表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/58

第54話 境界付近に

 夜風だけが木々を揺らす。

私は女がいた場所を見つめた。


追うべきか。


そう考えたときには、女の気配が完全に消え去っていた。

追跡は不可能。

そう考えて、踵を返した。



 森から寮の前に戻ると、あたりは完全に静まり返っていた。

目につく範囲に人の姿はない。

私は音を立てないよう、静かに窓から部屋の中に戻った。


月明かりが部屋の中に差し込む。

私はベッドに身を投げ出した。


境界、融和派。


今日、エレオノール先生が話していた。

違法な境界越え。

人体実験。

そして、人間との密貿易。

危険な組織だ。

そう、教わった。


けれど、あの女は私を傷つけようとはしなかった。

ただ、勧誘に来ただけ。


――多少の、犠牲。


その言葉が、頭にこびりついて離れない。


『人間を知りなさい。嫌うにしても、理解するにしても、まず知ることから始まります。』


先日のベルナデット先生の言葉がふと思い出された。


報告しなければならない。

それが正しい。


たとえ、女の言うことがすべて真実であっても。


明日、エレオノール先生に報告しよう。


そう結論づけて瞼を下ろす。


『学校が教える『正義』だけが真実ではない。』


その言葉だけは、何度も脳裏に浮かび続けていた。





 ――翌朝。

いつも通りの時間に目を覚ます。

制服に着替えてラヴィエンヌと部屋を出た。


「なんか、眠そうじゃない?」


「・・・普通。」


私は少しぼんやりとする頭でこくりと頷いた。

食堂へと向かうと、Sクラスの面々の姿があった。


「リリス、リリス!おはよう!」


リュシエンヌが元気よく手を振る。


「よく寝れたー?」


エリーヌが眠そうに目をこすりながら首を傾げる。


「・・・普通よ。」


「よかったー。」


エリーヌはいつも通りニコニコと笑う。

リュシエンヌもつられたように笑みを浮かべた。


私はその平和な光景を見ながら、昨夜の出来事を思い出す。

エレオノール先生に、報告しよう。


その時、寮にあわただしく駆け込む教師の姿が目に入った。


「エレオノール先生!?」


リュシエンヌが目を丸くする。

エレオノール先生は普段の様子から想像できないほど切羽詰まった声を出した。


「境界付近に、侵入者です!」


その場にいた全員の動きが、ぴたりと止まった。


「全員、この寮内に待機していてください!」


そう言い残して駆けだしたエレオノール先生の背中は一瞬で小さくなっていった。


「先生ー?」


エリーヌが眉を寄せて首を傾げる。

次の瞬間、寮が魔力で囲まれた。

窓から外を見ると、強固な結界が張られているのが見える。

寮のさらに外、魔法学校の周りにも結界が張られているようだった。


「なに、これ・・・?」


「やばそうじゃん?」


ラヴィエンヌとキリアンが私の隣に立って外を眺める。


「危ない、危ない!?」


「どうしようー?」


双子が不安そうに外の結界を見つめた。


「とにかく、先生の言う通り寮内で待機しましょう。全員、食堂に集合してください。」


マルグリットがそう言い、食堂に入っていく。


「大変そうだね。」


アルノーはマルグリット同様、とくに慌てた様子もなく食堂に入っていった。


「慌てても、どうしようもないでしょ。」


「・・・。」


ミレルとノワール、私たちもその後に続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