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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
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98/105

予感と……迷い?





「泥沼、どうしようか? 病院につれてく?」

 けがを負わされて私たちの前に現れた泥沼は、がーがーといびきをかいて本格的に熟睡モードになっていた。凄まじく気になることを言っておいて、なんてのんきなんだろ。

「放っておきましょう。時期に復活しますから」

「……うぬ」

 いつも一緒にいる海鞘蕗と殿面が言うのなら、放っておいていいのだろう。

 とはいえ、こんなところで放っておくのもどうかと。駅前の広場で、人通りもそこそこある場所で寝ているせいで、ちらちらと人の目が泥沼や私たちに向けられている。飲んだくれかなにかにたかっているように見えるのかな?

 そんなことを思っていると、スマホが鳴った。コール音だ。取り出してみると、このみちゃんからだった。

「ちょっとごめんね」

 一言断ってから、離れて電話に出た。

「もしもし?」

「あ、叶恵?」

 少し、間が空いた。私はこのみちゃんが何かを言うのを待っていたのだけど、次の言葉がくるまでが遠かった。

「……アンタさ、大神が今どこにいるか知ってる?」

 どくん、と心臓が一際強く高鳴った。

「知らないけど……なんで、訊くの?」

「ちょっとさ、アイツを探さなくちゃいけなくなって……」

 言葉が途中で途切れて、間が空いた。言いあぐねている。言葉を探しているのか、言い辛いのか、伝えにくい事情があるのか。邪推だとは思うけど、当たってもいるはず。

 私はこのみちゃんの言葉を待った。無ければ、また訊き返すつもりで。

「はぁ、やっぱ適当な言い訳思いつかないわね。ごめん、本当のこと言うわ。そっちのほうが訊きたいのよね」

「うん」

 聞き返して、このみちゃんの言葉をまた待つ。覚悟が決まっているのか、今回は早かった。

「……順一がさ、ボコられたの」

「ワンちゃんに!?」

「そんなことする奴じゃないでしょ? ボコったのはアンタの知らない相手。でも、順一がね、そいつと大神が話してるのを見てたっていうのよ」

 本当は安心できるタイミングだったのだろう。ワンちゃんが何もしていないって聞いて、一息つけるとこのみちゃんは思っていたのかもしれない。

「一緒にはいないのよね」

「うん、ワンちゃんとは夕方に一度会ったけど……」

「そう。ま、アタシらは直接会ってボコった奴と関係あるかどうかを確かめたいの」

 ……そっか。

「アタシらも人数割いて探してるからさ、見つかったらアンタにも連絡するわ……じゃあ」

「……うん」

 返事をすると通話が途切れた。

 このまま、待つ?

 自分にそう尋ねかけた時には、もう走り出していた。

 会いたい、ワンちゃんに会いたい。今、何をしているの?

 会わなくちゃいけない。そうは思う……。でも、でも……。

『会って私に何ができるの?』

 立ち止まっていた。

 先生は私にならできるって言ってたけど、何をすればいいの?

 夕方に会ったときは話もろくにできなかった。何も聞いてくれずにただただ怖かった。

 言葉を拒絶された。それなのに、私にどうしろっていうの?

 それに、どこにいるかもわからない。

 これじゃあ、私にはどうしようもないじゃない。

「急に走り出されると驚くし」

 後ろから声がして振り向く。真虎君がいた。無我夢中で走り出してしまったせいか、駅から少し離れて、人通りの少ない道に入っていた。

「どうしたの?」

 心配そうな声で訊いてくる。

「真虎君……ごめん、ちょっと……ね」

 思わず言葉を濁してしまう。

「話せない? 僕には」

「そういうわけじゃ、ないんだけど……」

「大神の事で悩んでるし。違う?」

 図星だ。はは、簡単に見抜かれてる。

「……ううん、違わない。聞いてくれる?」

 さっき返答を躊躇ったのが申し訳なく思って……ううん、それは言い訳。本当は誰かに今の私の気持ちを、言いたかったのかもしれない。

「構わないし」

 真虎君の優しさもあり難くて、つい口が軽くなる。

「このみちゃんから電話があって、順一君が怪我を追わされて……その人とワンちゃんが一緒にいたみたいなの」

「別に、大神が手を出したわけなじゃないし」

「でも、ワンちゃんの様子ずっとヘンで……今日会ったときも何を話しても聞いてくれなかった」

 言葉は、喉の奥からふわふわと浮かんでいくように次から次へと声となって出ていく。

「先生が、私ならワンちゃんの力になれるって言ってたんだけど、自分ではそう思えないの。なんとかしたい、どうにかしたいって思うのに、何をすればいいのか、どうすればいいのか、分かんない」

 腹立たしいよりも悲しいよりも悔しいよりも、空しい。空っぽだ、私は。何もできない。何も……。

「なーんにも分かんない。そもそも、ワンちゃんだってどこにいるのかも分かんないのに、どうしようだとか、どうすればいいとか嘆いたって、意味ないのにね……」

 真虎君は、私の言葉をずっとずっと黙って聞いてくれていた。真剣なのか気が抜けているのか分からない、いつも通りの表情でただただ聞いてくれていた。

 その真虎君が、私の話を聞き終えたあとに、まず最初にしたことは、ふぅ、と一つだけ息を零したことだった。

ども、作者です。


え~、無事に最後まで書き上げることができました。もう終わりまでノンストップです。

連休中にでも毎日更新して見ようかなと思っています。

もし、よろしければ最後までお付き合い下さい。



こんなことをいう日が来るなんて、感慨深いものですねぇ。

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