いつもの……通り?
十二月。カレンダーでも雪のイラストが描かれ、誰しもが雪の降ることをイメージする真冬の時期になった。ついこの間衣替えをしたばかりだと言うのに、ただの長袖じゃもう物足りなくて、カーディガンも上着も手袋もマフラーもヒートテックも着込んで完全防備。もともと寒さに弱いわけじゃないけれど、日本海の近い米原の冬の寒さは厳しくて、どうしても防寒着が厚くなりがちだ。
特にマフラーは欠かせない。顎と上唇の辺りまで顔を埋めておかないと、口元までもがひりひりして凍り付いてしまう。まぁ、完全に寒さを防げているわけじゃないけれど、やっぱりこうするだけで暖かくなるような感じがするからいいの。
登校中の私はそんな格好だった。朝はなんで寒さが酷いんだろう。こんなに寒かったら、そりゃあ誰だっていつまでも布団の中に入っていたいに決まっている。勉強の効率が悪くなるのだって寒さのせいじゃない。冬くらい朝は陽射しが出てきて暖かくなるまで待ってから、みんな行動すればいいじゃないの。
だけど、私はまだマシな方。時折通る自転車やバイクで通学している人を見ると、とてもじゃないけど我慢でき無さそうな顔をしている。歩いて通える位置に家があって良かった。起きるのもゆっくりできるしね。
駅の前を通って、校舎へ続く坂道に到達したとき、私はよく見慣れた後姿を見つけた。
もこもことした防寒着を着て、金髪の上からマフラーを巻いている。初めてみる格好だけど、髪型はぴょこんと片方で長く束ねているし、髪色からしてもこのみちゃんだ。
早足で駆けより、
「おはよう」
と声をかける。
振り返ったこのみちゃんは、赤らんだ鼻の先までマフラーに顔を埋めて、細めたメイクの濃い目を私に向けて、
「あによ」
と不愉快そうに言った。
いつも格好つけているこのみちゃんが、寒さのせいか酷く弱っているみたいで、一瞬だけども驚いてしまった。
しかも、耳を澄ますとぐしゅぐしゅと何かを擦るかすかな音まで聞こえてくる。音のする場所を見てみると、彼女の上着のポケットの中。そこにこのみちゃんは片方ずつに手を突っ込んでいて、何やらせわしなく動かしているようだ。
「何見てんのよ」
ぺちん、と抜き出した片方の手で、このみちゃんは私のほほに軽く触れた。その手が大分暖かい。
「このみちゃん、ポケットにカイロ入れてる?」
「入れてるわよ。悪い? アタシはね、寒いのが大っ嫌いなの。異常なくらい弱くってねぇ、きっと前世は変温動物だったんだわ」
そう言って、このみちゃんはずずず、と鼻を鳴らした。なるほど、本当に寒さに弱いみたい。
「なんかちょっと以外かも」
「以外もなにもありゃしないでしょ。ただただ寒いのが嫌なだけ。それ以外の何でもないわ」
強がっているようなことを言いながらも、また鼻をずずず。やっぱり寒さはこのみちゃんの弱点だ。
私たちは並んで歩いて、坂を上る。
「教室はもう暖房ついてるかなぁ?」
「どうせ誰かが付けてるわ。去年も順一がリモコンかっさらって来てたし」
「どこから?」
「教務室」
「それって結構ヤバいんじゃ……」
「アタシが凍死する方がヤバいわよ。ま、こんだけ寒いくせに先生が来るまで暖房禁止、温度も一定に保つように、なんて決まり事を守るようないい子ちゃんはウチにはいないわよ」
その割には毎日学校に来るだけはしているんだよねぇ。不良なんだけど、その辺りは普通だなって思うな。
そんなことを言いながら歩いている最中に。
「ねえねえ、聞いた? 今日から新しいセンコーくるらしいよ?」
