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そのゲームは、切り離すことのできない序曲に過ぎない  作者: 珂珂


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第二卷 第三章 寄り添う心(2/5)

現在げんざいもどる)

目下もっか雲閣うんかく状況じょうきょう依然いぜんとしてふかきりつつまれており、唯一ゆいいつ確実かくじつえるのは――

上空じょうくうつうじる転送口てんそうこうはすでに完全かんぜん封鎖ふうさされ、雲閣うんかくかう通常つうじょう経路けいろ完全かんぜんたれてしまっている、ということだった。

いまとなっては、のこされた唯一ゆいいつ手段しゅだんは、

外側そとがわ高空こうくうから、六玄大人ろくげんさまみずからがったあの防御結界ぼうぎょけっかいちからずくで突破とっぱすることだけだった。

しかし、だれもが理解りかいしていた。それ(それ)は、ただの結界けっかいではない。

それは雲閣うんかくまもるためにきずかれた、やぶることのできない最上位さいじょうい防御ぼうぎょ――たとえかみであろうと、わずかたりともそこなうことはできない。

わたし妲己(ダッキ)をそっとわきび、こえひそめてたずねた。

「いったい、なにきたんだ?」

妲己(ダッキ)表情ひょうじょうおもく、全身ぜんしんからつよ不安ふあんにじんでいた。彼女かのじょがこんなかおせるのは、わたしにとってこれがはじめてだった。

前方ぜんぽうから、異常いじょうなほど妖気ようきつたわってきたの。雅妮(ヤニー)がその波動はどう感知かんちした瞬間しゅんかんわたしたちはただちにかって調しらべることにしたわ」

結果けっかは?」

妲己(ダッキ)はしばらくだまみ、まるでもっと適切てきせつ言葉ことばえらんでいるかのようだった。

そしてようやく、ひくこえくちひらいた。

わたしたちの判断はんだんでは……天狐神社てんこじんじゃ宮司ぐうじは、おそらくすでに魔神ましん身体からだうばわれている可能性かのうせいたかいわ」

「それ(それ)って……憑依ひょういされたってことか?」

「ただの憑依ひょういじゃないわ」

妲己(ダッキ)こえはかすかにふるえていた。おそらく、本人ほんにんですらづいていなかったのだろう。

「その魔神ましんは、霊子魔法れいしまほうつうじて、彼女かのじょ身体からだだけでなく、たましい主導権しゅどうけんまでも強引ごういんうばった可能性かのうせいがあるの」

その言葉ことばいた瞬間しゅんかんわたし事態じたい想像そうぞうしていたよりもはるかに深刻しんこくであることをさとった。

「じゃあ、いまはどうすればいい? 直接ちょくせつ魔神ましん退しりぞけるのか?」

妲己(ダッキ)くびよこった。

そのおくには、どうしようもない無力感むりょくかん焦燥しょうそうちていた。

駄目だめよ。もし直接ちょくせつ魔神ましんころしてしまえば、七葉真ななはまことえてしまう可能性かのうせいたかい。

たとえ魔神ましんななかったとしても、魔法まほう離脱りだつ瞬間しゅんかん反噬はんぜいこして……二人ふたりともろともんでしまうはずよ」

妲己(ダッキ)かおげた。その表情ひょうじょうは、かつてないほど重苦おもくるしかった。

「つまり――どんなっても、結果けっか死局しきょくにしかならないということよ。」



「そうなると……わたしたちにできる唯一ゆいいつのことは、なんとかしてその魔法まほう解除かいじょする方法ほうほうつけることだけだ。だが問題もんだいは――わたしたちには霊子魔法れいしまほう抵抗ていこうするちからはあっても、霊子魔法れいしまほうそのものをはら手段しゅだんはない。あらがうだけでは、彼女かのじょすくうことなんて到底とうていできない」

目下もっかわたしたちには選択肢せんたくしがなかった。どうすればいいのか、まるで見当けんとうもつかなかった。

そのとき雅妮(ヤニー)妲己(ダッキ)体内たいないからこえひびかせ、わたしたちにかってそうげた。

亞米アミさまがかつておっしゃっていました。霊子魔法れいしまほう通常つうじょう個体こたいたましい付着ふちゃくするものです。ですから、霊子魔法れいしまほう解除かいじょするには……おなじように侵略性しんりゃくせい霊子魔法れいしまほう行使こうしし、たましい奥底おくそこから魔法術式まほうじゅつしきこそぎくしかありません」

その口調くちょうは、しも一枚いちまいりついたようにおもかった。

「ですが、その魔法まほう要求ようきゅうする代償だいしょうはあまりにもおおきいのです。膨大ぼうだい魔力まりょく消費しょうひするだけではなく、術者じゅつしゃ対象たいしょうたましい双方そうほう強烈きょうれつ衝撃しょうげきあたえます。もしえきれなければ、たましい完全かんぜん崩壊ほうかいしてしまう可能性かのうせいがあります」

