第28話 さらなる受難
「守ってください!」
マルグリットの反応は早く、即座に双子を護る結界が形成される。
他の者たちも続々と、列の外側と狙われている双子に結界を張った。
その状態で隊列を組み、一同は白い空間を進んでいく。
次第に、受験者たちは息を切らし始めた。
ラヴィエンヌとリリスは、相も変わらず列の先頭で夜狼の群れを切り裂いている。
列の後方でも絶え間なく魔法の光がはじけていた。
「しつこい!!!」
ラヴィエンヌがいら立ちをその顔に浮かべている。
リリスはいつも通りの無表情のまま、2人の後ろで全体に指示を出しているマルグリットを振り返った。
マルグリットが列の先頭部分にいる理由は、そこが一番安全だからに他ならない。
「止まったら、押し切られるわよ。」
「わかってます!全員、間をできるだけ詰めて立ち止まらないでください!」
その時だった。
「あれ・・・?」
エリーヌが違和感を感じて一瞬立ち止まる。
「どうしたの?はやく、はやく!」
リュシエンヌがエリーヌの腕をひいて急かす。
しかし、エリーヌは少し焦ったように列の後ろを指さした。
「変なの。マルゴ、前にいたよね?」
「そうだよ?」
「でも、後ろにもいるの・・・。」
その一言で、空気が変わる。
誰かが振り返った。
リリスとラヴィエンヌの後ろで、マルグリットは指示を出している――それなのに、
「ほんと、だ・・・。」
振り向いた瞬間、そこにもマルグリットが立っていた。
一瞬でその場が凍り付く。
「どうかしましたか?」
声も、しぐさも、魔力さえも同じ。
しかし、小さいがはっきりとした声が響いた。
「・・・違う、違う!」
「それは、マルゴじゃない!」
次の瞬間、それがぐにゃりと変形する。
「っ・・・!」
誰かが、声にならない悲鳴を上げる。
その姿は完全に崩れ落ち、黒い霧になる。
そして、複数の人型へと変化した。
「幻影・・・いや、擬態か!」
ラヴィエンヌは舌打ちする。
「全員注意してください!味方の姿をした敵が紛れている可能性があります!」
その場に混乱が広がる。
誰が本物なのか、わからない。
一瞬の判断が命取りになるこの状況を打開すべく、マルグリットは声を上げた。
「各班、点呼して!合図を決めてください!6人以上いる班は即報告してください。」
ざわめきの中で、各班が即座に言葉を交わす。
幸い、どの班もちょうど5人ずつだった。
「私たちは、黒は嫌い、にしましょう。」
「「了解。」」
「「わかったよー!」」
「いい?少しでも怪しいと思ったらすぐに確認して。」
ラヴィエンヌは念を押すようにそう言ってから、夜狼を防ぎに戻る。
混乱はわずかに収まり、受験者たちは再び進行を開始する。
その直後のことだった。
エリーヌの体がふらりと揺れる。
「え?」
リュシエンヌが目を見開き、咄嗟にエリーヌへと手を伸ばす。
「エリーヌ!?」
リュシエンヌはエリーヌを抱き留め、彼女の名前を呼ぶ。
エリーヌは額を抑え、苦し気に唇をかむ。
「何か、入ってくるの・・・。痛い、痛いよぉ。」
苦しげに呻き、息を吐く。
エリーヌの淡い金色の瞳がわずかに黒く濁った。
次の瞬間、エリーヌの体の力が抜ける。
「エリーヌ!!」
リュシエンヌが名前を呼びながら体を揺さぶる。
それにこたえるように、エリーヌが漆黒に染まった瞳をのぞかせた。
「ねぇ、これ、いいねぇ。」




