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そのゲームは、切り離すことのできない序曲に過ぎない  作者: 珂珂


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第二卷 第四章 成長の証(3/7)

霊泉曉れいせんぎょうのもとでは、天照大神あまてらすおおみかみ月読つくよみ指揮しきもと妖怪ようかいたちは容易よういちかづくことができなかった。だが、ある気配けはいあらわれた瞬間しゅんかん、その空気くうき一変いっぺんした。

そのとき周囲しゅういはまるで異様いよう妖気ようきおおくされたかのようだった。

陰虚旗いんきょき烈火旗れっかき隊員たいいんたちは次々(つぎつぎ)と視線しせんめぐらせて警戒けいかいし、天照大神あまてらすおおみかみ月読つくよみでさえ、その眼差まなざしをけわしいものへとえていた。

その妖気ようき実体じったいつかのように濃密のうみつで、まるで無数むすうねこ一斉いっせいわすこえのように空気くうきなかひびわたっていた。つめやかな圧迫感あっぱくかんは、いきすらまらせそうなほどだった。

ゆるやかな足取あしどりでそこへあるってたのは、妖幻島ようげんとう伝説的でんせつてき強者きょうしゃ――猫又之王ねこまたのおう神酒時樂しんしゅ・じらくであった。


時樂じらく足取あしどりもかるく、どこか気怠けだるげな表情ひょうじょうかべ、口元くちもとにはこの空気くうきとはあまりにも不釣ふついな、悠然ゆうぜんとしたみをたたえていた。

しかし、かれ一歩いっぽすたび、地面じめんにはあわ波紋はもんひろがり、まるで空気くうきそのものまでもがかれ気配けはいによって液体えきたいへとえられているかのようだった。

その背後はいごでは、幾筋いくすじもの猫尾びょうびがゆるやかにれ、半透明はんとうめい霊気れいきひかりかげとなってらめいていた。それはまるで、水面みなもしたうつ月影つきかげのようだった。

それこそが、猫又一族ねこまたいちぞくにおける最古さいこ象徴しょうちょう――霊気れいきによって形作かたちづくられた幻影げんえいであった。



神酒家しんしゅけ祭祀活動さいしかつどうにおいても、きわめて重要じゅうよう役割やくわりになっており、七葉家ななはけならんで主要祭典しゅようさいてん共同執行者きょうどうしっこうしゃとされる、妖幻島ようげんとうでもっともなが歴史れきしち、なおかつもっと完全かんぜんかたち伝承でんしょういできた家門かもんひとつである。

祭典全体さいてんぜんたい主導権しゅどうけん終始しゅうし七葉家ななはけにぎられているものの、準備じゅんびから儀式ぎしき、そして最後さいご後始末あとしまついたるまで、そのあらゆる段階だんかい神酒家しんしゅけ関与かんよかせない。

七葉家ななはけ祈祷きとう献祭儀式けんさいぎしき執行しっこう祝詞のりと奏上そうじょう、そして参列者さんれつしゃたちのみちびきをにない、それによって信仰しんこうねがいを神々(かみがみ)へとどける象徴的しょうちょうてき役目やくめたしている。

一方いっぽうで、神酒家しんしゅけ儀式全体ぎしきぜんたいの「執行しっこう維持いじ」をち、あらゆる礼法れいほう手順てじゅん古制こせいしたがって寸分すんぶんたがわずおこなわれるよう、厳格げんかくささえていた。

かれらは祭品さいひん準備じゅんび浄化じょうか供卓きょうたく配置はいち順序じゅんじょつかさどり、さらに儀式ぎしき最中さなかには祭壇さいだん秩序ちつじょたも役目やくめになっている。

正式せいしき祭典さいてんおこなわれるさいには、神酒家しんしゅけものたちは副祭官ふくさいかんとして七葉家ななはけ主祭官しゅさいかんかたわらにち、儀式ぎしき細部さいぶ聖物せいぶつわたしといった手順てじゅん補佐ほさする。

