結界の再構築
侯爵の参戦により、皇帝側の戦況は更に不利になっていった。
「艦長!このままでは赤炎島を攻め落とせません!あれを使いましょう!」
帝国軍の副館長が進言する。
「あれは、我が艦にも相当なダメージが出る。一度しか使えんのだが…病むおえん!電波砲核隊員を軌道から退避させよ!
戦闘領域から帝国の騎士たちが退避していく。
「なんだ?なぜ退却する?」
カイルが敵の動きを不審に思う。
帝国の戦艦の一つが大きく正面に旋回し、船底部分が開いて大きな大砲が現れた。
大砲へエネルギーが供給され始めた。
「あれは!!?まずい!退避!退避――!」
カイルは直感で、あれが強力な武器であることを察知し、大砲の軌道上の兵士に向かって叫んだ。
「ゼノン!あれを撃たせるな!!」
侯爵が、司令部にいるゼノンに命じる。ゼノンは戦況を即座に理解し、指示を飛ばす。
「戦闘員は敵艦の大砲軌道上から退避!戦闘機カイトは大砲を撃破せよ!」
ゼノンの指示で、戦闘機カイトが、敵艦の砲弾目掛けて攻撃をするが、敵に阻まれ、破壊できない。
その間にも、エネルギーはどんどん溜まっていくようだった。
「あれを、止めろ!なんとてでも赤炎島へ撃たせるな!」
ゼノンが叫んだその時、キラとティアが外へ飛び出した。
「キラ!」
「あぁ!ティア、やろう!」
「火の遺跡の精霊よ、あなたが守る島を、私にも守らせて。力を貸して!」
ティアはアルクスコアを通じて精霊に呼びかけた。
その呼びかけに応えるかのように、アルクスコアは温かい光を放つ。
すると、ティアの全身に光が満ち、プラチナブロンドの髪が風もないのに激しくなびき、黄金色の瞳が金色に輝きだした。
彼女の体から目も開けられない、強い光が放たれていく。
アルクスコアを胸に抱き、火の精霊の力を必死にコントロールしようとする。
(熱い。体が燃えるよう。この力を結界に!)
キラが、ティアの方に触れた。
「僕が結界の回路を敷く。そこに力を流して!」
「わかった!」
「いくよ!」
キラがティアの力とアルクスコア、精霊の力の道標となる回路を刻んでいく。それは目には見えない、世界に溢れる光の力。虹術師と虹光師の力が、お互いに強い絆で結ばれて初めてできることだった。
ティアの体から、赤色の光が噴き出し、回路が刻まれた多面体のガラスのような結界がドーム上に空を覆っていく。
電波砲のエネルギーが最大に達し、まばゆい黄色の光の奔流が放たれた。
ティアの作り出した結界に直撃する。
ゴオオオオ!
轟音と共に、結界と電波砲の力がぶつかり合う。火の精霊の力を借りた結界は、侵入しようとする光を焼き尽くしていく。
ティアは、膨大なエネルギーを受け止めきれず、体が震え、悲鳴を上げ始めた。
「ティア、大丈夫だ!僕がいる!」
キラは、彼女に流れ込む激しく強い力を受け止め、ダメージの緩衝材の役割を担った。
やがて電波法の光が終息し、結界を貫くことができず、敵はその攻撃の手立てを失った。
「くっ!バカな!!」
敵艦の艦長は、信じられない状況に、怒りを露わにした。
敵軍は最終兵器での攻撃が失敗に終わり、兵士の間に動揺が広がった。
「この機を逃すな!一気に攻め落とせ!」
侯爵が味方を鼓舞し、混乱した敵軍を一気に攻める。混乱の最中、戦闘領域の背後の赤炎島が一瞬赤い光を放ち、鉄壁の結界が再構築されたのだった。
「撤退だ…!」
敵の艦隊が撤退をしていくのを確認し、侯爵が大剣を掲げて戦いの終息を宣言した。
赤炎島に勝利の歓声が響く中、キラとティアの力が織りなした結界が赤い光の粉が中を舞うように消えていく。
それは、静かに、そして希望に満ちた輝きを放っていた。




