第33話 その後
黒い靄が晴れていき、空間が白に戻った。
その場は静寂に満ちており、先ほどまで渦巻いていた魔力の名残だけが淡く残っている。
「逃げた、か・・・。」
ラヴィエンヌがぼそりとつぶやく。
氷の破片がパラパラと落ちた。
「魔力反応は、どこにもありません。怪我人の確認をします。」
マルグリットが振り返り、治癒系の魔法が使えるものを集め始めた。
リリスもそこに行こうと足を踏み出したとき、身体がふらりと揺れる。
ドサリ、と音を立ててリリスは崩れ落ちた。
目の前が暗く、かすんでいる。
魔力、使い過ぎてしまった、かしら・・・。
リリスはぼんやりとした頭で考えながらゆっくりと瞼を下す。
次の瞬間、意識は沈んでいった。
ふわりと体の中を魔力が駆け巡る。
手から中に入ってくる魔力は温かく、どこか懐かしい気配がした。
リリスはゆっくりと目を開く。
その瞳に映ったのは、1人の女性。
彼女は銀色に輝く髪を揺らし、後ろを振り返った。
「ラヴィ、この子が起きたよー。」
「本当!?」
バタバタという音が響く。
ラヴィエンヌがそっとリリスの顔を覗き込んだ。
「・・・おはよう。」
ラヴィエンヌの言葉に安堵の色が見える。
リリスは身体を起こした。
「おはよう、ラヴィエンヌ。」
次の瞬間、ガタンっという大きな音が部屋中に響いた。
リリスが振り向くと、そこに立っていたのはマルグリットと双子だ。
「よかった・・・。目が覚めたんですね。」
「よかった、よかった!」
「2日ぶりー。」
3人とも、その顔に笑みを浮かべる。
双子は満面の笑みを浮かべ、リリスが寝ていたベッドに飛びついた。
リリスは彼女らを受け止め、ラヴィエンヌを見上げる。
「2日ぶり・・・?」
「そう。あんた、2日間魔力切れで寝込んでたんだから!」
腕を組み、わずかに頬を膨らませる。
「これだけ早く目が覚めたのは、私のおかげだからね!」
ラヴィエンヌの背後から歩み出たのは、先ほどの女性。
彼女は自慢げに胸をそらした。
「はいはい、ありがと。」
「もー。」
ラヴィエンヌが軽くあしらい、女性は頬を膨らませる。
「・・・それで、あの後どうなった?」
リリスの問いに、マルグリットが口を開いた。
「あの後、部屋の中を捜索し、奥に扉を発見したので中に入りました。」
「危ないって言ったのに、マルゴが一人で行っちゃったの!」
リュシエンヌが頬を膨らます。
マルグリットは苦笑しながら話を続けた。
「中で転移の魔法陣を発見し、ラヴィエンヌさんに解読していただき、外に脱出できたんです。」
「すごかった、すごかった!」
「私は、リリスと一緒に寝てたよー。」
ラヴィエンヌを振り返ると、彼女はそっぽを向いていた。
「ありがとう、ラヴィエンヌ。」
ラヴィエンヌはツンとした態度で「別に。」と言った。
「リリスも起きたことだし、一度家に帰るか・・・。」
ラヴィエンヌは少々疲れた風にそういうと、リリスに背を向ける。
「とりあえず、魔力は安定してるし、問題ないでしょ。あんたの親が待ってるから顔出してあげなよ。」
彼女はそう言って手を振り、部屋を立ち去った。
「今から会いますか?」
マルグリットの問いに、リリスはこくりと頷いた。




