どことだよ!!
俺、赤丸勇樹は、最近思う。
『女子って怖いよな?な?』
俺は最近、女子という生き物がひとつの怪物のように思えてしまうようになっていることに気づいてしまった。
なんということだ!
よし、たとえをあげてみよう。うーーんと。
零子とか!零子とか。零子とか?
「ちょっと勇樹君?私の名前を連呼するのはやめてもらえるかしら?」
さっきから違う方を向いてたはずの零子がいつの間にかこちらに向いていた。
が、すぐに下の方に戻った。
俺は、ここ最近、もっと言うとこの数分間のあいだにものすごいものを見てしまったような気がした。
さらには、女子の本当の恐ろしさを目の当たりにしてしまった。
俺以外のクラスの奴らもあっけにとられ、知らず知らずのうちに息を呑むほどそれに見入っていた。
そう。零子が。あの零子が・・・
「キレた。」
「あの~~?勇樹君?だから私は全然怒ってなんかいないのよ?だから~~変な言いがかりはやめていただけるかしら~~。」
顔は笑っているが、目が笑ってない。ついこの前の雪風さん宅で見た、零子の顔にそっくりだった。が今回はそれをはるかに上回るほどだった。なぜそこまで怒れるのか俺には正直わからなかった。
そして零子の睨むその先には、このクラスの中心グループが白い顔になって干からびているようになっていた。
俺が思うに、彼、彼女たちはまあ悪くわないと思う。たぶん。俺からしたら。そしてさっきから俺と同じように傍で、苦笑いしている雪風さんもきっと同じ感想だろう。
そして、教室のまだ朝っぱらの2-B組の大きな前黒板には、これまた大きく、(俺と雪風さんの相合傘)が書かれていた。しかも、俺たちの名前の近くには、大体が同じようなことが書いてある。きっとこれを見たみんなの感想だろうとは思ったけど、総合的に『リア充爆ぜろ』的な内容がほとんどだった。
べつにね!俺は別に雪風さんとこういう関係に思われるのは悪いことではないと思うんだけどね、やっぱりこう書かれると恥ずかしくなってします。
まあ、こんなものを俺が発見したのは今さっきなわけで、その時にはもう、2-Bは零子の独壇場と化していた。
だから少し巻き戻ってみる。
まずは今日の朝からでいいかな?
今日の朝。俺が教室で恐ろしいものを見てしまうとは全く知らないてあろう、間抜けな俺が、目を覚ました。頭はボートするしやはりまだ寝不足だ。まあいい。
それから、俺はいつもどおり朝食をとり、学校の支度をした。
いつもの通りの時間に家を出て、いつもと同じ方の足から靴を履き、いつもと同じ方の足から踏み出す。
通学路は至って普通。もうこの道を通い始めてから、もう、数ヶ月が経つんだなと、ひと思いにふけってみる。
学校に到着しても、俺の日常は 変わらず、廊下でたまに人とすれ違ったりもしたけど、これもいつも通り、何かの話題で盛り上がっていた。
俺はいつもの角を曲がり我が2-Bのクラスに入ろうとした時、ものすごい音がした。
ぼごーーーーーん!!!!