宮司ぐうじえられるかどうかをろんじるまえに、わたしたちにはそもそも、その魔法まほう使つかえるもの一人ひとりもいないじゃないか!」

一瞬いっしゅん空気くうきこおりついたかのようだった。

だが、わたしこころそこでははっきりとかっていた――わたしたちは、彼女かのじょ見捨みすてるわけにはいかない。

たとえこのさきみちがどれほどけわしかろうと、かなら方法ほうほうつけさなければならなかった。



「いいえ、方法ほうほうはあるわ」

そうくちひらいたのは緹雅(ティア)だった。

彼女かのじょ表情ひょうじょうはひどく真剣しんけんで、すでに決意けついかためているようにえた。

「どんな方法ほうほうだ?」

彼女かのじょのその言葉ことばいて、わたしおもわずおどろいた。

緹雅(ティア)ふかいきみ、まるでなにかをうための覚悟かくごととのえるようにしてからくちひらいた。

「……本当ほんとうは、もうすこ頃合ころあいをてからあなたにつたえるつもりだったの。ちょっとしたおどろきとしてっておこうとおもっていたのだけれど、どうやらもう先延さきのばしにはできないみたいね」

「?」

わたし彼女かのじょなにおうとしているのかからず、ただいぶかしげにつめかえした。

緹雅(ティア)視線しせんとおくの雲閣うんかく結界けっかいへとけられた。

なにかを計算けいさんしているようにしばらくだまんだあと、彼女かのじょはようやくくちひらいた。

凝里ギョウリ、あなたならあの結界けっかいこわせるのでしょう?」

わたしうなずいてこたえた。

「あの結界けっかい構造こうぞう六玄閣ろくげんかく結界けっかいとよくている。六層ろくそう独立どくりつした術式じゅつしきかさねられてできているんだ。こまかなちがいはあるけれど、わたしが『』を使つかえば、かならほどける。神々(かみがみ)がみとめてくれさえすれば……わたしならできる。」

「それなら、あなたが結界けっかいこわしたあと、わたし妲己(ダッキ)ちからわせて解除かいじょにあたるわ。あなたは、あの厄介やっかい相手あいてけて」

緹雅(ティア)はゆっくりと、ふくみのある微笑ほほえみをかべた。

普通ふつうなら、わたしは『あの魔法まほう』を使つかうことなんてできない……」

彼女かのじょはわずかに言葉ことばり、ほかのものたちにわたしたちの会話かいわこえないようこえとした。

「でも――わたしたちは六島之國ろくとうのくにてくれた。だからこそ、可能かのうになったのよ」



行動こうどうけた最終さいしゅう準備じゅんびすすめているその最中さいちゅう六島之國ろくとうのくにの神々(かみがみ)もまた靈泉曉れいせんぎょうかたわらにあつまり、こり対策たいさくについてこえひそめてはなっていた。

しかし、まえにあるこの局面きょくめんは、すでにかれらのえる範囲はんいえていた。六玄大人ろくげんさまみずかった結界けっかいは、まるであらゆる希望きぼうまえちはだかる断崖絶壁だんがいぜっぺきのようだった。

靈泉大人れいせんさま、あの結界けっかいちからずくで突破とっぱするすべはございますか?」

生命之神せいめいのかみは、かすかなのぞみをいだきながらそうたずねた。だが、現実げんじつはあまりにも残酷ざんこくだった。

靈泉曉れいせんぎょうしずかにくびよこり、その言葉ことばにはかくしきれない無力感むりょくかんにじんでいた。

われおうとはいえ、六玄大人ろくげんさまくらべれば、そのちからはあまりにもおおきい……おそらく、わずかな亀裂きれつひとつしょうじさせることすらできぬだろう」

空気くうきはいっそうおもしずみ、だれひとりとしてつぎ言葉ことばくちにできなかった。

「もしこの結界けっかいやぶれないのなら、わたしたちはただ、雲閣うんかく宮司大人ぐうじさまがともにほろびゆくのをていることしかできないのですか?」

活力之神かつりょくのかみひくこえでそううた。その声音こわねには、いま状況じょうきょうたいするつよ無念むねんにじんでいた。



そのときわたしたちはまえすすて、自分じぶんたちの計画けいかくをはっきりとつたえた。

神々(かみがみ)はそのはなしえると、一瞬いっしゅん沈黙ちんもくつつまれた。

それ(それ)はおどろいたからでも、しんじられなかったからでもない――

ただ、これほどまでに絶望的ぜつぼうてき状況じょうきょうなかで、なおも実行可能じっこうかのう道筋みちすじしめせるものがいるなど、だれひとり想像そうぞうしていなかったのだ。

最初さいしょくちひらいたのは生命之神せいめいのかみだった。そのこえはかすかにふるえていた。

「あなたたちは……あの結界けっかいちからずくでやぶろうとしているのですか? あれは六玄大人ろくげんさまみずかきずかれた結界けっかいです。この世界せかいで、そんなことができるものなど――」