「マジで? どんなの? 誰に? 何歳くらい? 知ってる人?」
と、多分他の学年らしい生徒の女の子がしゃべっているのが耳に入ってきた。二人の声のトーンは高くて、新しい先生が来ることに浮かれているみたいだ。
先を歩く二人をちらりと横目に見てから、
「こういう話が好きなところはフツーの学校と同じだわ」
このみちゃんが呆れた声で言った。
いやいや、呆れてもね、確かにちょっと、いや大分おかしなところはあるけれど、みんな学校に登校している時点でそれなりに普通の学校だからね、ここ。私も大分染まって来たのかな、この学校を普通だなんて思えるなんて。
「でもさ、結構急だね。こんな時期に新しい先生がくるなんてさ」
「あれじゃないの。ほら、ウチの担任産休とったでしょ。あのせいじゃない?」
ああ、そうだ。担任の若槻先生、一週間くらい前に産休に入っちゃって、私たちはちょうど今は誰も担任の先生がいなくなっているんだ。
「その埋め合わせってことかぁ」
「全く、アイツもホントいつの間に……。ま、チョーク投げられないだけいいんだけど」
産休に入られて、私はちょっぴり寂しいけど、このみちゃんは全然そうじゃないみたい。
「じゃあ、新しい先生にこのみちゃんも期待してる?」
「するわけないでしょ。そこまでアタシはフツーじゃないっての」
私には十分に普通の不良って感じがするんだけどなぁ……やっぱり染まって来てるぅ。
やがて坂を登り終えて、次は十数段くらいの階段を上る。一番上はまっすぐに伸びる一本道で、さらに今度は五段の階段が一番奥にある。
それまでの道は、春になれば空が一面ピンク色に染まるような桜並木があるんだけど、冬の今となっては、枯葉の一枚も付けていない裸の木の幹と枝が並んで立っているだけだ。
桜が満開になるのは今の冬を越えなくちゃいけない。桜の木も、私も。
そうかぁ、もう冬になっちゃったんだ。
長かったのかな。それとも短かったのかな。濃かったのは間違いないけど、もうすぐこの学校に転校してきて一年。
ワンちゃんと再会して、他の人達とも出会って、いろいろあって。もう振り返りの時期で、振り返るだけの思い出がたくさん溜まってきている。
「何見上げてんのよ」
このみちゃんに声をかけられて、はっと我に返る。どうやら私は、桜の木を見上げながら立ち止まっていたみたい。先を歩いていたこのみちゃんが、振り返って目を余計に細めていた。
「もうすぐで一年経つんだなって思って。冬が終われば桜がまた咲くんだなって思って」
「感傷に浸るにはまだ早いわよ。っていうか、ここの桜なんて地面を見たら……」
「それは言わないで。足元を見なければ綺麗な景色なんだから」
私はこの学校に転校してきた初日のことを思い出して、このみちゃんの言葉を遮っていた。学校にあっちゃいけないものがボロボロと転がっているのにさえ目をつぶれば、最高に綺麗な景色なんだからここは。
「それに遠いわよ、春になるまでが。ここの冬はもう最悪この上ないんだから特に、雪が降ったら坂道は地獄よ。滑る、うずまる、濡れる、もう何もかもさいっっあく!」
このみちゃんがはぁ、と思いため息を吐いた。きっと去年あたりの冬のことを思い出しているのだろう。っていうか、そんなにたいへんなんだ、雪が降ると。
「雪かきしないの?」
「しても無駄。すぐに積もるわ」
ああ、そうか。この辺りは降雪量も尋常じゃなくて。何年か前には降雪量が全国規模の大ニュースになってたこともあったっけ?