なんだなんだ?地震か?爆発か?テロかテロなのか?・・・
そんなはずないよな。
俺は、教室の前のドアを開けた。
何気なく、ただ全くの無抵抗だったので、かなりのダメージを受けてしまった。
まず、みんなからの目線がかなり痛い。
「なんか睨まれてね?」
「おお、勇樹。やっと来たか。」
そう言って俺を迎えたのは俺の大親友白井大輝だった。
「あの、ゆうくん。・・・取りあえず、おはよ?」
雪風さんも人混みの何処からか現れて合流した。
でも、この状況で挨拶ですか・・雪風さん。
まあ、折角なので「おはようございます、雪風さん。」と、俺はわざとらしく笑って答えた。
「それで、雪風さんに大輝。これは一体・・・」
そして、そこで俺はやっとこの状況を理解した。
それはもちろん、黒板にデカデカと書かれた俺と雪風さんの相合い傘を発見したからだ。
「なん・・なん・・なんじゃこりゃーーー!!」
俺の叫びは限界を超えて、声が出ていないほど俺は驚いているみたいだ。
「んー。頂きました!只今の赤丸君の叫び声は2dbです!」
「おい、理科子!勝手に測るなよな!しかもちゃんとした騒音計できっちり測るな!そして、そのいやらしい目で俺を見るんじゃねえよ!」
「いやーごめんごめん。この騒動の要因の一つである赤丸君が、真実を知った時、どんな声を上げるのか楽しみだったんだー。はあはあ。」
「だから、変な息遣いもするな!」
俺が今喋って、変態行動スレスレを行っているやつは、松井志 摩子。しかし、理科が大好きで自分でも自分を『理科子』と呼称してほしいとの要望があったため、そのようになった。つまりはあだ名だ。
短い薄オレンジ色の髪に、赤い眼鏡。それにいつも白衣を着ている。まさに研究者と言わんばかりの姿だ。
顔も俺が思うに、そこそこいいとは思うが、こいつには、人を寄せ付けないある性癖がある。
それが、俗に言う『声フェチ』であるということだ。
しかし、声といっても、声というよりは音に大変な興味を持っている。いつも、録音機と騒音計は常備しているらしい。だから、誰か気に入った音があれば周りの目など気にしないやつなので皆から距離を取られることもあるが、性格は極めて温厚なのであまり学校生活には支障をきたすことはない。
こいつも同じ、2-Bの仲間でもある。俺もたまに会話ぐらいはする中である。
「で?赤丸君?何さっきから私の方をジロジロ見ていらっしゃるのですか〜?貴方が見なくてはいけないのは私ではなく、あちらですよ。」
と、理科子が指をさした方を見てかなり焦ったというかまた、驚いてしまった。
そこには、男女数人対あの零子が一人で対峙していた。
雪風さんが言うに、この状況は今さっき始まったばかりらしい。数分の抗争というやつらしい。詳しくはうまく説明できないらしいけど。後で本人にでも聞いておくか。
で、その零子が立っている、少し横に真っ二つに割れた机が・・・って
「それ、俺の机じゃねえかーー!!」
つい最近席替えを行い、俺はあの、後ろの方でしかも窓際という超特等席を譲り渡さなければいけなくなり、代わりに教室の真ん中付近に変わってしまった。
あの割れた机。確かに・・・おれのだ。
「正確には学校のものな。」
大輝が冷静に突っ込んでくる。いつでも冷静な男だ、全く。
「赤丸君。さっきの叫びは、良かったよ!GJ部だよ!勝手に録音させて貰ったよ。キラ。」
もうこいつには言うことは何もない。ただ、ちょっと理科子の頭をぐりぐりぐりぐり。
「あいたぁ〜痛いよ!赤丸君!痛いよ!やめてー!アギャァァァァア!」
うるさい。ちょっと黙ったか。
ザワザワ
と、零子が急に喋り出したことを俺は周りのやつの反応から気がついた。
俺は、また零子たちの方を見た。
長い黒髪がたなびいている。威張っているようにしか見えない立ち姿。しかし、今回は他にも感情があった。それが怒りだ。
あいつは、今物凄く怒っている。それは見ているこっちもよくわかるほどだ。相当な事だ。
「あなたたちは、今自分たちの犯した罪よりも重い責任を背負っていることを自覚しているのですか?例えどんな事であっても、人の恋路を邪魔することが、この世で一番やってはいけないことです。見ているこちらは、変化を求めて、先へ先へと気持ちを進めるでしゃう?それにより本にたちは背負わなくても良いものまで背負い込み、最後には自然消滅してしまうことだってある。本人達は、頑張っているんです。それを、何もしていない、外野が口を出していいはずがないではないか。それに、今回の話ですが、そのこと自体をあまり知りわたらせたくない人たちだっていることを貴方達は理解しているのですか?しかも、こんな公衆の面前で。私だったら、もしかしたら、自ら命を絶ってしまうかもしれません。しかし、彼らは、それでも自らの足で進んでいくことができます。ですから、」
