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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
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93/105

夜中の……出会い?

 少し出てくる。

 そう言って一和が出てから、どれだけの時間が経っただろう。スマホの充電も切れ、あの部屋には時計も無かったから、今の時間が良く分からない。

 日はとうの昔に落ちていた。後はより深まっていくばかりだろう。街の明かりが一つ消え、二つ消え、いずれ数えるほどの明かりだけが残り、静かな深夜を迎えるだろう。

 そして、深夜の町はいずれ朝を迎える。いつも通りに、平和な朝を。

 自分は違うと、一和は思った。

 また戻るのだろう。一和に助っ人を頼んだ連中の小さくて粗末で汚いアジトに。

 アジトなどとは言い過ぎか。ただのアパートの一室、誰かの借りている部屋か、あるいは勝手に居ついている部屋か。

 どちらにしろ、男ばかりがたむろするには狭く、人いきれが激しくて休めた物ではなかった。あと臭い。

 悪くなる一方の気分を少しでも改善させるため、一和はふらりと外に出た。

 ただそれだけのこと。

 外の綺麗は部屋と比べると遥かにきれいで、一呼吸で肺に貯まった嫌な臭いが洗浄されるようだった。

 街の活気はまだ残っている。一和が足を踏み入れたのは繁華街。飲み屋や店屋が並び、この街では一番明るい場所だった。

 人もたくさんいる。しかし、部屋よりははるかに、落ち着くはずだった。

 知っている人もいない。顔を合わせても興味のない人間がたくさんいる。

 だから、落ち着くと思っていた。

 落ち着かない。胸の奥がざわざわとしている。

 なぜ……喧嘩らしい喧嘩はできた。懸と少しだけやりあった。あれが自分の望んでいた出来事だったはず。

 なぜ……。明かりがほんのりと照らすアスファルトに落とした視線に、一瞬風景が見えた気がした。

 いいや、見えた。

 これまでの日々だった。

 誰かがいて、小さな問題があって、何か感情があって……。

 一和は目を閉じ、一度前を向いた。

 そして目を開いて、また歩き出す。一和に自覚は無かったが、歩みの早さがさっきよりも速くなっていた。まるで、少しでも遠くに行こうとしているかのように、逃げるかのように、早く。

 途中、ぴたりと立ち止まった。

 辺りに人はいなかった。繁華街とはいえ、歩きや自転車で移動する人間の数は少なかった。

 しかし、一和の前には一人の男が立っていた。

 ガタイが良く、ライダージャケットを着た男。いかつい顔の三白眼が一和を睨みつけていた。

「竜美の野郎は幅聞かせてるらしいじゃねえか。お前はどうだ?」

 構わず、一和は歩き出す。

「おいおい、後輩に目をかけてやってるってのに」

 横を通り過ぎようとする一和に、男は話しかけた。口元に笑みを湛えているのに、目は全く笑っていない。無表情でもなく、睨みつけるような目が、未だに一和を捕えていた。

 隣に立ち、一和は再度立ち止まった。

「敗走したヤツに興味はない」

 一和はやっと睨み返した。

 知っている顔だ。懐かしい顔だ。

 去年、懸の仲間たちに倒されて学校を去っていた男、名前は覚えていないが、当時は番長と呼ばれていた男だった。今でも昔でも、一和はこいつに負ける気はしていない。

 番長は嬉しそうに鼻を鳴らした。

「言ってくれるじゃねえか。竜美の奴に言っておいてくれや。いつかオトシマエつけてやるからな」

 お互いにもうこれ以上話すことはないと言うように、前を向いて歩き出した。

 十秒ほど歩いた。まだ、お互いに大きく離れてはいなかった。

「おお、そうだ」

 一声挙げて、元番長は振り向いた。

「大神、お前の仲間連中に挨拶してきたぜ?」

 一和に聞こえるような大きな声で言う。一和は振り返った。

 仲間?

 ……元番長が歩いて来た方角は、今一和が向かっている先にあるのは……。

 あの連中のアジト。

 一和は気が付くと、走り出していた。



 かかか、と笑い声が聞こえた。

 一和の姿をこんなところで見かけるとは思わなかった。

 特に関係があるわけでもないが、なんとなく気になって追いかけていたのは、金髪を逆立てた背の低い男、下中順一だった。

 思わず、ぶるりと背中が震えた。

 まさか、元番長がこの町にまだ残っていたなんて。

 一和が走り去って笑い声をあげる姿は、学校で見た支配的な笑いで、不愉快だ。

 そんな相手と一和が何やら言葉を交わしていた。

 仲間が……なんとかって。後をっていたものの、距離があったせいかいまいちよく聞こえなかった。

 一和。元番長。仲間……ま、まさか……。

 順一の脳裏に一つの予感が浮かんだ。それは強烈な印象をもたらし、なかなか拭い去ることができないでいた。

 と、そのとき。

 にやりと笑う元番長の三白眼とばっちりと目が合ってしまった。

 やばい……。

 順一は急いで踵を返し……。

 ……。

 …………。

ども、作者です。


もう、最終話を期日までに仕上げられないかもしれませんね。その時は何とか調整してみます。

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