まぁ、雪は雪でちょっと楽しみかも。
十二月の雪と言えばホワイトクリスマス。都会じゃなかなか見られないらしいけど、このあたりじゃ毎年のようにホワイトクリスマス。交通の便が悪くなるくらいの雪が降るみたいだけど、それでもホワイトクリスマスって素敵じゃない。
ホワイトクリスマス……私も最高の形で迎えたいなぁ。
ちょっと足取りが軽くなって、ぽんぽんぽん、と軽々と一番奥の階段を駆けあがる。
やっと校舎の玄関、昇降口の前にまで辿り着いた。
昇降口の前に人が集まっていた。ただ集まっているって感じじゃなくて、整列しているみたいだ。だいたい二十人前後くらいの人数だろうか。一クラス分あるかないか。本当に普通の学校とかなら、部活の朝練とか体育祭前の練習とかで、これくらいの人数が集まることは珍しくはないけど、何もない平々凡々な平日の朝にこれだけの人数が集まっているのはそう目にする光景ではない。
何をたくらんでいるのやら。まぁ、この学校じゃね、何が起こっても不思議じゃないから。やっぱり慣れてきているなぁ、私。
何か大きな問題を起こす前触れじゃなければいいんだけど。
そう思いながら、このみちゃんと一緒に素通りしようとした。
これだけ人が集まっていると目線はどうしてもそちらに向いてしまう。物珍しそうに好奇な目を向けるのはちょっと危険だとは思うけど、目を背けるのもなかなか難しいのが現実だ。
ほとんどが学ラン姿の男子学生。女の子が一人二人。
そして整列させている生徒たちの先頭には、二人の男子がいて指揮を取っているようだ。
「あ、姐さーん!!」
げ、その二人はモヒカン田中とピアス山田の悪評をまき散らした一年生コンビだった。目が合って二人が近づいてくる。
できれば無視したい。この二人がね、私が番長と裏番を束ねている総元締めだとかなんとかうわさしなければね、私もそれなりに平穏なことをしていられたはずなんだけどさ。そんなわけで、若干この二人には苦手意識を持っている。
けど、やってくる二人を追っ払うのも気が引けるし、何よりも隣にいたこのみちゃんが、
「子分の登場よ、姉さん」
なんて現状を楽しんで板づらっぽく言って立ち止まるものだから、気付いていない振りをすることもなにもできなくなってしまった。
「見て下さい世、この俺達の舎弟たち!!」
ピアス山田がサーカスのショーに登場するライオンでも紹介する司会者みたいに、手を振って私たちに列を成した舎弟たちを見せてくる。
全員後ろに手を組んで、足を肩幅以上に開いて立っている。なんだか、本当に不良漫画とかでありそうな光景だ。というか、前にお嬢が紹介してくれた少年漫画に塾長の話を聞くシーンであったのとおんなじ格好をしている。
というか、見せられた私はどう反応すればいいわけ!?
困惑しきっていると、私ではなくこのみちゃんが、
「へぇ。すごいじゃないの」
と感心したようなことをぼそりと呟いた。
耳ざとく、モヒカン田中はこのみちゃんのつぶやきをばっちり聞いていたらしい。
「そうっすよね! 俺達も一年連中で勢力伸ばしてきたんすよ。きっと……」
いい終わらぬ内に、ピアス山田も離しに入ってきた。
「そうそう俺達の実力で全員集めて来たんすよ! きっと……」
そして、とうとう二人同時に
「将来番長になるのはこの俺っすよ!!」
高らかに宣言した。
九十年代の壊れかけのロボットみたいに、二人が首を横に向けてお互いを見やる。
「おう山田!! 番長になんのはこのオレだろうが!!」
「いいや、俺だね! 田中には荷が重いんじゃ!!」
「なんだとぉ!!」
「なんつったコラァ!!」
そして、流れ作業よろしく二人は喧嘩を始めてしまった。なんだろう、とてもほほえましいなぁ……仲があまり良くなかった頃のワンちゃんと懸さんを見てるみたい。……どうしちゃったんだろう、私。昔は喧嘩を目にしてこんなこと思わなかったはずなのに。
私がさらにさらに困惑している中、喧嘩をする二人を横目で一度ちらりと見てから、舎弟隊列の中から一人の女の子が歩いて来た。茶髪でちょっと化粧は濃いけれど、私に似て地味目な顔をしている。
「いつもあんな感じなんスよ。ウチらも見慣れてきたっス」
女の子がにへらと笑う。どれだけ喧嘩してるんだかあのコンビは。放っておけば年中喧嘩してるんじゃないかな。
「そんなことより……」
女の子の視線が私から隣のこのみちゃんに移った。