そして祭典さいてん終了後しゅうりょうごには、祭具さいぐ片付かたづけ、祈願内容きがんないよう記録きろく祭文さいもん封存ふうぞんまでをにない、最後さいごには一族いちぞく長老ちょうろうが「終祓しゅうばつ」をおこなう。

浄符じょうふ焚香ふんこうをもって祭儀全体さいぎぜんたいめくくり、そこにめられたすべての願力がんりきを、しずかに天地てんちへとかえしていくのである。




族中ぞくちゅう最強さいきょうものとして、神酒時樂しんしゅ・じらく実力じつりょくだれもがっていた。――なぜなら、かれはかつて、ただ一人ひとりちから先代せんだい天照大神あまてらすおおみかみ月読つくよみやぶったことがあるからだ。そのちからおそろしさを、かるんじられるもの一人ひとりとしていなかった。

だが、かみ比肩ひけんるほどのちからちながらも、かれはついに『かみ権能けんのう』にみとめられることはなかった。

そのけた一角いっかくは、ひびれのように永遠えいえんかれうちつづけていた。――それがたましいであれ、あるいは運命うんめいのどこかであれ、そこには「ゆるされなかった」欠落けつらくたしかに存在そんざいしていた。

時樂じらく本人ほんにんはそのことについてなにかたらず、の人々(ひとびと)もまた、その「欠失けっしついん」をついにかすことはできなかった。

そしていまかれ対峙たいじしているのは、六旗部隊ろっきぶたいにおける一組ひとくみ相棒あいぼう――烈火旗れっかき真田延司さなだ・えんじと、陰虚旗いんきょき莞原日和かんばら・ひよりであった。

二人ふたり長年ながねんにわたりともたたかってきたため、その連携れんけいはすでに言葉ことば必要ひつようとしないいきたっしていた。わずかな視線しせん交錯こうさくだけで、たがいのかんがえをたしかめることができた。

神酒時樂しんしゅ・じらくという強大きょうだいてきまえにして、その空気くうきにはめた圧迫感あっぱくかんちていた。まるで、そのままこごかたまってしまいそうなほどであった。

さきうごいたのは延司えんじだった。

かれ魔力まりょく周囲しゅういひろがり、六道ろくどう火紋かもんがそのかびがる。烈炎れつえん鎖環さかんのように四肢ししきつき、はげしくうねりはじめた。

右足みぎあしつよんだ瞬間しゅんかん陣紋じんもん地面じめんうえる。

八階魔法はっかいまほう――烈火陣壁れっかじんへき

灼熱しゃくねつ火壁かへきくようにがり、あらくるほのお幾重いくえにもかさなってきずげられていく。空間くうかん全体ぜんたいはたちまち橙赤色とうせきしょくげられた。

だが、時樂じらく表情ひょうじょうひとつえなかった。

その程度ていど攻撃こうげきは、かれにとってにもかいさぬものらしかった。

かれはゆるやかにてのひらげる。するとつぎ瞬間しゅんかん水気すいきがその手中しゅちゅう一気いっき凝縮ぎょうしゅくした。

それはたんなる水元素魔法みずげんそまほうではなかった。妖力ようりょくびたながれがうずき、とおったその内側うちがわにはあおひかりあやしくらめいていた。

八階魔法はっかいまほう――流水鎖渦りゅうすいさうず

渦潮うずしおはたちまち螺旋らせん巨環きょかんへとわり、火壁かへき正面しょうめんから激突げきとつした。その瞬間しゅんかん、まるで玻璃はりくだるかのような、高周波こうしゅうはするど破裂音はれつおんひびわたった。

おなじく八階魔法はっかいまほうではあったものの、魔法まほうとしての強度きょうどあきらかに延司えんじのほうがおとっていた。ゆえに、時樂じらく一撃いちげき相手あいて術式じゅつしきをたやすくつぶせるはずだった。

