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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
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なにやら……大変?


 それは突然のできごとだった、らしい。

 十一月に入ってすぐ、メールが届いた、そうだ。メールの送信者は「このみ」。別に珍しいことなどではなかった、ようだ。もっとも、メールが送られてくるのは久しぶりだった、らしい。とりあえずメールの内容を確認して見て、度肝を抜いた、そうだ。

 メールの内容は詳しくは教えてくれていないけど、だいたい要約すると、

「私は好きな人に振り向いてもらえないから自殺する。その人は好きな人にフラれてもずっとその人ばかりを追いかけていて、ちっとも私を見てくれない」

 という内容だった、そうだ。

「叶恵ちゃん。俺はいったい、どうすればいんだああああああ! 教えてくれええええええええ!!」

 ……。

 ごほん。どこから説明を始めればいいのかな。とりあえず、なんとなくは話は分かった気がする。

 私にとっても、これは突然の出来事だった。十一月に入ってすぐ、懸さんから急に呼び出されて、神妙な面持ちの彼から話を聞いてみれば、このみちゃんが自殺するとメールを送ってきたため、自分はどうすればいいのか、という相談を持ちかけられたみたい。

「いや、ナイでしょ」

 このみちゃんが好きな人に振り向いてもらえないから自殺する? そんなの考えられない。あり得ない。酷い事を言うようだけど、これまでもずっとそうだったし、急に唐突にいきなりに突然に、よりにもよって懸さんに対して伝えちゃうかなぁ。

「そ、そんなば、馬鹿な。じゃ、じゃああのメールはいったい……」

 懸さんはわなわなとふるえている。そんなホラー系のドラマかサスペンス系のドラマで一番悪いのが誰かって分かった人みたいなショックの受け方しなくてもいいのに。

「何かの間違いじゃないかな?」

 かな、ではなく、である。断定できるよ。絶対に間違いだ。

「ま、間違い……そうか、そう、だったのか」

 懸さんがやっとほっと一息ついてくれた。そうそう、杞憂。絶対に杞憂だよ。心配しなくたっていいんだよ。

「で、でも……も、もし嘘じゃなかったら。包み隠さないこのみの本心だったら」

 できれば、この言葉を今すぐにでもこのみちゃんに伝えたい。このみちゃんのせいで懸さんが珍しくナーバスになってるし、すぐにでも励ましてくれるんじゃないかな。

 珍し過ぎる。こうまでこのみちゃんのことを深く心配しているだなんて。このみちゃんなんて一切眼中にない、とまでは言わないだろうけど、あんまり興味が無いんじゃないかなって思うくらいには、雑に思っているのだと私は思いこんでいた。多分このみちゃんも。

 でも、こんなにも、このみちゃんがもしかしたら死んでしまうんじゃないかって時に、こんなしおれた姿をするなんて。

 まさか、やっと懸さんは気付いたんじゃないかな。自分にとってのこのみちゃんがどんな存在かって。このみちゃん、なんだかんだいって結構アプローチかけていたもんね。やっと報われる日が近づいて来ているんだよ。

「もし、もしも本当だったら……」

「ほんとうだったら?」

「最悪だああああ!!! 何が何でも俺が絶対に止めてやる、友達としてッ!!!」

 ……。

 …………。

 ちがうでしょーそこはちがうでしょー。友達としてじゃないでしょー。

 まぁ、そんな気はうすうすはしてたんだけどね。

 やっぱり懸さんは懸さんのまんまで、このみちゃんの気持ちには全く気が付いていないみたいだ。やっぱりこのみちゃんに今の懸さんの姿は見せなくて良かった。握りこぶしで力強く友達としてッ!! だなんて宣言されたら、本気で自殺しかねないよ。

 そもそも、自殺なんて考えられないんだけどなぁ。好きな人に振り返ってもらえないなら、ってところはこのみちゃんの日ごろから抱いている気持ちとは合致する。

 そして、その意中の相手は懸さん以外には考えられない。懸さんがこのみちゃんに振る向いてもらえない原因の一端は私が担っている気もするけど、それもある程度は織り込み済みなんじゃないかな。

 当分は振り向いてはもらえない。それはなんとなくは分かっていたとは思う。だからこそ、これから自殺をする! なんて思考にこのみちゃんがなるとは、あまり考えられないなぁ。

