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守護者たちの戦い

 赤炎島の上空で、侯爵軍が皇帝の艦隊を待ち構える。侯爵軍の艦は防御結界展開し、簡易の結界を完成させる。艦隊が鎮圧されない限り、赤炎島への侵入は不可能と言ってもいいだろう。

 空島の戦闘は、空中戦が基本だ。

 赤の炎の矢を放つ空中戦闘機と対空での対人戦のためのバイク型カイトに乗った隊員が陣形を保ち待機する。ヴェスタもカイトもバイク型カイトに乗り、空中で待機していた。

 侯爵が司令部のマイクを通して、迫り来る帝国軍に警告した。

「所属不明艦へ告ぐ。こちらは赤炎侯爵。貴艦らは我が領空に無断で侵入している。速やかに針路を変え、引き返したまえ。警告を無視し、このまま進行を続ける場合、明確な敵対行為と見なし、直ちに武力をもって排除する。繰り返す。これ以上の侵攻は許さない。警告を無視すれば、即座に攻撃を開始する。」


「赤炎侯爵、聞こえるか。こちらは帝国皇帝陛下直属艦である。貴侯の領内に、空島の平和を脅かす謀反人が潜伏しているとの情報を得た。速やかに武装を解除し、当該人物を引き渡されたい。警告に従わぬ場合、貴侯の行為は謀反人の共謀とみなし、直ちに武力をもって鎮圧する。」

 ティアは青ざめた。

「私のせいで?」

 ティアの様子にゼノンが、言葉をかけた。

「皇帝はかねてより、赤炎島の軍備を縮小するように要求してきていた。従わない赤炎島にスパイを潜入させ、結界に不具合を起させたタイミングで攻めてきているのだ。君がここにいるという証拠も、掴んではいないだろう。」

 侯爵は通信を通じて、警告を続ける。

「貴官らの主張する謀反人の存在は、確認されていない。明確な証拠なく、事前の通告もなしに領空を侵犯する行為は、越権行為に他ならず、断じて容認できない。直ちに引き返さなければ、空島の平和秩序を乱す敵対行為とみなし、全力をもって排除する。繰り返す。これ以上の侵攻は許さない。」

 侯爵の警告を無視し、皇帝の艦隊はついに、戦闘用カイトと軍隊を展開させた。

 侯爵は敵が攻撃準備に入ったことを確認し、全軍へ指示を出した。

「全軍に告ぐ!目の前の艦隊は、空島の平和秩序を乱す賊徒である!この赤炎侯爵領、そして空島全ての守護者として、これに立ち向え!火の粉一つたりとも、この島に落とさせるな!我らの誇りにかけて、敵を撃退せよ!戦闘を開始する!」


 赤炎島の上空で、激しい戦闘が始まった。敵艦から光の砲弾が激しく撃ち込まれ、戦闘員は激しい火花が散りらせながら、戦う。

 ヴェスタは、その中でも一際速いスピードで宙を駆け抜けていく。彼女は風を切り裂き、皇帝軍の兵士たちを翻弄する。豪胆な剣技に加え、火の力を美しく操るヴェスタの戦闘スタイルは、まるで舞うようだ。

 空島で最強と言われる赤炎島の軍隊に、敵はジリジリと後退させられていく。

 その時、一人の兵士が放った光の矢が、赤炎島のほうへ向かった先に、逃げ遅れた島民の子供がいた。気がついたヴェスタが、庇うようにカイトから飛び降り、子供を抱き抱える。二人に直撃すると思われた瞬間。

 ゴオオオー!

 ヴェスタが瞑っていた目を開くと、大剣をかまえた侯爵の背中があった。

 何物も通さない、圧倒的な強さと、背後のものに絶対的な安心感を与える、父親の背中だった。

「動けるか。」

 惚けたようなヴェスタに侯爵が声をかけた。

 ヴェスタはハッとして、体を起こす。

「はい、大丈夫です。」

「では、使命を果たせ。私の背をお前に預ける。行くぞ。」

「はい!」

 ヴェスタ子供に避難場所へ行くよう促し、戦闘へ復帰する。

 侯爵が手にしているのは、彼自身の身長ほどもある巨大な大剣だ。ただでさえ重厚なその剣を、侯爵はまるで羽毛のように軽々と扱い、一閃する。その一振りから放たれた炎が、咆哮を上げる竜の如く宙を駆け、周囲に群がる敵兵を次々と焼き払っていく。

 圧倒的な膂力と、長年培われた経験から来る豪胆な戦術。彼の剣は、炎をまとったまま敵艦の装甲を容易く切り裂き、その一撃は。帝国軍の兵士たちを恐怖に震え上がらせるのに十分なものだった。彼はただ戦っているのではなく、その存在そのものが、赤炎島の守護者として、敵の前に立ちはだかっていた。

 ヴェスタは胸が熱くなるのを感じた。父に認められたという喜びと、父の偉大な力に対する尊敬。ヴェスタは、父を超えるという強い目標を胸に刻んだ。


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