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第32話 特別試験の結末は――

 「それでいいわ。」


――次の瞬間、膨大な魔力がそれ以上に膨れ上がる。

リリスの髪がふわりと揺れ、その瞳がわずかに輝く。


「ほぅ・・・。変わったな。」


試験官は二ヤリと笑みを浮かべてつぶやく。


「もっと、空っぽだった。君も、素材の候補だったんだが・・・。」


リリスはその言葉を遮るように、口を開いた。


「そうね。正直、自分がなぜこんなことをしているのか、わからないわ。」


「ならば――」


「でも、この子を、絶対に渡してはいけないの。」


瞳に、確かな意志が込められる。

リリスは右の手のひらに練り上げた魔力を集中させた。


その時、彼女らの背後でマルグリットが即座に叫ぶ。


「リリスを中心に隊列を組んでください!絶対に、近づけないで!」


今まで通り、即座に陣形を展開しようと全員が行動を開始する。

ラヴィエンヌが全員を護るように氷で壁を張り巡らせた。

リュシエンヌはマルグリットに連れられ、エリーヌを抱えたまま後方に下がっていく。


試験官はその様子を見て、静かに笑みを浮かべる。


「いいね。・・・見せてみろ。」


彼女はゆっくりと手を天に掲げる。

頭上に巨大な魔石が複数出現し、宙に浮かぶ。


「君たちの、可能性を!」


白い空間を黒い靄が覆っていく。

それはあっという間に全員を包囲し、少しずつ縮まり始めた。

それと同時に、試験官が上げていた腕を勢いよく振り落とす。


「行け!」


合図と同時に、リリスたちを包囲していた魔物たちが一斉に駆け出した。


「結界を展開!」


マルグリットの指示で即座に結界が多重に展開される。

その間も、リリスは右手に魔力を凝縮させ続けていた。


ガンっと勢いよく魔物がぶつかり、核の魔石が砕け散る。


「え・・・?」


誰かがポツリと声をこぼした。

その次の瞬間、宙に浮いている巨大な魔石の一つが眩く輝いた。

それに呼応するように、粉々に砕け散った魔石が淡く輝く。


「まずい・・・!」


ラヴィエンヌが咄嗟に分厚い氷の壁を展開した。


 バァァァァァァァン!!!


次の瞬間、壁の向こう側で強烈な爆発音が鳴り響いた。

壁はそれに巻き込まれ、粉々に砕け散る。


「ほう。まだ、生きているとはな。」


試験官がそう呟くと同時に、再び魔物が召喚される。


「これ、キリがないな・・・!」


ラヴィエンヌが焦ったように声を上げる。

その隣で、リリスは静かに口を開いた。


「30秒だけ、時間を稼いで頂戴。」


「了解。」


リリスの言葉に、にやりと笑みを浮かべながら即答するラヴィエンヌ。

彼女は即座に声を張り上げた。


「攻撃を凌ぎつつ前進!援護する!」


「わかりました!」


マルグリットが指示を飛ばし、全員が動き始める。

全体の約半数が結界を展開し、残りの半分が魔物へと攻撃を打ち出した。

その大半が夜狼に避けられ、黒い巨人に落とされる。

受験者たちに扮した魔物から魔法が放たれ、結界を削った。


「くっ・・・!」


ラヴィエンヌが壁を作り、次の結界構築までの時間を稼ぐ。

その間にも、魔物の攻撃は続き、氷の壁にピシリ、とひびが入った。


「早く!」


「間に合いません!!!」


ラヴィエンヌとマルグリットの声が飛び交う。

次の瞬間――氷の壁は完全に崩れ落ちた。

大小さまざまな大きさの氷塊がその場に降り注ぐ。

その奥には、唸り声をあげ、いまにもとびかかってきそうな魔物の姿が見えた。


「まずい・・・!」


ラヴィエンヌがありったけの魔力を放出し、氷の壁を張ろうとした瞬間、リリスの魔力が大きくうねった。


「準備完了。・・・『(シャン)( ド)( プリュイ)』。」


リリスが右の手のひらを天へと向けると、魔石のさらに上に巨大な魔法陣が出現した。

それをすぐに放たず、その場にとどまらせる。


今度は、左の手のひらを天へと向け、静かに口を開いた。


「『(フォルス)( リエ)(エクラ)』。」


魔法陣が白い光に包まれていく。

両手を上にあげたまま、リリスは呆然とたたずむ試験官を一瞥した。

試験官は二ヤリと口の端を上げてつぶやく。


「素晴らしい。・・・やはり、お前は連れて帰らなければならないらしいな!」


その言葉と同時に、彼女は腕を横にふるう。

すると、受験者たちを襲っていた魔物は消え失せ、その場に巨大な魔石が1つ残った。

それは勢いよく宙へと発射される。

空中に浮かんでいた魔石も、それと同時に打ち出されてリリスの魔法陣へと向かっていった。


「遅いわ。」


リリスは、魔石群が魔法陣に到達する前に、ありったけの魔力を腕にこめて振り下ろす。

目の前が、光に包まれた。


魔法陣から降ったのは、光に包まれた雨。

それは黒い魔石――闇属性の天敵といえる光属性の力を持った水だ。


巨大な魔石の勢いが削がれ、落下を始める。

その瞬間、魔法陣から魔石と同じ本数の水流が魔石を打ち抜いた。


雨がやみ、魔法陣が霧散する。

試験官は地面に膝をつき、ぼんやりとその様子を眺めていた。


「まさか、あれが負けるなんてな・・・。」


不意に彼女はリリスへと視線を戻す。


「見事だった。」


静かに目を閉じ、愉し気な笑みを浮かべる。


「十分なデータを取れた。」


彼女は赤い髪を後ろに払い、踵を返す。


「ちょっと待ってください!他の人たちは、どこに行ったんですか!?」


マルグリットが声を上げる。

ラヴィエンヌは警戒しつつ、試験官をまっすぐに見つめた。


試験官はくくっと笑みをこぼし、顔だけ後ろを振り返る。


「生きてるさ。探してみな。」


その瞬間、霧が彼女の姿を隠していく。

その場には、彼女の笑い声だけが残されていた。

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