進まなくて……やきもき?
懸さんの謎
ワンちゃんに首根っこを掴まれて引き摺られ、連れてこられたのはいつもの場所。体育館裏だ。これ何回目だろう。久しぶりな感じもするけれど、結構頻繁にここまで引き摺られてきているような気がする。
体育館裏まで来ると、ワンちゃんは座った。私もとりあえず隣に座る。連れてこられたのは別に構わないんだけど、いったい何をしに? 何が目的なの?
……。
…………。
やっぱり、ちょっと顔がほてってくる。いやいや、そんなねぇ……。ちょ、ちょっと二人きりになっているってだけ。うん、そ、そうだよね。で、でも、二人きりになるってことは、というか二人きりになるのが結構久しぶりだ。もしかして、意図的に二人きりになったってことはやっぱりやっぱり何かをするつもりなんじゃないのかな? してくれるのかな!?
わ、私は別に、そんな期待をしてるってわけじゃないんだけど。こ、この前に二人っきりになったときにしてもらったの、ひ、久しぶりにしても、い、いいんだけどさ。
……。
…………。
何もない。何も起きない。私はずっと座っているだけで、ワンちゃんも座っているだけ。ワンちゃんは片足を立てて、そっぽを向いている。
正直に白状するとやっぱり私は期待していた。だってその、無理やり体育館裏まで引っ張られてしまったのはワンちゃんにキス、されととき以来だし、状況も結構似通っていたわけで。そりゃあ期待するでしょ。
だから、してくれるのかな~って。あるいは告白とかあるのかな、とか思って隣に座っていたわけだけど、何もしてくれないの?
勝手に期待しておいて思うのもなんだけど、残念。
そろそろ授業も始まるだろうし、何もないんだったらこのまま逃げて行っちゃうよ? 教室に帰っちゃうよ?
思いは口に出さないまま、ワンちゃんの顔を覗いてみる。ワンちゃんはむっとして、不機嫌そうな感じだ。どうして不機嫌なのだろう。何となく予想はできそうな気がするけど、どうせなら彼に言わせてみたい。
「どうして私をここに連れて来たの?」
訊いてみるとワンチャンは足を組み替えて、
「……別に」
とそっけなく答えた。別にって。その後は特に何も言わなかったけど、足を動かしたり、膝の上に右腕を乗せたり離したり、正面を向いているものの、目をちらちらと動かしていたりとなんだかそわそわしているように見える。
このそわそわ、なんだろう? 何か隠し事をしているようにも見えるし、いいや、どちらかと言えば照れているようにも見える。
もう、照れることもないのに。私も同じ立場だったら照れるだろうから、人のことは言えないのかもしれないね。でも、このままだと待ちぼうけを喰らっている感じになってくる。
「私そろそろ戻るね。もうすぐ授業も始まるから」
ちょっと自分勝手でそっけないと思うけど、いつまでも待たされるのは良い気はしない。
このまま立ち上がって、本当に教室に帰ってしまおう。
そう思っていたのに、私が立ち上がる前に、私の手にワンちゃんの手が触れた。見れば、私に近い方の手をワンちゃんは私の手に重ねていた。なんだか、お手をされているみたいだ。
小さな、ほんとになにげない触れ合いだと思う。けど、これはこれでほのかに胸の内に温かいものが灯されるような幸せを感じないでもない。
でも、やっぱりその、私が抱いていた期待と比べるとどうにも見劣りしてしまう幸せだ。
ワンちゃんは私から顔を逸らしている。きっと、照れくさいのだろう。でも、この前はもっと大胆な事してきたんだよ? もうちょっと、その、せめて肩を抱くくらいはしてほしかったかも。
なんて、文句を言いながらも私はワンちゃんの成すがままに、手を重ねさせて上げることに決めて、もうしばらく腰を落ち着けておくことにした。
きっと、あと一、二分もすればチャイムがなるだろう。授業が始まる。ああ、授業に遅れちゃいそうだなぁ。
でも、まぁいっか。私ももうちょっとだけ、短くても長くてもいいんだけど、ワンちゃんの手の温かさを感じ続けていたいかな。
ども、作者です。
日常部分って難しい。