「このみ先輩っスよね。うわぁ~、会えて光栄っス!」
強引に手を取られ、このみちゃんは両手で握手を求められた。突然尊敬(私にとっては不本意極まりないのだけれど)が自分に向けられて、このみちゃんは目をぱちくりとさせて驚いていた。
「いや~~~、やっぱ先輩はかっこいいッスね~。ウチの憧れなんスよ~~。ウチ、ミーナって言います。今後ともよろしくお願いするッス!」
おべっかでもなんでもなく、ミーナはこのみちゃんに会えてたいそう嬉しそうだ。ところで、今日のこのみちゃんはいつもと比べると、もこもこの上着と顔の半分を埋めたマフラーと、いつも以上にずんぐりむっくりとしているのだけど。
「ああ、もちろん先輩のことも尊敬してるッスよ!」
次は私に目線が向けられ、このみちゃんにするのと同じように握手を求められた、というか強引に握手させられた。
「私は別にそんな尊敬されるようなこと……」
「何言ってるっスか。先輩は表裏の番長を束ねてますから、このみ先輩とは別のベクトルで尊敬してるッスよ!」
もうあの噂は私の肩書きか代名詞か何かにでもなっているのだろうか。
「二人を束ねてるなんてただのうわさで……」
必死に説明を試みるも、
「好み先輩もあの番長に唯一物を申せる人じゃないッスか!」
話は別方向に向かっているようだった。悔しい。
「まあね」
このみちゃんもまんざらでもなさそうに、今日一番のご機嫌顔を見せていた。
「ってかアタシってそんな認識なの?」
「違うんスか?」
違わない。あってるあってる。
ミーナは顎に手を当ててちょこっと考えた後、
「じゃあ、恋人ッスか!?」
唐突なことを言い放った。
「こ、こい!?」
このみちゃんはさらなる驚きで目を白黒させている。どこからどう見ても驚いている。
「ああ、やっぱりそうだったんスね!」
なのにどこをどう見てそう判断したのやら、ミーナはこのみちゃんが懸さんの恋人であるとさっそく勘違いしてしまった。
そして間髪を置かずに、
「じゃあ、お二人に相談したいんスけど、どうやったら番長とかのトップのおとこを惚れさせることが出来るんスか!? 教えてほしいッス! ウチもいずれあの二人のどっちかと……」
ミーナがちらりと喧嘩をしている二人に目をやる。
恋愛感情というよりは、出世欲的な感じであの二人のどちらかの恋人を狙っているのだろう。
もう一度私たちに向けられたミーナの目は、どんな素晴らしい助言が飛び出してくるのか、楽しみで仕方ないというようにきらきらと輝いている。
「アドバイスお願いします!!」
ミーナは体がひんまがるくらい思いっきりお辞儀をして、そのまま頭を上げていない。
……いやいやいやいや。別にそんな言うことなんて。というか、その、ね。まだ私は惚れられてなんて……いや、懸さんにはそのう。なんていうかね、あの人はその、えっと……。
私はちょっと真面目に考えて、やっぱりどう言えばいいか分らないという結論に至った。助け舟を求めて、このみちゃんに目を向ける。
このみちゃんはさっきのちょっと浮かれた顔とは打って変わって、憮然とした顔して、私を見返した。
「……叶恵」
ぼそりと小声でこのみちゃんが呟く。
私が耳を澄ませて聞いていると、
「逃げよう」
そう言ってすぐに、このみちゃんは学校の中に逃げ込んだ。
「あ! 待って!!」
私もすぐに追いかける。
「先輩方ぁ! どこにいくんスか~~~~~~!」
下駄箱ですぐに靴を変えて、下履きも履かずに校舎内に入って行く最中、ミーナの声が聞こえてちょっと悪い子としたなぁ、と思いながらも、このみちゃんが逃げようと言ってくれて助かったことにちょっと安堵していた。
ミーナや一年生の二人が追いかけてくることはなく、私とこのみちゃんは無事に教室までやって来た。
教室はさすがに廊下や外と比べると、もわっと暖かい空気が籠っていた。暖房も付けられているみたいで、教室にいる人達は活動的で、いたるところからしゃべり声が上がっている。
「だからさ、この学校にヤクザのガキがいるんだよ! みぃんな噂してんだぜ!?」
中でも一番大きな声でしゃべっているのは逆立てた髪の下中君だった。話している内容にわずかながら興味を引かれる。ソッチ系の子供というとすぐにお嬢のことが思い浮かんだ。この街にそう言う人がいるのは間違いないし、その子供がいてもおかしくはない。もしかして、お嬢のところの関係者?