零子は、少し間を空けて
「ですから、見守りましょう。今後の変化に。ね?」
俺はいつの間にか、手を強く握っていた。少し爪が食い込んで痛かったが、今はそんなことを気にしている暇はない。
まさか、あの零子がそんな風に思っていたなんて。所々名前は伏せてあるが、確かにそれは、俺たちのことであることは皆わかっているであろう。
「ですので、誓ってください。今ここで。今後一切の他人への干渉をしないとを。」
最後の零子の言葉にみんな完全に飲み込まれていた。クラス内は沈黙していた。
すると、
「パチパチパチパチパチパチ」
何処からか拍手が聞こえた。
皆その方を見ると、
「いい!いいよ!そういうの!とてもいいわ!先生感動してしまったわ!これぞまさに青春よね!うん!みんなも青春しろよ!」
そこには、俺たちのクラスの担任今堂久美が入り口の扉に寄りかかりながら拍手を続けていた。
「って先生!?いつからそこに!?!?」
「ん?ずっといたよ?ここに?」
そうなのか・・・あはは
それに続くように、クラスのあちこちで拍手が鳴り始め、やがてクラス全体に、まで及んだ
「うむ。これはすごい。赤丸君!すごいよ!このクラスの音が電車が通る時の音をはるかに超えてるよ!」と、理科子は、一人喜んでいた。そんなにすごいことなのか?俺にはよく理解できない。
さっきから、零子の言葉を聞いていた、例のグループもまた、周りにつられるようにして、拍手していた。リーダー格のやつは、何が起こっているのかわからない様子でいる。そいつに零子は手を差し伸べた。彼女は無意識に零子の手を取って、立ち上がり、すぐに我に帰り、零子の手を振り払った。
すこし、照れているようにも見えた。
「まあ、そういうことだから。これからは、悪戯も程々にね?」
「・・・わかりました。」
そしてまた、二人は強い握手をしていた。握手する前に小さな声で何かを喋っているようにも見えたが、今回はまあ気にしないことに決めた。また後で聴きに行けばいいし。
それから、少しの間、拍手や、クラスメイト同士の会話が続いた、が・・・
「こらぁぁぁぁ!!!うるさいぞ!!!1年B組!!今何時だと思っているんだ!さっさと席につけ!!!」
という、あの熱血教師大宮が怒鳴り込んできた。
みな、やべと思いながら自分の席に戻って行った。
零子たちもまた自分の席に戻ろうとした。が、
「おい、ちょっと待て、零子。お前逃げようとしてんじゃねえよ。」
と、俺が零子を呼び止めた。
「何かしら?もう事件は収束したと思うのだけど?」
この状況で呼び止めた理由なんか一つしかない。
「何がしゃねえよ!俺の机どうしてくれんだよ!これじゃ勉強もできねえだろ!」
俺の指差す方には、真っ二つに割れた机の残骸が残っていた。
「あら、あなた勉強するような柄じゃないでしょ?居眠りするための場所が欲しいだけなんてしょ?」
「な訳ねえだろ!!確かにそうかもしれないが、絶対に違う!」
「じゃあ、先生にでも頼ったら?」
「お前、責任を放棄したな!」
「責任を放棄?何を言っているのかしら。それは私が壊したのではなく、壊れたのよ。私が触った瞬間に壊れてしまっただけのこと。私に非があるわけだはないわ。ね?」
零子は、俺の後ろの席の奴に同意を求めた。目で何かを合図しているのがわかった。
「うううん。そうだね。中島さんが触った瞬間にその机が壊れたの。だから、・・中島さんは悪くないと・・おもう、よ?」
はいはい。ですか。もういいですよ。わかりました。
俺が諦めたので、零子も、自分の席に戻って行った。
さてどうするかこれ。俺は、その物体の処理に取り切った。
※
それからなんとか代わりの机を入手したことをとりあえず報告しておく。
そして、その日の昼休みのこと。
俺は早めに弁当を食い終わったので、少し散歩でもするかと、まだ朝の余韻が残る教室を出て、中庭に出た。ちなみに靴は変えてある。
そこには、数組のカップルや、友達のグループが作られていた。
その中に、一つのベンチに一人で座っている、黒髪ロングの奴の姿を見つけた。空を見上げて目をつぶっているようだ。風邪でも感じているのか?