しかし、時樂じらくはすぐに異変いへんづいた。

延司えんじほのおくだかれるどころか、かえって幽紫色ゆうししょく火紋かもんかびがらせ、みずちからそのものをらいくそうとしていた。



そのとき時樂じらくはようやく、あの火壁かへきべつ魔法まほうかさねてほどこされていたことにづいた。

日和ひより延司えんじ背後はいごから一歩いっぽまえると、そのてのひら闇元素やみげんそちからかせた。

八階融合魔法はっかいゆうごうまほう――陰火いんか三重印刻さんじゅういんこく

つまり、延司えんじ烈火壁壘れっかへきるい展開てんかいしたその瞬間しゅんかん日和ひよりもまた同時どうじ三種さんしゅ闇元素魔法陣やみげんそまほうじん発動はつどうしていたのだ。

ふたつのちからたがいにい、幾重いくえにもかさなり多重防御たじゅうぼうぎょ形作かたちづくっていた。

だが、それでも時樂じらくはなおかいした様子ようすせなかった。

その掌中しょうちゅう渦巻うずまいていた水流すいりゅうは、つぎ瞬間しゅんかん突如とつじょとしてはげしく震動しんどうはじめる。

うず一瞬いっしゅん幾筋いくすじもの激流げきりゅうへとくずわり、その水圧すいあつかれ指先ゆびさきへと集束しゅうそくし、極限きょくげんまで圧縮あっしゅくされた。

あまりの圧力あつりょくたかさに、空気くうきそのものがするど悲鳴ひめいのようなおとはっする。

「ざあぁ――」

水気すいきかれ妖力ようりょくによって無理むりやり固体こたいへとかためられ、幾本いくほんもの回転かいてんするみず螺柱らちゅうへと変貌へんぼうした。

その一本いっぽんごとに、鋼鉄こうてつすらつらぬくに破壊力はかいりょく宿やどっていた。

それらはすさまじい速度そくどされ、先端せんたん圧力あつりょく空気くうきくたび、ひくおも轟音ごうおんひびわたった。

まるで無数むすうやり同時どうじ蒼穹そうきゅうつらぬいたかのようだった。

この一撃いちげきは、緹雅ティアの「漩絲斷界せんしだんかい裂水嵐れっすいらん」にていた。だが、爆発力ばくはつりょくというてんでは、緹雅ティア攻撃こうげきのほうがまさっていた。

時樂じらく極限きょくげんまで凝縮ぎょうしゅくした水圧すいあつやりには、余分よぶんちから漏出ろうしゅつ一切いっさいなく、魔力消費まりょくしょうひにも無駄むだがなかった。

