東狐の危機、交渉決裂
「瑛太!!!」
硬直状態を解いた声の主は舟音だった。
「なんでここに・・・。皆もなんで?」
東狐が吹き飛ばした扉からメンバーが入ってくる。
「瑛太まで音信不通で心配したんだぞ!・・・なんでかは東狐に聞いてくれ。」
「・・・。」
皆が東狐を見つめる。その視線で言いたいことは伝わったのだろう。東狐が口を開いた。
「・・・GPS、仕込んどいた。俺に関わった以上狙われるやろしな。お前らにも付けとるで。」
「いったいどこに・・・。」
「お前ら、全員グッズ持ち歩いとるやろ。」
そうか・・・!東狐が考案したアクリルキーホルダー、カバー付きで全員がもれなく持っている。
メンバーが各々の反応を見せると、東狐は俺をメンバーに向かって押した。
「うおっ。」
「おい、東狐。まだ逃げるつもりなのか?」
栄虎が転びそうだった俺を受け止めながら聞いた。
「逃げへんよ。」
東狐はくるりと回り俺達に背を見せた。その視線は朱熾に向けられていた。
「これ以上、俺に関わんな。」
「・・・はい。」
朱熾・・・。交渉が破綻してしまう。
「・・・交渉はな、筋通っとるもんやったら受けたる。」
「っ!なぜだ?」
「筋通っとるなら、こっちにも利がある。それだけや。」
「ありがとうな!」
礼を言った朱熾の声は少し震えている気がした。
東狐は再び俺達に視線を向け、歩き出した。
(クソがぁ!やられっぱなしは承知せんでぇ・・・ボスの望み通りに!)
「___死ねッ!」
____________パァン!
なんの音だ?何が起きた?
一瞬、誰も動けなかった。
「何だ!?」
「おい、東狐!」
振り返ると東狐の腹から血が流れ出ていた。
「チッ・・・油断したわ。最初から始末しとくべきやったな。」
東狐が刀を振り上げる。
その視線の先には銃を構えた男がいた。
・・・確かに、生かしておくのは良くない。でもそれじゃあ・・・!
「殺さないで。銃は取り上げて警察に任せよう。僕達は救急車と警察を呼ぶ。東狐も連れて病院に行くぞ。話はそれから。」
羅潔・・・。いつものモジモジした態度は一切見られず、冷静に行動している。
東狐は刀をおろさない。
「東狐。」
羅潔の低い声と鋭い眼差しに、東狐は戸惑いつつ渋々刀をおろした。
「っ。」
東狐が床に倒れ込んだ。
「東狐?!おい、東狐!」
救急車のサイレンが遠くから聞こえてくる。




