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メンズグループのオーディションに女だけど応募したら、推しと同じグループになっちゃった。  作者: タッピー


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第十三話 北の仮面

父は厳しかった。組長である父は物心ついたときから厳しかった。

剣道、柔道、空手道⋯俺は様々な武術を叩き込まれた。泣くことも許されず、ましてや甘えることなど1度もしなかった。いや、できなかった。


「父上!剣道で1位を取りました!」

部下を連れて歩いていた父を見つけ、俺は声高らかに報告した。実力を示せば褒めてもらえると思ったのだ。

「⋯」


父上は一瞬立ち止まって、振り返ることさえせず歩き出した。

「ッ父上!!!」

俺は走って父上の裾を掴んだ。が、振りほどかれた。その拍子に俺は転んだ。


(これで父上は心配してくれるはず!)


現実はそんなに甘くない。

「立て」

そのあまりにも冷たい声に、当時の俺は息をのみ素早く立った。俺はその時、初めて殺気というものを本能的に理解した。


「すみません」

このような無様を晒すことは、父上の顔に泥を塗ることと同義だ。

「⋯次はない」


父上の姿が見えなくなるまで頭を下げた。

「坊っちゃん。坊っちゃん大丈夫ですか?」

父上の姿が見えなくなっても頭を下げ続けた。


初めて人を殺した年、日付、曜日、場所、全て覚えている。いや、覚えさせられている。切り裂く感覚、殴り潰す感覚、思い出すだけで吐き気がする。だから逃げたかった。だからあの家を秘密にしている。

誰とも仲良くできない自分に嫌気がさしたから、俺はアイドルオーディションに応募した。


ああ、俺が真っ当な人生を歩んだ少年で、純粋なアイドルになれたら良かったのに。



「っ」

規則正しく鳴る電子音、真っ白な天井、消毒の匂いがする部屋。

「皆、寝ちゃってるじゃん⋯」

(今は、朝の5時か)


「皆、待っててくれたんだな」

こわばっていた表情が緩む。

(皆、無事でなりよ⋯)

瑛太(えいた)の腕には縄の痕がついていた。


「⋯っ、ごめん。」

横たわっていた男は体を上げ、寝ている瑛太の手をとった。


「っん。あれ、寝ちゃってた!?って東狐!み、皆⋯」

「しー。寝かせてあげて」

体を上げた東狐(とっこ)は人差し指を唇に当てながら言った。なぜだか俺は、その顔を見たら安堵した。


「分かった」

さっきは皆、騒がしく心配して看護師さんに怒られたもんなー。


「⋯それはそうとて、お前どういうことだよ!」

皆を起こさないように小声で叫んだ。俺は正直頭にきていたのだ。何か隠してると思えば、想像以上だし無許可でGPS付けているわで問い詰めないわけにはいかない!


「僕⋯いや、俺はヤクザの息子だ。異例の若さで次期組長とも呼ばれている。分かるだろ?俺は人を殺してきた。関わる以上、今回みたいな危険がつきまとう。邪道を歩いてきたんだよ。⋯俺はアイドルをやめる。金輪際、お別れだ」

「⋯⋯」


窓から映る外は街灯が消えて暗い。病室の温かなオレンジ色のライトは、東狐の顔の影をより強くする。

確かに、危険だ。関わらないほうが良い。


「⋯嫌だ。認めない。俺はアイドルやめていいなんて言ってない。俺はお前のことを友達だと思ってるぞ!お前が素じゃなくても友達だし、メンバーだ!確かに素姓は知らない、だけどお前は、東狐はデビュー前俺の緊張を解いてくれたし、俺を助けてくれた」


気づいたら俺は泣いていた。少し冷静になったほうが良い。でも、これだけは今、伝えないと!


「ッ俺の大切なメンバーを、友達を不徳と言うな!⋯東狐はすごいんだぞ!周りが見れてるし、こまめな気遣いができる。ピュアカラに必要なんだよ!お前が北狐(ほっこ)だとしても俺にとって、皆にとって東狐だ!あと、今抜けるのは早すぎるっ!」


無きながら怒鳴り散らかす声が静かな病院に響いた。それを東狐は目を丸くして聞いていた。

「お、俺は皆にとって、ピュアカラにとって必要なのか?」


「必要だっつってんだろ!」


窓から日の出が見えてくる。

(俺の視界だけでなく心まで明るくなったのは、日の出のせいだろうか)

「⋯あ、甘えても良いのか?」

「そもそも甘えも頼りもしねぇからこうなったんだろ、バカ!一人で抱え込みすぎだ、ボケ!」


「そ、そうか。甘えて良いんだな」

東狐は赤子のように微笑んだあと、わっと泣き出した。俺も言えたいことが言えたし、これで危機は消え去ったかな。



「ングッ。⋯⋯グフッ」

なんだ?


「アーハハハハハッ!ひー、おもしろい。お前ら泣きすぎだろぉ。ハハハ、お腹いてぇー」

舟音(あかね)と、栄虎(えいこ)が涙とともに大爆笑しだした。

「あかっち!?それに、えこくんまで⋯。よく見れば朔仁と羅潔まで!」


「⋯俺ら、瑛太がでかい声出したから起きたよ」

「すごい怒鳴り声だったよー」

と、朔仁と羅潔が言った。あれ?聞こえちゃってたの。恥じぃー。


「ンッグフッ。そんで東狐く〜ん。アイドルするよね?」

咳払いしながら栄虎が問う。


「うん。俺の名前は北狐(ほっこ)拓也(たくや)。25歳。本名の自己紹介は初めてだな。改めてよろしく」

東狐⋯。あ、北狐って呼んだほうが良いのかな?

「あのー、呼び方ってどうすれば⋯?」

羅潔が代わりに聞いてくれた。


「俺は東狐だよ。芸名がってこともあるけど、皆にとって俺は東狐だろ?な、瑛太」

「そうだな。改めてよろしく東狐」

「おぉい。俺らもな!」


賑やかに和解した俺たち。北狐の仮面が崩れた。

だが、次の瞬間今度は雰囲気は崩れる。


「俺、父上にヤクザやめてアイドルすることを言うよ」

今回はついつい熱が入って文量が多くなってしまいました!いつもは1000字ちょいくらいなのですが・・・。

どうしても削りたくない、大切なエピソードだったのでそのままお届けしました!


父上に正直に話すという、東狐の爆弾発言で終わった今回。果たして東狐の運命はいかに・・・?

次回もどうぞお楽しみに!

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