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第39話 入学式

 ゆっくりと目を開く。

真っ先に目に飛び込んできたのは、青々と葉が茂るたくさんの木々だった。

周囲を見回すと、制服を着ている生徒が立っている。

全員がその瞳を輝かせ、そわそわと身体を揺らしていた。


「会場は、魔法学校の中よ。」


お母様が握ったままだった手を引く。

私は3人で並び、森の中へと足を踏み入れた。





 森の中を進むにつれ、生徒たちのざわめきが大きくなる。

試験の時も、同じ道を通ったにもかかわらず、どこか落ち着きがなかった。


しばらく歩き、以前と同じように台座に血を一滴たらして呪文を唱える。

お父様とお母様と一緒に、結界の中に入った。

開かれた大きな門を通り、赤茶色の建物を見上げる。


門を通った先には広い広場があり、奥に赤茶色の、落ち着いた雰囲気を醸し出す建造物が建っている。

そのさらに奥には、中庭のようなものがあることが分かった。

右手には広い訓練場、左手には正面の建物よりも派手な雰囲気を醸し出す建物。

他にも大小さまざまな建物が建ち並ぶ。

1つの街のような場所だ。


初めてではない景色。

そこに立つのは、真新しい制服をまとった生徒たちだ。


広場に集まった生徒たちはそれぞれが違う色のネクタイを揺らしている。

赤、青、紫、橙――。

鮮やかな色に目をひかれる。

私はそっと自分のネクタイに触れた。


「おめでとう、リリス。」


「頑張るんだよ。」


両親が微笑んで私の頭をなでる。

私はこくりと小さく、でもはっきりと頷いた。


「リリス!」


そんな時、背後から声を掛けられ、振り返る。

初めて会った時と同じように、楽し気な笑みを浮かべた少女が目に入った。


「ラヴィエンヌ。」


腰ほどまである黒髪を揺らし、彼女がこちらに歩いてくる。


「久しぶりね。」


「久しぶり。・・・あんなことがあったのに、入学したのか。」


咎めるような言葉と裏腹に、その表情は明るかった。

その背後から、2人の男女が駆け寄ってくる。


「まったく、ラヴィ!勝手に動き回るな。」


「まぁ、いいじゃないか。ラヴィだって好きに行動したいだろう。」


「あんたは黙ってな!」


「・・・うるさい。」


ラヴィエンヌがぼそりと言葉をこぼす。

彼女はジトっとした目で2人の見てから私に向き直った。


「これが私の両親。」


「これって何よ、ラヴィ!」


女性が眉を吊り上げる。

私は後ろを振り向き、自分の両親を指さした。


「私の両親よ。」


その言葉に、ラヴィエンヌの両親がハッと顔を上げる。


「「よろしくお願いします。」」


「「こちらこそ。」」


4人が話し始めたちょうどその時、頭上から声が降ってきた。


「皆さん――静粛にねぇ。」


のんびりとした口調。

しかし、そこに込められた魔力に一瞬動きが止まる。


「これより、入学式を執り行いますよぉ。」


そう言いながら頭上からゆっくりと降りてきたのは、長いローブをまとっておばあさん。

穏やかな雰囲気をまとっているが、彼女が地面に降り立った瞬間、そこにステージが作り上げられていた。

壇上に立ち、私たちを見渡す。


「あなたたちは、今日からこの学校の生徒になりますねぇ。私が、求めることは3つだけ。」


全員が、静かに耳を傾ける。

空気がピンと張りつめていた。


「誇りを持ち、励み、協力する。ここは、魔女の学校だからねぇ。・・・あなたたちの価値は、これからの行動で決まる、そのことを忘れないようにねぇ。」


校長先生がニコリ、と柔らかな笑みを浮かべる。


「それじゃあ、毎年恒例の魔法披露に移ろうかねぇ。」


彼女がぐるっと広場を見渡す。


「今年の主席、リリス・デュポワ。次席、ラヴィエンヌ・フォルバラン。両名は舞台に上がってきてねぇ。」


ラヴィエンヌが困惑したように眉を寄せる。

私はお母様を見上げた。


「行ってきなさい。魔法を見せるだけよ。」


お母様は私の背中を軽く押しながらそう言った。

私はラヴィエンヌと顔を見合わせ、一歩踏み出した。



 壇上に上がると、周囲から拍手の音が鳴り響いた。


「それじゃ、2人とも魔法を披露してねぇ。」


それだけ言い残し、校長先生は壇を下りた。

私はラヴィエンヌと目を合わせ、軽く頷く。


何の打ち合わせもしていない。

それでも、ラヴィエンヌは私に合わせてくれる気がしていた。


私は壇上に小さな苗を生みだす。

それは、急速に巨大化していき、校舎を超えようかという高さで成長を止めた。

それに合わせ、ラヴィエンヌは手を木に向けて魔力を放った。


大木が凍り付いていく。

風が吹き、葉が陽光を反射してきらきらと輝いた。

大木の幹だけが凍り付き、青々とした葉が残る。

私はそこに向かって手を掲げた。


「『(フォルス)( リエ)(フゥ)』。」


葉が一斉に紅に輝く。

燃えているのに、葉が燃えていない。

不思議な光景をそこに生み出していた。



 私たちは、背後をゆっくり振り返り、大木に背を向ける。

一瞬の静寂の後、その場に大きな拍手があふれかえった。

校長先生が壇上に上がってきて、口を開く。


「ありがとうねぇ。それじゃあ、今年の入学式はこれで終わり。あとは教官の指示に従ってねぇ。」


そう言うと、校長先生はふわりと浮かび上がり、どこかへと飛んでいった。

その場に残された全員が戸惑ったように顔を見合わせていた。

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