「ああ~、ガキがいるなら会ってみてぇなぁ」
「会ってどうするんだよ」
下中君と話している男子生徒の一人が尋ねると、下中君は夢を見る子供の目をして、
「入れてもらうんだよ。ヤクザになるなんて……くぅ、そうすりゃあ俺だってビッグになれるはずだ!」
一際背の小さい彼はそう言った。
「入ったらどうせアンタなんて鉄砲玉にされて死に損ねて一生ムショでの生活よ」
下中君の夢も希望も一瞬でくじくように、重装備を解いたこのみちゃんが彼に近づいて言った。私も自分の席で上着を取ってから、マフラーをつけたままこのみちゃんたちの傍まで行く。
その間、振り向いた下中君はこのみちゃんを睨みつける。
「うるせぇ! そんくらいのリスクを背を和なくっちゃビッグになんかなれるかい! 死ぬのなんて怖くねえよ!」
とびっきりの強がりだね、多分。
「死ぬなんて馬鹿ねぇ。人生安定の方が大事よ。リスクを背負ってビッグになりたいとか馬鹿馬鹿」
このみちゃんは心底うんざりしている様子だった。
「フツーに生きるなんて嫌だね。つーかお前もまともに働く気ないだろ」
下中君が言った。
「まあね。アタシも就職する気はないし。適当にバイトするけどさぁ。アンタの死にたがりの夢よりはマシよ」
「このみちゃん、安定って言って就職はしないんだ」
私もこのみちゃんたちの会話に加わった。
「当たり前よ。この辺でアタシら程度の学力で就職できるとこなんて、工場位しかないわ。毎日油臭くなるんだったら、楽な仕事してたいに決まってるじゃない」
だそうだ。
「工場なんて絶対に嫌だね。俺はビッグに、ビッグになってやるんだ!」
下中君は相変わらず夢見がち。
「みんな大学とかにはいかないんだ」
「行かないし、行けるわけないじゃない。進学校の特権よ特権」
そうなんだ。私も大学に行ける学力があるとは思えないし……でも、お金のことは心配するなって言われているから、私大に行くことになるのかなぁ。
「僕は大学に行くし」
後ろから不意に声がして振り向いた。声をかけてきたのは真虎君で、他に二人、殿面と海鞘蕗を従えていた。トリオの一角でありリーダー格の泥沼はいなかった。
「僕も大学に行きますよ。これでも頭は悪くありませんので」
聞いてもいないのに、海鞘蕗もそう告げた。眼鏡をくいっと上げてちょっと気障っぽい。
「あれ? 泥沼は?」
私は真虎君に聞いた。
「無視されました……くっく」
「サボりだし。あいつはどうせ出席日数足りてなくて進級できないし」
ああ、そう言えばそうだった。
思いがけずちょっと将来の話になっちゃったけど、みんなもそれなりに考えているんだなって、ちょっと感心しちゃった。それに比べて私ときたら……。
確か、ワンちゃんも大学に進学するつもりだって前に言っていたし、懸さんだって実家のラーメン屋を継ぐつもりだって……。
と、噂をすればなんとやら、というか噂も全くしていないのにも関わらず、
「うおおおおおおおお!! 俺の将来はああああ! 俺の、俺の青春はあああああ!!」
懸さんが私たちの教室に入ってきた。
いつから話聞いてたの!? なんで私たちの話してたこと知ってるの!?
と突っ込む間もなく、
「アンタのことなんて聞いてないっての!!」
このみちゃんがツッコミを入れてくれた。
相変わらず、朝も騒がしいなぁ。うんうん、ここも含めていつも通り。やっぱり私もこの学校に馴染んできた感じがする。何があっても大抵の事は受け入れられそう。
その日の朝までは、そう思っていた。一つ、一番大切なことに気付かないままで。
ども、作者です。
折角作中とちょうどいい時期になったのに、最後の最後まで更新でき無さそうです。今年のやり残したことになりますねぇ。