それは、かれ元素操作げんそそうさをいかに安定あんていして、しかも精密せいみつあやつっているかを如実にょじつ物語ものがたっていた。

時樂じらく圧倒的あっとうてき攻勢こうせいまえに、延司えんじ日和ひより防御壁壘ぼうぎょへきるいは、ついにその負荷ふかえきれなくなった。

もろ亀裂音きれつおんひびき、火焔かえん障壁しょうへきはそのくずくだける。

ったほのお無数むすう火片かへん漆黒しっこく残焰ざんえんとなってちゅうがり、暴流ぼうりゅうげられて高空こうくうまれていった。

そしてその光景こうけいは、まるでくだった瑠璃るり破片はへん天空てんくう散乱さんらんしていくかのようであった。


それと同時どうじに、時樂じらくはその水流すいりゅうせ、二人ふたりのもとへと一気いっきせまった。

その姿すがたは、まるで荒波あらなみうえすべるようにすすむ、うみうえ滑走者かっそうしゃのようでもあった。

つぎ瞬間しゅんかんかれ指先ゆびさきから青白あおじろみずけん瞬時しゅんじ凝縮ぎょうしゅくさせる。

かがみのようにとおったそのやいばには、極限きょくげんまで圧縮あっしゅくされた妖力ようりょくめられていた。

剣先けんさきとおった軌跡きせきでは、空気くうきそのものががされるようにかれ、鮮明せんめい真空しんくう弧線こせんかびがる。

おとは、そのひかり軌道きどうをわずかにおくれていかけてきた。

時樂じらくすこしもためらうことなく、それを一閃いっせんした。

水剣すいけんはまっすぐに、二人ふたり胸元むなもとつらぬこうとしてはなたれる――

ぱしっ――

だが、その一撃いちげき二人ふたりとどこうとした、まさにその刹那せつな水剣すいけん突如とつじょとしてくずった。

同時どうじに、時樂じらく手首てくびは、燦然さんぜんかがや火光かこうによってつよとらえられる。

いま、あなたの相手あいてわたしたちです」

灼熱しゃくねつびながらも威厳いげんちたこえが、そのひびわたった。

そこにっていたその姿すがたは、ほかでもない天照大神あまてらすおおみかみであった。

彼女かのじょつようなくれない神衣しんいをまとい、そのひとみには日輪にちりんめぐるかのようなひかり宿やどっていた。

その全身ぜんしんからは、強烈きょうれつ神性しんせいがあふれている。

そして、その見るものすべてをふるわせるほどの威圧的いあつてきちからで、天照大神あまてらすおおみかみ時樂じらく手首てくび微動びどうだにさせぬほどつよにぎめていた。



延司えんじ日和ひよりは、自分じぶんたちでは神酒時樂しんしゅ・じらく攻勢こうせいふせぎきれないことを、よく理解りかいしていた。

かれらにできることは、ただ時間じかんかせぐことだけだった。――神々(かみがみ)のために、ほんの数秒すうびょうでも準備じゅんび猶予ゆうよつくすこと。

つぎ瞬間しゅんかんほのお突如とつじょとしてのぼった。

それは天照大神あまてらすおおみかみ足元あしもとからがり、まるでのぼりゆく朝陽あさひのようにまばゆかがやきをはなつ。

彼女かのじょ長髪ちょうはつ烈火れっかなかてんへとがり、ころも流動りゅうどうする光焔こうえんへと姿すがたえていく。

その全身ぜんしんは、はげしくさかほのおまれていた。

天照大神あまてらすおおみかみ権能けんのう――神火しんか

それは、彼女かのじょけるあらゆる火属性ひぞくせい損傷そんしょう本来ほんらい五分ごぶんいちにまでおさえるちからであった。

それだけでなく、水元素みずげんそによって形作かたちづくられた攻撃こうげきであっても、その威力いりょく神火しんかによって半分はんぶんまで中和ちゅうわされる。

そして、天照大神あまてらすおおみかみつづくように、月読つくよみもまたまえへとすすた。

そのは、まるでよるそのものを凝縮ぎょうしゅくしたかのようなやみつつまれていた。

彼女かのじょ両手りょうてゆび交差こうささせ、その周囲しゅういには銀白色ぎんぱくしょく月印げついんいくつもかびがる。

それは夜空よぞらかぶ月輪げつりんのようにしずかにかがやきながら、ひとつずつ四肢しし眉間みけんへときざまれていった。

闇元素やみげんそ空気くうきなか急速きゅうそく集積しゅうせきはじめる。

それはまるでよるとばりひろがっていくかのようであり、神火しんかによってらしされたてんとのあいだに、鮮烈せんれつ対比たいひえがしていた。

月読つくよみ権能けんのう――月化夜華げっかやか

それは、彼女かのじょ九階きゅうかい以下いか闇元素魔法やみげんそまほう使つかさい消費しょうひする魔力まりょく本来ほんらい十分じゅうぶんいちにまでおさえる加護かごであった。


