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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
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86/105

再開は……最悪?


 よし、ワンちゃん探し、頑張ろう。

 とやる気になるのはもうちょっとあと。まずはお嬢との約束を終わらせてしまわないと。作治君も探してくれると言ってくれて、私がお嬢に会っている間にも先に探してくれるみたい。これで心置きなくお嬢の家に行くことができるというわけだ。

 そういうことで、私は放課後になってすぐに、学校から少し離れた、駅前のデパートの前でお嬢のお迎えを待っている。

 放課後に待っている、と言っていただけでこれといった時間を指定していないから、もしかしたら先に来てるかも、なんて思ったけれど、まだ来ていないみたい。

 だいたい十分ぐらいが経った頃、私のスマホが鳴った。見てみると、千和さんからのメールだった。

 なんだろう? と思ってみてみると、

『昨日はごめんね。一和について聞かれたのにはぐらかしちゃって。やっぱり考え直して、本当のことを伝えようと思うの。あいつ、家出しちゃって。でも、心配なんてしなくて大丈夫よ。一和のことだから、すぐに帰ってくるわ。これ以上叶恵ちゃんは気にしなくたっていいのよ』

 という内容のメールだった。

 気にしなくていいと言われると、なんでもかんでも余計に気になってしまう。千和さんには教えてくれてありがとう、と返信打っておいた。できれば、もっと状況が知りたくもあったんだけど……多分、教えてくれないと思う。

 そして、相変わらずワンちゃんからの連絡はなかった。メールやラインを送るだけじゃ、ただ単に気付いていないってこともあり得る。

 電話、してみようかな。まだお迎えも来そうにないし、電話が出来たら出来たで後々に探すのが簡単になる。どこにいるのかだけでも分かれば……。

 そう考えたら、いても立ってもいられなくなったみたいに、私は電話をかけようとした。

 一応、まだ本当にお迎えが来ていないかを調べるために、周囲を見渡す。

 車、かな。歩いてお嬢がやってくることもあるかもしれない。道をきょろきょろと見回す。帰宅時間が重なっている学生と、それぞれの用事をもった大人たちの姿。

 私ははっとした。

 その道を行く人の中に、鬣のような黒い髪の後姿が見えた。服装はあまり良く見えなかったけど、その後姿を私が見間違うはずがない。

 待ち合わせの場所だということも忘れて、私はその後姿の方に走り出した。

 幸い、距離はあまり離れていなかった。走って横断歩道を渡って行くと、横顔が見えた。

 ワンちゃんだ。何人かのガラの悪そうな男達が、ワンちゃんを囲っている。敵対しているというよりは、仲間のように扱われている感じで。

 声が出かけて、喉の辺りで留まる。周りの人達が怖くて、尻込みしてしまった。 

 でも、すぐに思い直す。怖いけどどうってことはない。だって、ワンちゃんに会って確かめたい、話したいもの。

「ワンちゃん!」

 大声で叫ぶと、すぐにワンちゃんが振り向いてくれた。

「ワンちゃん? 誰なんです?」

 他の周りの人達も振り向いて、その内の一人がワンちゃんに声をかける。みんな顔に包帯を巻いていて、怪我をしているみたいだった。

「ちょっと待ってろ」

 ワンちゃんはそういうと、私の方に近づいてきてくれた。

「なんだ?」

 口ぶりは高圧的だった。

「なんだじゃないよ。千和さんも心配してたよ。どこに行ってたの?」

 矢継ぎ早に質問すると、ワンちゃんの顔がどんどん曇っていった。すごく不愉快そうに。

「いいだろ、別に」

「よくないよ……ねぇ、何があったかわからないけどさ。そんな一人でどこかに行ったりしたって、みんなを心配させるだけだよ。帰ってきて。私だって……」

 心配している。そう言おうとした声が、遮られる。

「構うな! お前には関係ない!」

 思わずびくりと飛び跳ねそうになった。ワンちゃんの怒鳴り声に、周りの人達も何事かと視線を向ける。

「……ねぇ、何があったの?」

 普通のワンちゃんじゃない。なんだかおかしい。別人になったみたいな態度を取るワンちゃんに、何もなかったなんて思えない。

「どうしたの。ねぇ、ワンちゃん!」

「掘っておいてくれ」

「放っておけないよ、私は……」

 続きに、何を口走ろうとしたのか、私自身にも良く分からない。言おうとしたことを遮ったのはワンちゃんでもなく、急に道に沿って一台の黒い車が止まって、ドアが開いたせいだ。

 その車の中から出てきた人に、私もワンちゃんも目を向けた。

 焼けた肌をした、短い黒髪の同い年くらいの男の子。一瞬、誰だか分らなかったのは見慣れないスーツ姿だったからだろう。

 お嬢の幼馴染の、純くんだった。

 どうして、と思ったけれど、理由は単純明快だ。きっと私を迎えに来てくれたのだろう。純君は私とワンちゃんを交互に見て、

「お嬢に言われて迎えに来たが……取り込み中か?」

 と訊く。実際、そうなんだけど何をどう言っていいのか、ちょっと戸惑ってしまった。

 その直後に、ざわめき声が辺りで上がった。

「おい、こいつら……」

「間違いねえ! 他の連中を襲った奴らのケツモチだ!!」

 声を荒げているのは、ワンちゃんの連れている連中だった。彼らは純君を見たと思うと、すぐに彼に近づいていく。

「こいつらで間違いないっす。やりましょうぜ」

 そして、その内の一人。一番年齢が高そうな男の人が、ワンちゃんに言った。みんな敵意剥き出しで、ワンちゃんも私から目を離すと、

「ああ」

 と承諾したように一言零した。

「……街の不良連中が何の用だ?」

「うるせえ! テメェらのせいでなあ! 俺らも幅きかせらんなくなってんだ! 覚悟しやがれッ!!」

 はっきりとした宣戦布告のようなものだった。純君がいた車からも二人ほどスーツ姿の大人の人が出てくる。完全にあっちの人達だ。見た目からして、怖くて強そうで、何よりも普通に生きてきた人じゃない目をしている。

 そんな人達が出て来ても、ワンちゃんの引き連れていた人達も一歩も引かない。まさに火花が散っているような一食触発の状況。

 その中心に、ワンちゃんがいる。

 どうしたの? 何があったの?

 私は何も理解できないままに、どんどん先へと動いていく。私だけを取り残しているみたいに。


ども、作者です。


ああ、ストックがそろそろヤバくなってきてますね。

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