再開は……最悪?
よし、ワンちゃん探し、頑張ろう。
とやる気になるのはもうちょっとあと。まずはお嬢との約束を終わらせてしまわないと。作治君も探してくれると言ってくれて、私がお嬢に会っている間にも先に探してくれるみたい。これで心置きなくお嬢の家に行くことができるというわけだ。
そういうことで、私は放課後になってすぐに、学校から少し離れた、駅前のデパートの前でお嬢のお迎えを待っている。
放課後に待っている、と言っていただけでこれといった時間を指定していないから、もしかしたら先に来てるかも、なんて思ったけれど、まだ来ていないみたい。
だいたい十分ぐらいが経った頃、私のスマホが鳴った。見てみると、千和さんからのメールだった。
なんだろう? と思ってみてみると、
『昨日はごめんね。一和について聞かれたのにはぐらかしちゃって。やっぱり考え直して、本当のことを伝えようと思うの。あいつ、家出しちゃって。でも、心配なんてしなくて大丈夫よ。一和のことだから、すぐに帰ってくるわ。これ以上叶恵ちゃんは気にしなくたっていいのよ』
という内容のメールだった。
気にしなくていいと言われると、なんでもかんでも余計に気になってしまう。千和さんには教えてくれてありがとう、と返信打っておいた。できれば、もっと状況が知りたくもあったんだけど……多分、教えてくれないと思う。
そして、相変わらずワンちゃんからの連絡はなかった。メールやラインを送るだけじゃ、ただ単に気付いていないってこともあり得る。
電話、してみようかな。まだお迎えも来そうにないし、電話が出来たら出来たで後々に探すのが簡単になる。どこにいるのかだけでも分かれば……。
そう考えたら、いても立ってもいられなくなったみたいに、私は電話をかけようとした。
一応、まだ本当にお迎えが来ていないかを調べるために、周囲を見渡す。
車、かな。歩いてお嬢がやってくることもあるかもしれない。道をきょろきょろと見回す。帰宅時間が重なっている学生と、それぞれの用事をもった大人たちの姿。
私ははっとした。
その道を行く人の中に、鬣のような黒い髪の後姿が見えた。服装はあまり良く見えなかったけど、その後姿を私が見間違うはずがない。
待ち合わせの場所だということも忘れて、私はその後姿の方に走り出した。
幸い、距離はあまり離れていなかった。走って横断歩道を渡って行くと、横顔が見えた。
ワンちゃんだ。何人かのガラの悪そうな男達が、ワンちゃんを囲っている。敵対しているというよりは、仲間のように扱われている感じで。
声が出かけて、喉の辺りで留まる。周りの人達が怖くて、尻込みしてしまった。
でも、すぐに思い直す。怖いけどどうってことはない。だって、ワンちゃんに会って確かめたい、話したいもの。
「ワンちゃん!」
大声で叫ぶと、すぐにワンちゃんが振り向いてくれた。
「ワンちゃん? 誰なんです?」
他の周りの人達も振り向いて、その内の一人がワンちゃんに声をかける。みんな顔に包帯を巻いていて、怪我をしているみたいだった。
「ちょっと待ってろ」
ワンちゃんはそういうと、私の方に近づいてきてくれた。
「なんだ?」
口ぶりは高圧的だった。
「なんだじゃないよ。千和さんも心配してたよ。どこに行ってたの?」
矢継ぎ早に質問すると、ワンちゃんの顔がどんどん曇っていった。すごく不愉快そうに。
「いいだろ、別に」
「よくないよ……ねぇ、何があったかわからないけどさ。そんな一人でどこかに行ったりしたって、みんなを心配させるだけだよ。帰ってきて。私だって……」
心配している。そう言おうとした声が、遮られる。
「構うな! お前には関係ない!」
思わずびくりと飛び跳ねそうになった。ワンちゃんの怒鳴り声に、周りの人達も何事かと視線を向ける。
「……ねぇ、何があったの?」
普通のワンちゃんじゃない。なんだかおかしい。別人になったみたいな態度を取るワンちゃんに、何もなかったなんて思えない。
「どうしたの。ねぇ、ワンちゃん!」
「掘っておいてくれ」
「放っておけないよ、私は……」
続きに、何を口走ろうとしたのか、私自身にも良く分からない。言おうとしたことを遮ったのはワンちゃんでもなく、急に道に沿って一台の黒い車が止まって、ドアが開いたせいだ。
その車の中から出てきた人に、私もワンちゃんも目を向けた。
焼けた肌をした、短い黒髪の同い年くらいの男の子。一瞬、誰だか分らなかったのは見慣れないスーツ姿だったからだろう。
お嬢の幼馴染の、純くんだった。
どうして、と思ったけれど、理由は単純明快だ。きっと私を迎えに来てくれたのだろう。純君は私とワンちゃんを交互に見て、
「お嬢に言われて迎えに来たが……取り込み中か?」
と訊く。実際、そうなんだけど何をどう言っていいのか、ちょっと戸惑ってしまった。
その直後に、ざわめき声が辺りで上がった。
「おい、こいつら……」
「間違いねえ! 他の連中を襲った奴らのケツモチだ!!」
声を荒げているのは、ワンちゃんの連れている連中だった。彼らは純君を見たと思うと、すぐに彼に近づいていく。
「こいつらで間違いないっす。やりましょうぜ」
そして、その内の一人。一番年齢が高そうな男の人が、ワンちゃんに言った。みんな敵意剥き出しで、ワンちゃんも私から目を離すと、
「ああ」
と承諾したように一言零した。
「……街の不良連中が何の用だ?」
「うるせえ! テメェらのせいでなあ! 俺らも幅きかせらんなくなってんだ! 覚悟しやがれッ!!」
はっきりとした宣戦布告のようなものだった。純君がいた車からも二人ほどスーツ姿の大人の人が出てくる。完全にあっちの人達だ。見た目からして、怖くて強そうで、何よりも普通に生きてきた人じゃない目をしている。
そんな人達が出て来ても、ワンちゃんの引き連れていた人達も一歩も引かない。まさに火花が散っているような一食触発の状況。
その中心に、ワンちゃんがいる。
どうしたの? 何があったの?
私は何も理解できないままに、どんどん先へと動いていく。私だけを取り残しているみたいに。
ども、作者です。
ああ、ストックがそろそろヤバくなってきてますね。




