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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
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92/105

私にできる……こと?

景色が早く流れていく。車窓から除く広く伸ばした濃紺を被っている街の風景、ぽつぽつと見える明かりは生活のともしびで、一つ一つがゆっくりと私と同じ時間を過ごしている。

 いいや、私とは違うかも。今日は随分と早く夜になった気がする。今乗っている車と同じように。きっといろいろと合ったから。

「アイツが出て行ったのは、やっぱり先生が悪いんだ。子供二人に迷惑をかけておいて、ノコノコと帰ってくる親だ。咲宮さんだってそう思うだろう?」

 隣には大神先生がいる。お嬢のお爺さんの話が終わった後、車で来ていた先生に家の近くまで送ってもらうことになった。

 しばらくは静かで会話もなかったけど、沈黙に耐えきれなかったのか先生はやっと口を開いた。

「わ、私は……その、良く分からないです。お父さんいなかったし」

「ごめんね。気配りも出来ないなんて、悪い大人だよ」

 先生の横顔が苦々しく笑う。

「あ、いや、全然そんなこと。構いませんよ、私の場合は本当によく分からないんです……ワンちゃんの思ったことが……」

 どうして、ワンちゃんはあんな風になってしまったのだろう。それが例え、本当に先生のせいであったとしても、あの様子に行きつくまでの道筋は私には想像できない。特に、私には……。

「……私、中学の頃にお母さんが入院して、アルバイトをしていたときがあるんです。迷惑が掛かったかって言えば、正直そうでしたけど、それ以上にお母さんが帰って来た時は、嬉しくって……」

 ファストフード店でバイトをしていたのも、もう随分と昔に思える。だいたい二年くらいは前の事かな。あのときは本当に大変だった。

 仕事もあまりうまくいかなかったし、慣れるまでに時間もかかったし、忙しいときは本当に忙しかったし、お母さんもいなかったし。

 大変さに勝る寂しさがあった。一人で食べるご飯も、一人で迎える朝と夜も、今の今まで忘れていた、無意識に忘れさせてたくらいに嫌な思い出。

 埋もれていたんだと思う。お母さんが帰って来た時が嬉しくて。お母さんもまだすぐに仕事はできなくて、当分は私もバイトをしていたけど、そのころの記憶の方が鮮明に、色鮮やかな景色だった。

「家族だったら子供でも親でも、迷惑が掛かって当たり前って、私は思ってて。だから、私はそのときは何とも思わなかったんですけど……ワンちゃんは、そうじゃなかったのかな……」

「……だろうね。先生に本当に帰ってきて欲しくなかったんだ。君はお母さんが入院して憎いと思ったかい?」

 私は首を振った。先生はフロントガラスの先を見て運転していたから、それは見えてはいなかったと思う。でも、先生には私がどうこたえるか分かっていたみたい。

「違いはそこさ。一和は思っていたはずだよ。母親が死んでも連絡一つ寄越さずに、帰ってくることもしなkったんだから、憎いと思ったはずさ。心の底から」

 まっすぐ前を見て、車の運転のように淡々と先生は言う。

 先生は、自分が憎いと思われても平気なのだろうか。ううん、平気な人なんているはずない。憎まれているって分かっているのなら、なおさら平気でなんていられない。

 でも、

「でもそれも子供の頃の……」

「昔の事でも、憎さってのはいつまでも残り続けるもんさ」

 きっとそうなのだろう。まだ憎いからワンちゃんは家を出てしまった。

「でも、憎さも過去の事として受け入れることはできる。いいや、理不尽なhなしかも知れないが、生きていくには受け入れていくしかないんだ」

 先生はハンドルを切った。車が曲がり、まっすぐの道に出た。その道は殺気の道とは変って、車の数が少なく車はすいすいと進んで行く。

「苦しいだろう、一和には。先生も自分が置かれた状況を受け入れ切れていなかった。十年も家を離れていたが、半分くらいは兵の向こう。いつ抜け出して復讐するかを考えてたよ……しなくていいと受け入れるのは難しかった」

 前方で赤い光がちかっと瞬いた。車が止まる。赤信号だ。

 車が止まった後、先生の横顔が動いて、私を見た。

「先生が言っても説得力はないだろうけど、一和にはその憎しみも、先生がしたことも受け入れてもらわないと……よく大人が言う、大人に成れってやつだ」

 それからまた先生は前を向いた。信号は変らない。

「……だけど、簡単な事じゃないし、一和は受け入れ切れなくて苦しんでる。原因だからこそ、一歩でも息子が前進するのを手助けできないのは、無力なもんだ」

 まだ信号は変わらないけど、左右の信号は黄色になっていた。もうすぐ進めそう。

 車のアクセルを踏む前に、先生はもう一度私に目をやった。軽い笑みを浮かべていた。

「差君さん、一和を助けてくれるかい?」

「え?

「君はあいつと仲がいいだろう? だから頼むよ。君ならきっと、あいつの力になってくれる」

「た、頼まれても……」

「大丈夫さ」

 先生の力強い声と共に、車がぐーんと前に進んだ。

 頼まれって……私に、何ができる?

 大人になるとか良く分からない。私だって大人なんかじゃないし、ワンちゃんの手助けって言ったって、受け入れさせるってイッタって、どうやって?

 何をすればいいの?

 私なんかに何ができるの?

 仲がいいからって、できることなんて……分かんない。分かんないよ……。

ども、作者です。


続きを早く書かないとダメですね。結構ヤバいです。

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