「ちくしょう、このみの好きな相手ってのはいったい誰の事なんだ……」

 ……これはギャグ? じゃないよね。完全に素だもんね。はぁ、こんなにも気付いてもらえていないのは本当にこのみちゃんが気の毒だ。私だったら自殺しても仕方ないって思えちゃうかも。

「俺はいったいどうすればいいんだ! 親友として!!」

 まず積極的な親友アピールをしないくらいには、このみちゃんの気持ちに気が付けばいいんじゃないかな。

 というか、このみちゃんが自殺をするかもしれない問題、もし仮にほんとうにこのみちゃんが自殺を試みているのであれば、解決する手段はたった一つ、懸さんがこのみちゃんの気持ちに気付いて挙げることだと思うの。

 さすがに、私からこのみちゃんの好きな人は懸さんだよ、なんて無粋な真似はできないけど、ちょっとくらいヒントはあげられると思う。

 自殺はしないだろうと私は思っているけど、ここまで話を聞かされたらこのみちゃんが気の毒で気の毒で仕方がないの。

「本当に、このみちゃんの好きな相手が誰だかわからないの?」

「さっぱり」

 即答だぁ……。

「このみは昔からしっている幼馴染の親友だが、恋愛沙汰なんて微塵もなかった。好きな人がいるって知ったのも、あのメールのおかげで」

 大問題だねぇ。気付いてあげなよぉ、自分だってさぁ……。

「この相手が分からない限り、進展はないだろう。くそう、いったい誰なんだ」

 懸さん、あなただよ。って言えたらいいんだけど。さすがにそれは……。

「自分を想ってもらっているのに気付けないなんて、なんて心の寂しいやつなんだ!!」

 あなただよぉ。

「見つけて絶対に気付かせてやる!」

 見つけなくていいから、気付いてあげてよぉ、あなただからさぁ。

 本当にもう、はっきりと言っちゃっていいんじゃないかなって気がしてくる。でも、このみちゃんも自分で伝えたいと思うだろうし、告げ口をするみたいで正直乗り気にはなれない。

 だから、どうにかして気付かせてあげないといけない。 

 どうにかして。どうやって?

 うーん、そうだ。今分かる条件から、懸さん自身に推理させてみよう。好きな人にフラれた人で、未だにその相手のことを想い続けている人。

 ……もうほとんど答えじゃん。

「ねぇ、懸さん。最近好きな人にフラれて、その好きな人を今でも想い続けている人に心当たりはない?」

「なんで?」

「ほら、このみちゃんの好きな相手だもん。このみちゃんの身近にいる人に決まっているだろうから、そういう人から考えてみた方がその相手を見つけやすいと思うの」

 なるほど! と懸さんは言って、顎に手を当ててうーんうーんと考え始めた。そんなに考えることじゃないよ。

「身近な人だよ。このみちゃんの近くにいる人で……」

 懸さんは眉間にしわを寄せ続ける。もしかしたら、考えている間に思考回路がぐるっと一周回って、自分だって気付けるかもしれない。

「うーん、ええと……」

 頑張れ! 頑張れ! きっと、多分、恐らく、もう少しだから!

「分かった! 湯川真虎だ!!」

「ちがーう!! どうしてそっちになっちゃうわけ!?」

「ち、違うのか? そ、そうか……」

 どうしてそうなっちゃったの。

 はぁ、懸さんに推理させる方法は失敗、と。じゃあ、それとは違う、また別の方法を試してもらうのがいいかなぁ。

 とすると、思いつくのは……。

「このみちゃんに直接訊いてみたらどうかな? メールの件について、とか」

 もうそれしかない、と思う。うん。それで懸さんの事が好きだった、とかメールはただの勘違いだった、とか分かれば、もうそれで解決すると思うの。

「し、しかし、デリケートな話になるだろうから、俺みたいなやつが踏み込んでも大丈夫なのか……」

 懸さんは珍しく心配そうな、自身の無さそうな顔をしていた。

 大丈夫だよ。もう十分にそのデリケートなところに踏み込んでもいいくらい、充分に蹂躙しまくっていると思うから。

ども、作者です。


しばらくはのんびりするお話です。嵐の前のなんとやら……。

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