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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第2章 果汁100%! パン屋と四天王とワイバーン~至高の一品を求めて~編
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8-A 魔王ベルーニャ=ウッドバーグのパン屋開店準備

 少し時は遡り、魔王城にて。


「全員合格。お主も、お主も、お主も、お主も、お主も、魔王とする」

「「は、はああああああああ?」」


 濃紺ローブの神使様からの伝言を受け取った緑肌の老人は、頭を抱えながら、そう伝えてきた。


 その一言は私も含めて衝撃で、皆んなも同じように驚きの声を上げました。


 そして私、パン屋ちゃん(クラリム様命名)こと、ベルーニャ=ウッドバーグは本業パン屋、副業魔王としての人生を歩む事になったのです。



 前魔王様がお亡くなりになり、五人の新魔王誕生した、次の日。

 私を含めた新魔王の五人は、魔王軍の今後の方針について話し合いをすることになり、円卓の間に集まりました。


「神クラリムと神使リンドー様がお決めになられた通り、この五人が魔王ということになる。正直、儂自身、何がなんやらではあるが、これも神のお導き。信じるしかあるまい」


 今話しているのが前魔王側近のベシュッドさん。木の葉っぱのような緑肌に髭を生やしたお爺ちゃん。通称ベシュさん。好きなパンはロールパン。


「とは言っても、一旦だ。前魔王亡き今、混乱がこれ以上増えぬようにということやも知れん。情勢が落ち着けば、また新たな魔王を選ぶことになろう。それまでは皆で協力して、事に当たるとしよう。儂としても残りの人生を懸ける所存だ、よろしく頼む」


 お爺ちゃんだけど、魔王と同じように卓を囲めないと言って、少し離れた位置で立っている。

 前魔王がお亡くなりになっても、軍が荒れていないのはベシュさんの尽力があるからって聞いたから、凄いヒトなんだと思う。


 よく分からないので、あんまり、詳しく説明出来ないけど。


「ということだから、新魔王会議を始めるわね。特に問題なければ私が仕切るわ、さっさと終わらせたいし」

「はい! 大丈夫です!」


 私は大きな声で返事をしながら、少し肌色が悪そうな女性の腕にある蛇に目を向ける。


 このクールビューティーな女のヒトがシエラさん。

 昨日急に魔王城に泊まる事になったから、同じ部屋で寝たけど、すっごく親切だった。少し教えてもらったけど、やっぱり右腕の蛇が本体で後の部分は特に意味はないんだって。


 ヒトだけど、ヤドカリの殻みたいな感じなのかな。そっちにも名前はあったみたいだけど、教えてはくれなかった。

 あとあと、シャキシャキ野菜の入ったサンドイッチが好きみたい。


「今後、私達が魔王として指示を出すことが多くなると思うけど、その時、意見が割れたらどうやって決めるか考えましょうか。なんでもいいけど、これは重要だからねぇ……ルクスどうぞ」

「五人だし、多数決でいいんじゃないか? 賛成多数で可決って感じで」


 快活な笑顔がトレードマークな青年がそう答えた。

 このヒトはルクスさん。なんと言ってもびっくりなのが、魔族じゃなく人族なのです。しかも元勇者! ただ昔の仲間や故郷の人に大変な目に遭わされて、魔王になろうと思ったんだって。


 良いヒトなのに。ひどい。

 それに味覚も色々あって分からなくなったんだって。だから味が付いているパンが好きって言ってたけど、だいたい味付いてるし……味が濃い方がいいのかな。今度、色々なパン作って食べてもらおっと。


「多数決ね。ま、それが無難ね。ただ、一々集まって決めるのは流石に面倒ね」

「よいか」


 音も立てず、肘を伸ばし切らず上品に手を挙げたのは蝙蝠翼を持った青年。


「どうぞ、好きに喋って頂戴。一々、手を上げなくてもいいから」

「ではこの我、レメン=ローマイアラ=ベルド=ヲン=アッシュメント=ベルト」

「——話すなら、端的に」

「……進言する。せっかく五人もいるのだ。個々の適正に見合った役割を担い、それに関しては魔王として自らの判断で実行するというのはどうだ?」

「細かいのは自分で決めて、大事な事だけは皆んなで集まるってことだよな。いいじゃんジンペ!」


 長い名前は覚えられないからメモってたけど、四十文字以上あるから、申し訳ないけど、ジンペさんって呼んでる。

 ジンペさんは、んとんと、正直良く分かんない。話はしたけど、難しい単語が並んでたから、話に付いていけなかったのです。不甲斐ない。なんとか聞き出せた好きなパンもあんこが入っているくらいしか分からなかったし。もうあんこ系のパンで総当たりで反応をみるしかないのです。

