第36話 入学準備②
「それでは、次は制服についてですね。」
店員たちが商品を持って部屋を出て行った後。
女性が立ち上がり、壁に設置されている棚から布見本とデザイン帳を取り出した。
それらがテーブルに置かれ、開かれる。
「こちらが、魔法学校の制服になります。」
私はそこに描かれた図面を見おろす。
細身のベストにプリーツスカート。
黒がメインで、銀色のラインが所々に入っている。
全体としては、落ち着いた雰囲気の制服だった。
「いかがでしょう?」
「・・・いいと思うわ。」
私は小さく頷く。
マルグリットが嬉しそうに顔をのぞき込んできた。
「かわいいですよね!」
「ええ。」
短く返す。
かわいいかどうかは、よくわからない。
でも――着心地がよさそうだった。
私は提示された数種類の布地に視線を移す。
そのうちの一つにそっと手を触れた。
「・・・いい素材ね。」
「そちらは、魔力伝導を考慮した生地になります。一番人気のものですね。」
「そうなのね。」
私は緩く相槌をうつ。
そして、少し気になった個所をそっと指さした。
「ここ、少し動きやすくできるかしら?」
女性はすぐに頷いた。
「もちろんです。それならば、スカートも少し動きやすく防護加工を施しますか?」
「お願いするわ。」
私が頷き返すと、お母様が静かにこちらを見た。
「ずいぶんと実用的ね。」
「そうですか?」
ただ、動きにくいのは困るだろうと思っただけだ。
私はもう一度図面に視線を落とした。
「これでいいわ。」
「承りました。それでは、次はネクタイの色ですね・・・この中でご希望の色はありますか?」
そこに並んでいたのは、赤、橙、黄、緑、青、紫、桃、水、白、黒の十色。
私は少しの間考え、静かに口を開いた。
「緑で。」
女性は頷き、手元の紙に何かをかきこむ。
「それでは・・・。」
パンッと手を一度鳴らす。
すると、扉から一人の職員が入ってきた。
運ばれてきたのは、フードが付いたローブ。
「こちらが、先ほどの制服の上に羽織っていただくローブになります。」
女性が静かにテーブルの上にそれを広げる。
胸元には小さく、背面には大きく光鳥の刺繍が施されていた。
どちらも主張し過ぎず、控えめな印象だ。
「学年ごとに、象徴となる生物は異なります。そのため、毎年買いなおしていただく形になりますね。」
そう言いながら、彼女が取り出した糸は5色の落ち着いた色合いだ。
光の当たり具合によってきらきらと輝く。
「刺繍糸はこのうちのどれかになります。クラスによって色が変わるので、入学式当日に受け取ってください。また、ローブは全員同じものを着用する規則となっています。」
私は頷き、意匠を何も言わずにじっと見つめた。
――ただの飾りじゃない。
『証』だ。
そんな予感がした。
「それでは、これから採寸をします。こちらに来てください。」
女性の言葉に、私は立ち上がった。




