの手伝いをする間、朔仁はモフィーを触っている。
「ワフッ!」
モフィーが軽やかに歩いて玄関に向かった。おっ、モフィーが玄関に行ったということは・・・。
「ただいま。」
玄関の扉が開く音と同時に声がした。父が帰ってきたのだ。
「おかえりー。」
「お、お世話になります・・・。」
朔仁は挨拶の中でどんどん声が小さくなっていった。
まあ、気まずいよな。だけどお父さんのコミ力の高さと包容力なら朔仁すぐに打ち解けることができるだろう。
「君が瑛華と同じグループの朔仁くんだね。娘がお世話になっています。この前はヤクザに巻き込まれた時、助けに行ったせいでこのような事態に___」
「いえ、大切なメンバーですので。俺が行きたいから行っただけです。」
朔仁・・・。
「おとうさん、それあそこのザンギ!?」
夕食を並べ終えた寛蓮が父の持った白いパックを見て嬉しそうに聞いた。
「そうだぞー。今日は瑛華と朔仁くんが来るから、北海道のものを食べてもらいたくてね。」
「早く!早く、ご飯食べよ!」
母がザンギを皿に移すのを待ち切れない寛蓮。今日のメニューはホッケとアツアツザンギだ。なんでも一週間、俺達がいる間は北海道の郷土料理を出す予定なのだとか。
「いただきます。」
家族の挨拶と同時にモフィーにも「よし!」と言う。皆で食べ始めた。
食卓ではホッケを食べた朔仁が震えている。家族では直箸で良くなっているが、さすがに今日は取り分けている。
「口に合わなかった?」
そう聞くと朔仁は首を横にブンブンと振り、ただ一言呟いた。
「あったかい。」
「それは良かった。」
「さあさあ!冷めないうちに食べよう!」
(コンビニ飯しか食べていなかったから、本当に。・・・本当に。)
「・・・おいしい。」
朔仁が呟いた。
「泣くほどっ!?」
受験勉強に本腰をいれるので、ペースダウンして3週間に1話投稿したいと思います!
楽しみにしている方には申し訳ないですが、どうか応援してくださると嬉しいです!




