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第37話 入学式へ

 「リリス―、私もつれてってよ!」


「無理よ。」


「いいじゃんー。」


「規則で決まってるの。」


クレが不満げに頬を膨らませる。

今日は入学式だ。

荷物はすでに送付済みのため、私が持っていくのは斜め掛けのカバンくらいだ。

それの中身もほとんど入っていない。


「早く制服に着替えるわよ。」


私の言葉で、クレはようやく動き出す。

彼女が持ってきたのは、魔法学校の制服だ。


真っ白なブラウスに、黒の身体に沿う形のベスト。

ベストと同色のプリーツスカートを着用した。

注文通り、動きやすい設計になっている。


「ネクタイは、私がつけるからね!」


クレは深い緑色のネクタイを手に取り、結び始める。

あっという間にきれいな形で結ばれたネクタイはわずかに光沢を放っている。


「完成!」


「そうね。」


私はこくりと頷く。

その場に、沈黙が落ちた。

お互いに何も言わず、ただ目の前に立つ相手だけを見つめる。


先に口を開いたのは、クレだった。


「ねぇ、リリス。」


笑みを浮かべたその顔は、泣き出しそうに歪んでいた。


「ちゃんと、休みは帰ってきてよ?いっぱい話聞きたいんだから!」


「わかったわ。」


「ちゃんと寝て、ちゃんと食べてよ?」


「ええ。」


「困ったことあったらすぐに連絡して・・・ね?」


「わかったわ。」


クレの瞳から涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

私は彼女の涙をそっとぬぐう。

クレは私にギュッと抱き着いた。


なんで、私は泣けないんだろう。

何も感じないんだろう。


私はクレの背中をなで、わずかに視線を下げた。





 ロビーには、すでにお母様とお父様、使用人たちがそろっていた。

使用人たちの間を通る時、左右から言葉を投げかけられる。


「お嬢様、頑張ってください!」


「お達者で。」


「いつでも待ってます!」


その場に、たくさんの言葉があふれる。

私は小さく頷き、「ありがとう。」といった。


 お母様の隣に並び、背後を振り返る。

右手でお母様、左手でお父様と手をつないだ。


「行ってきます。」


「「「「行ってらっしゃいませ。」」」」


全員が声を出し、頭を下げた。

その瞬間、お母様が呪文を唱える。


「『(ボン)( ダン)( レスパス)』。」


私の視界は、温かい光に包まれていった。

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