 ただ、ジンペさんとルクスさんは昨日から仲が良かったけど、夜も一緒の部屋で枕投げをして遊んだって言ってたから、すっごく仲良くなってる。歳が近かったとかかな。


「個々の適正ねぇ〜」


 うぐっ。シエラさんの視線が突き刺さった気がした。

 多分三人くらい見ていたと思うが、多分私が一番何も出来ないので、心苦しい。


「ま、適性が云々は後で考えるとして、そうね、その案で行きましょう」

「うむ。シンプルなほど良い! 細かくルールを決めても、分からねば意味はあるまいて。な、ベルーニャ!」

「はい! そうですね、オルドさん! 私も分かりやすい方が好きです!」


 筋骨隆々にフサフサの髪、そして巻貝のような角を生やしたヒトはオルドさん。


 このヒトも凄い。何が凄いって魔王軍の中で最も力持ちなんだって。魔王軍で一番なら、もう世界で一番だよねきっと。

 好きなパンはジューシーなホットドック。私は小さい時はマスタードが苦手で付けれなかったけど、最近は付けた方が美味しいって思い始めてきた。


 これって、もしかして私、大人になったのかな。


「時にシエラ! この会議とやらはいつまでやるつもりだ。オレとしてはこのような場所で閉じこもるより、外で鍛錬をしたいのだが!」

「それ、いいなオルドのオッサン。うぉぉぉ、俺と手合わせしてくれよ! 最近全力出せなくて鈍ってんだ!」

「良かろう、小僧。オレの実力見せつけてやるわ」

「いいねぇ〜、ジンぺも行くよな?」


「魔練剛腕のオルドバランと、元勇者ルクスと鍛錬? ……残念だが、遠慮しておこう。この我の力は無闇やたらに見せつけるものにあらず、真の強者にのみ発揮されるのだ」

「ほへー、やっぱりジンペさんも強いんですね。私も魔王だから強くならなくちゃいけないのかな……」

「至宝のパン屋ベルーニャよ。そう慌てる、慌てることはない。力が無くてもそれぞれの個性を磨けば良いのだ……はぁ、僕なんて、なにも出来ないし。まだパン作れるだけ凄いよ……」


 会議をそっちのけで各々話してしまう私たち。

 それに焦ったのかベシュさんがシエラさんに話掛ける。


「と、止めなくてよろしいのですか?」

「それ、私に言っているわけ? ふぅー、魔王達がやりたいって言ってるんだから、放っておけばいいじゃない。下手に刺激すれば巻き込まれるかもしれないしねぇ。私も強くないし、あんなバカどもと戦ったら命がいくつあっても足りないわ」

「それはそうですが、このままでは……」

「そうねぇ〜、私もさっさと終わらせて宝物庫の財宝をチェックしたいし……ん?」


「あ、あの!」


 私は大きな声を出し、ピンと腕を上げた。

 皆んなが楽しそうに話しているのを邪魔してまで言うべきことじゃないのかもしれない。

 でもやっぱり、まずは言っておかないといけない。


 皆んなの視線が私に向く。


「大変言いづらいんですが、私、パン屋オープンしたいです! なので、許可を下さい! 私がこの魔王軍の配給を美味しくするので!!」


 私ことベルーニャ=ウッドバーグが五人目の魔王。

 好きなパンすら決められない普通の町娘は昔の姿。今の私は、魔王城にパン屋を出展する為に魔王になったのだ。


 少し顔を赤ながらもそう高らかに宣言するのだった。


「よし、決を取るぞ、賛成の者」


 迷いの無い手が五つ上がった。


「満場一致だ、よかったではないか、ベルーニャ!」

「はい! ありがとうございます!」


 魔王は五人。

 私一人が魔王だったら絶対に大丈夫と思っていたから、そうでなくなって少し不安だった。

 でも、私の場違いな発言も皆んなは受け入れてくれた。


「はいはい、じゃあベルーニャのパン屋が早く始められる為にも、さっさと会議進めるわよ。まだまだ決めないといけないことあるだろうから」


 機を逃さないとばかりにシエラは会議を先導した。

 そこからは大きな脱線もなく、会議は進んだ。

 私はパン屋だけじゃなくて、魔王でもあるのでメモを取りながら話を聞いていたけど、魔王軍の兵站の話や戦争調停の話など、なかなか難しかったです。今度、ベシュさんに聞いてみて頑張って理解する事にします。


 そうして、五人の新魔王体制がスタートしたのです。


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