天照大神あまてらすおおみかみ月読つくよみ権能けんのうは、たしかに強大きょうだいであった。だが、それはけっして気軽きがるるえるものではなかった。

そもそも「権能けんのう」とは、本来ほんらいとしてまれながらにそなわったさいである。

そして「かみ権能けんのう」は、それよりもなお特別とくべつなものだった。

それをあつかうには、たん資質ししつがあるだけではりない。

そのちから適合てきごうするたましいっていなければならなかった。

かみ権能けんのう」を行使こうしするとき精神せいしん極限きょくげんまでまされなければならず、体力たいりょく魔力まりょくも、ほとんどあますことなくそこへそそまれる。

たとえば月読つくよみ権能けんのうである「月化夜華げっかやか」は、闇元素やみげんそちから行使こうしするさい魔力消費まりょくしょうひ大幅おおはばらす加護かごをもたらす。

だが、その状態じょうたい維持いじするためには、自身じしんたましいつき律動りつどう完全かんぜん同調どうちょうさせなければならない。

そうでなければ、権能けんのう完璧かんぺきかたち発揮はっきすることはできなかった。

天照大神あまてらすおおみかみ権能けんのうもまた、同様どうようである。

彼女かのじょ高度こうど集中しゅうちゅうしてそのちからめぐらせているあいだ周囲しゅういただよ魔力まりょく自動的じどうてき烈火れっかまれ、浄化じょうかされていく。

そのため、彼女かのじょはほとんどほか元素げんそ同時どうじあやつることができない。

そればかりか、そばにいる仲間なかま彼女かのじょちかしい水準すいじゅんちからがなければ、そのほのおこばまれ、連携れんけいしてたたかうことすらむずかしくなる。

もしその状態じょうたい長時間ちょうじかんにわたって維持いじすれば、周囲しゅういたいして無意味むいみなエネルギー消耗しょうもうこすことにもなりかねない。

ゆえに、彼女かのじょたちはみずからの権能けんのう封印ふういんするみちえらんだ。

しん必要ひつようときにのみ、儀式魔法ぎしきまほうとおしてみずからのたましい呼応こおうさせ、そのねむれるちからます。

――そしていまが、まさにそのときであった。



神々(かみがみ)のしん姿すがたまえにしても、時樂じらくには微塵みじんたりとも動揺どうようえなかった。

おそらくは精神状態せいしんじょうたい制御せいぎょされているためだろう。かれうちには、「畏怖いふ」とぶべき感情かんじょう存在そんざいしていなかった。

かれはただわずかにあごげ、天照大神あまてらすおおみかみからがる神火しんかと、月読つくよみ背後はいごひら黒月こくげつ見上みあげていた。

その双眸そうぼう宿やど金色こんじきひかりうつっていたものは、敬意けいいであるのか、それとも闘志とうしであるのか、容易よういには判別はんべつできない気配けはいだった。

つぎ瞬間しゅんかん時樂じらく全身ぜんしんつつ妖気ようきが、突如とつじょとして荒々(あらあら)しくうねりはじめた。

それはまるで、深海しんかいそこからせる大浪おおなみ戦場せんじょう全体ぜんたいもうとするかのようだった。

もともとはきりのようにやわらかくただよっていたその気配けはいも、いまや瞬時しゅんじ凝縮ぎょうしゅくし、たしかな質量しつりょうびたものへとわっていく。

背後はいごれていた猫尾びょうびかげも、もはやまぼろしではなかった。

それらは実体じったいつかのようにかれうしろでならめぐり、それぞれのおうたる威圧いあつ濃密のうみつはなっていた。

そら彼方かなたで、ひくうなりにもおとひびく。

まるで、巨大きょだい妖魂ようこんながねむりから目覚めざめたかのようだった。

時樂じらく瞳孔どうこうけもののようなたてかたちへとわり、指先ゆびさきからはもんびた水気すいきにじる。

衣袍いほうはげしい気流きりゅうにあおられておおきくはためき、その足元あしもと地面じめんでさえ、かれ妖気ようきしつけられるようにして、幾重いくえもの亀裂きれつかびがらせていた。




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