第30話 到着?
漆黒のドアの前。
誰も言葉を発さない。
そんな中、マルグリットがゆっくりと前に出る。
「開けます。」
彼女が扉に手を触れた、その瞬間――
「・・・重い!?」
全員が、ガクリとひざを折る。
足が動かない。
前に進めない。
「重力、ですか・・・?」
「違うわね。」
リリスが周囲をゆっくりと見まわしている横で、ラヴィエンヌが歯を食いしばる。
「空間そのものが、歪んでる。」
その時、不意に彼女たちの真横から膨大な魔力が立ち上った。
全員がそちらへと視線を向ける。
そこにあったのは、巨大な人型。
黒い霧上の体の中心に、巨大な魔石が浮かんでいる。
リリスとラヴィエンヌは、咄嗟に魔法を放つ。
しかし、攻撃が届かず、方向がずれる。
「厄介、過ぎるでしょ・・・!」
その時、リュシエンヌの背に乗っていたエリーヌが、まっすぐに人型を見つめる。
「・・・あそこ、ずれてるよー。」
その言葉を聞き、リュシエンヌも顔を上げて目を凝らす。
「ほんとほんと!ぐにゃってなってる!」
ラヴィエンヌの目が細まる。
「・・・見えたわ。」
「リリス!」
「ええ。」
2人は体中に力を込めてぐっと立ち上がり、空間のゆがみを読みながら駆けだす。
少しずつ人型へと接近しながら魔力を練り上げる。
そして――
「そこ!」
ラヴィエンヌの合図で、2人は一斉に魔法を放つ。
氷と蔦が同時に核の1点を貫いた。
巨大な魔石に、ぴしりとひびが入る。
一気に亀裂は広がり、次の瞬間、すべてが崩れ落ちた。
少しの間、2人は警戒しながら魔石の残骸を見つめる。
何の異変もないのを確認し、ゆっくりと構えを解いた。
「それでは、改めて開けますね。」
再び、マルグリットが扉に触れる。
今度は何も起きず、その場は静寂に満ちていた。
さらにぐっと力を入れて扉を押す。
すると、扉はゆっくりと開いていった。