まあ、そんなことより、俺ははっとあることを思いつき、行動に移した。
※
必要なものを準備した俺は、恐る恐る零子に近づいた。
そして、そいつのほおに、それを押し付ける。
「冷た!!」
びっくりした零子は、何事か状況判断していた。そして、間も無く、
「やあ、勇樹君。あなたも変な趣味をお持ちのようね。」と、零子がいつもの零子になった。
「うるせえ。」
俺も笑顔になった。
そして再度、さっきのものを手渡した。
「あら、あなたもたまには気の利くパシリになりそうね。」と、意味深めなことをつぶやいていた。
「お手柔らかにな。」
「それで?何のようなの?」
「ん?」
「何か用があってきたんでしょう?」
「ああ。そうだな。まあ、今朝のことについて、色々と言いたいことや聞きたいことがあるからな。」
「そう。いいわよ。今ならなんでも答えてあげるわ。たとえそれがプライベートな話になってもね。」
「なんだよ。俺がそんな野蛮な男に見えるのか?」
俺は冗談のつもりで言った。
零子しさも、冗談で言っていることは、わかっているが、なかなか返事がこなかった。
まさかと思うと、予想とは少し違った。
「すーすーすー」
零子は俺の会話の途中に寝やがった。全く。
それから、少しの間は、俺も目を閉じて、空を見上げ風を感じることにした。
すると突然零子が喋り始めた。
起きてたのかよ!
「あなたには感謝もしているのよ。本当にいろんな意味で。だから・・ありがと。」
零子のそんな真面目なことを言われたのは初めてだったような気もするが、俺も目を閉じたまま、返事をした。
「そうかい。」
なんとも、久しぶりに和やかな、軽い気持ちになれた気もした。
「それにしても、勇樹君?非常に申し上げにくいんだけど・・・」
何故か零子が申し訳なさそうに話してきた。
「?なんだ?別にいいぞ。なんな?言ってみ?」
「そう。私実は甘いものってきらいなの。だから、この、」
と、零子は、俺と自分の手の中にある、『これ一本で1日元気!サイエンのフルーツ牛乳!フルーツの甘さをたっぷり抽出しました!』を見て、
「できれば、コーヒーの方が良かったのだけれど。」
と、言った。
「それに、あなたってやっぱりまだ幼稚なのね。」
かちーん。
俺は思いっきり、息を吸い、
「悪かったなーーー!!!!子供でーー!!」
と、自分の力一杯声をあげて抗議した。
「赤丸君。今の声、体育館でスポーツをしている時の音ぐらいしか、しませんでしたよ。」
って理科子!?いつの間に!どこから出てきた!?
「どこって、この茂みにずっといましたよ?」
「まさかは思うが、この広場の声を盗聴するためにか?
「盗聴なんて、聞こえが悪いではないですか。趣味といってください。趣味と!」
はいはい。はあー。深いため息。
「あなたも苦労するのね。」いつの間にか、零子が笑っていた。そして、手の中の、パックには、付属のストローが刺さっていた。結局飲んだのかよ。
「お互い様だろ。」
「それもそうね。」
「ふふ」
「はは」
俺たちは、少しの間笑いあった。
今日もいい天気。明日も、それから、これからもいい天気が続くといいな。
いつまでもいつまでも、終わらない世界とともに。
女子ってやっぱり怖いけど、でも、どこか、優しいところを皆持っていんだと、俺は思うな。零子だって、いつもはあんなに、口が悪い女だけど!朝の熱弁には、違う奴の優しさが含まれているようにも感じたの嘘ではない。
今回の件で、ちょっとは、零子と、心的に近づいたような気がしたのは俺の気のせいでは、あるまいな。