「それ(それ)がしんがたはなしこえることくらい、かっています」

わたししずかに、けれどるがぬ口調くちょうこたえた。

わたしにも百分ひゃくぶんひゃく絶対ぜったい成功せいこうするとることはできません。けれど、なにもしなければ――宮司ぐうじかならにます」

じつのところ、さき会談かいだん時点じてんで、わたしはすでに神々(かみがみ)がくちにできないなにかを背負せおっていることにづいていた。

だからこそ、わたし普段ふだんはなかたえたのだ。

自分じぶんにできると過度かどてるのではなく、あえて曖昧あいまい余地よちのこす。

そうすることで、かれらがその一歩いっぽせるようにするためだった。

「あなたたちがおゆるしくだされば、わたしたちはただちに行動こうどううつります」


そうえたあと、そのふたた重苦おもくるしい静寂せいじゃくつつまれた。

幾人いくにんかの神々(かみがみ)の表情ひょうじょうには、はっきりとしたためらいがかんでいた――

かれらは、安易あんい希望きぼう他者たしゃたくすこともできず、かといって紅衣使者こういししゃとの約束やくそくそむいて、わたしたちに「ねがう」こともできなかったのだ。

そのときんでいながらもかすかにふるえをびたこえが、不意ふいにその沈黙ちんもくいた。

「……われはあなたたちをしんじたい。どうか彼女かのじょすくってほしい――ななはまことすくってくれ」

靈泉曉れいせんぎょうは、突如とつじょとしてそのひざをついた。

普段ふだんつよ意志いし冷静れいせいさをたたえているそのひとみには、いまはただひたすらな懇願こんがんと、ふか苦痛くつうちていた。

彼女かのじょ靈妖之王れいようのおうであり、同時どうじ妖幻島ようげんとう島主とうしゅでもある。

その存在そんざい本来ほんらい六島之國ろくとうのくににおいて神々(かみがみ)とかたならべるほどの地位ちいにあり、この二千年にせんねんあまり、だれかにこうべれたことなど一度いちどもなかった――

それ(それ)でもいま彼女かのじょみずかせ、最後さいごのこされたわずかな希望きぼうわたしたちへたくした。

その姿すがたは、まるで衝撃しょうげき波紋はもんのように、そこにいたすべての神々(かみがみ)の胸中きょうちゅうしずかにひろがっていった。

靈泉大人れいせんさま、それ(それ)は……いくらなんでも――」

生命之神せいめいのかみあわてて彼女かのじょたせようとした。

だが、靈泉曉れいせんぎょうくびよこり、こえまらせながらった。

「いいや。わたしたちになにひとつできぬからこそ、いまこのまえにある唯一ゆいいつ可能性かのうせいけるしかないのだ。われは……彼女かのじょすくえるかもしれない機会きかいを、ひとつたりとものがしたくはない」


その言葉ことばに、すべての神々(かみがみ)は沈黙ちんもくした。

かれらはたがいに視線しせんわし、その眼差まなざしには、くやしさと無力感むりょくかん、そしてそうするしかないというくるしい決意けついにじんでいた。

やがて、天之神あまのかみふかいきい、ゆっくりとうなずいた。

「……わたしたちのほうから、あなたたちにねがうことはできない。ですが、あなたたちがみずからの意志いし行動こうどうこすというのなら、わたしたちはそれをめません」

生命之神せいめいのかみをはじめ、ほかの神々(かみがみ)も次々(つぎつぎ)にうなずいた。

「ですから……おねがいします」

その言葉ことばは、「たすけをもとめる」ためのものではなかった――

それ(それ)は、絶望ぜつぼうなかで、なおまえとうとするものへ、のこされた希望きぼうたくすための言葉ことばだった。


そのとき緹雅(ティア)一歩いっぽまえて、いまだひざをついている靈泉曉れいせんぎょう視線しせんけた。

「ですが、わたしたちにはあなたの協力きょうりょく必要ひつようです。あなたは七葉真ななはまこと旧知きゅうちなのでしょう?」

靈泉曉れいせんぎょうはゆっくりとかおげ、その言葉ことば一瞬いっしゅんおどろいたような表情ひょうじょうせた。だが、すぐにきをもどし、しずかにうなずいた。

「ええ。彼女かのじょのすべてをっているとはえません……ですが、われらはむかしからならんでこのまもってきました。だからいまわれには、彼女かのじょたましい悲鳴ひめいすらこえるのです……」

「なら、あなたは彼女かのじょたましいれることができますか?」

緹雅(ティア)かさねてうた。

靈泉曉れいせんぎょうはしばらく思案しあんしたのち、ふかいきった。

「あるいは……みじか時間じかんだけなら、彼女かのじょ共鳴きょうめいできるかもしれません……ですが、それ(それ)をおこなうには、きわめて純粋じゅんすい場域じょういき必要ひつようです」

「では、おねがいします」

緹雅(ティア)はそうった。いつもよりもさらに簡潔かんけつ口調くちょうだったが、そのとき彼女かのじょは、なにかの準備じゅんび全神経ぜんしんけいそそいでいるようだった。




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