ヤクザの組長と父
「は?!やめろって、絶対やばいでしょ!」
俺達が必死に止める中、東狐は沈黙を保ったままだ。
「なんで言おうと思ったの?下手したら死ぬかもよ?」
えこくんは、いつも通り穏やかな口調でありながらリーダーにふさわしい。
「・・・追ってくるかもしれへん。それに今の俺は北狐や。言わな、俺の過去を俺自身が認められない。」
静かだが、心の通った声だった。
「そこまでの覚悟があるあら許す。ただし!無事で戻ってこい。リーダー命令だからね!」
「ありがとう。無事で帰ってこないと、皆に怒られるか。」
東狐は柔らかい表情で微笑んだ。
退院した東狐はすぐに事務所に向かった。
「父上。今日は申し出があり・・・。」
「____撃たれたそうだな。」
「ッ。」
なぜ知っているのだ?まさかあの場にいた!?いや、父上の情報網なら知っていないほうが不思議か。
「不甲斐ない息子め。・・・申し出とは。」
「はい。私はヤクザをやめようと思います。」
事務所の空気が歓迎モードから、一気に凍りつく。
「何、冗談言ってるんですか。つまんないですって。」
幹部以外の部下たちが笑うが、俺は真顔を保つ。それを見た者たちは本気だということに気づくだろう。そしてボス___冬也に判断を任せる。
「・・・なぜだ。」
「私はヤクザに向いてません。それに私を必要としてくれる仲間ができました。ですので、真っ当な人生を送りたく、本日は申し出に来ました。」
「ッざけんな!組を裏切る気か!」
部下たちが騒ぐが俺には雑音だ。
父上の判断が絶対なのだ。最悪、皆殺しか・・・。念の為に小型ナイフを持ってきたが、どこまで役に立つか。
「・・・お前は、拓也は甘えん坊だったな。」
父上は、ポツリと呟いた。
俺は唖然とした。久しぶりに名前を言われた。それ以前に内容が驚きだ。どういうことだ?
「物心付く前、いつも私か結希春に甘えていた。・・・立派に育ったんだな。」
父上は俺を見た。
「その申し出を許可する。お前はもう北狐組ではない!・・・東狐と名乗るが良い。」
父上は、にやりと笑った。
さすがは父上。見られているとは。親バカにはかなわんなぁ・・・。
「有難う御座います。・・・それでは___」
「拓也。」
物腰の柔らかい声が東狐を呼び止めた。
「母上っ・・・!病気は、体調は大丈夫なのですか!?」
俺は慌てて駆け寄った。
「大丈夫よ。完治も夢ではないってよ。」
「そうですか。」
ほっとした。母は、なかなか治りづらい病気にかかって入院していた。前までは見舞いもしていたが、次期組長候補となってからは行けていなかった。
「拓也の優しさは結希春 由来か。」
「ふふっ。あなたも十分優しくってよ。」
父上の笑顔、久しぶりに見た。本当にあの父上なのか?でも椅子から降りない当たり、組長や。
_____25年前。
「冬也。この子の名前は何にする?」
「やはり北狐のように冬の要素をいれたいな。」
「嫌よ。あなたみたいな堅物に育ったらどうするのよ。」
顔をつねられる。
「いだだだだっ。」
「そうねぇ。あなたの冬也から也をとるとして、拓也なんてどう?」
「拓也・・・。」
「そう!開拓の拓!未来を切り開いていくという意味よ。この子にはヤクザは向かない気がするからねぇ。」
「未来を切り開く、か。良い名だ。」
「己の道を歩んでいきますように。」
・・・この笑顔に私は惹かれたのだ。ヤクザの組長である私の仮面を剥がして、人にしてくれる。拓也には結希葉のような母がいる。その分、私が厳しく育てよう。
____大きくなったなぁ。
「それじゃあ、気をつけるのよ。」
「はい。母上も。」
「応援してるわよ〜。」
うふふと笑いながらうちわを振る母上。穏やかだ。だが、後ろでうちわを振る部下は気色悪い。
「北狐、じゃなくて東狐様ー!応援してますよー!!!」
「母上の応援、ありがたく頂戴します。・・・お前らの応援はいらねぇーよ!」
笑いが起きる。
けど俺の過去は消えない。せめて、これからの人生を真っ当に、輝けるように俺を認めて、俺になろう。
みなさん、こんにちは!こんばんは!おはようございます!
評価やブックマーク、いつも支えになっています!ありがとうございます!
皆さんはガチガチに方言を使ってますか?私の印象は、だいたい標準語と混ざって話してる方が多いと思います。
東狐もガチガチの方言を交渉以外では使わないらしいので、気分なのでしょうか?
会話全部に方言を適用するのは結構難しいですよね〜。
ということで次回をお楽しみに!




