意外な……結末?
このみは、中庭から校庭の方へ向けて走っていた。
旧番派の奴らに、中庭で隠れているところを見つかって、襲われて、無線機は手放してしまったものの、なんとか逃げ出していた。
無線機を手放したのはかなり痛かった。
もう、校舎内部に向けての情報提供、サポートができない。
懸や叶恵の手伝いができない。相手は情報提供ができているかもしれないと考えると、自分の失態が二人のピンチを救う手だてを失ったようなものだとしか、このみには思えなかった。
「待てぇえええい!!」
後ろからは自分を襲った旧番派の連中がまだ追っている。
このみは首だけを回して振り返る。
彼らが無線機を持っていない所を見ると、無線機は中庭に取り残されたままになっているのだろう。
取り返すこともできるはず。そのためにはこいつらを何とか振り切らないと。
速く走れ。早く振り切れ。
そういった思いが、彼女を焦らせ、注意力を散漫にさせてしまった。どん、とこのみは何かにぶつかった。正面をちゃんと見ていなかったからだ。
「いったぁ~……誰よっ!!!」
ぶつかったはぶつかったが、特段硬すぎる、というわけではなかった。
感触で人にぶつかったらしいということは、このみにも分かった。
怒鳴りながら、その人を見る。
「……ちっ」
舌打ちをしたそのぶつかった相手は、大神一和だった。
「大神!」
「お前、無線機持ってるか?」
「はぁ? 持ってたけど、今は……」
ちらり、とこのみが後ろを見る。
「止まったぞおおおおお!! って、あいつはっ!!」
「大神一和がいるぞおおお!!」
四人ほどの男が、走っているのが一和にも見えた。
こちらに迫ってきている。
同じ方向にこのみが走っていた。
自分の問いに対して、このみは後ろを向いた。
ちょうどその方向に、こいつらがいた。
そこから導き出される答えは……。
「ちょっと待ってろ」
「え? え?」
何が何だかさっぱり分からないこのみにそう言って、
一和は追っ手たちに向けて歩き出した。
こいつらが、無線機を持っている。
そう、彼は結論付けていた。
さて、それから僅か数十秒後。さっきまで元気にこのみを追いかけていた旧番派のみなさんは、ぐったりと地面でおねんねしていた。
全て、一和がとんとん拍子にのしたのである。
「うっわぁ、あいっかわらずえげつない強さねぇ。今は味方で良かった」
一部始終を目撃したこのみは感心するやら安心するやらしながら、一和の方に近寄った。
「ありがと。って言っても、どうせアンタが味方してくれんのは、アイツのためなんだろうけど」
アイツ。叶恵のことだ。
「ふん」
一和が鼻を鳴らす。そっけないようにしていて、肯定しているようにしか見えない態度だった。
こいつもこいつで、全然素直じゃないわねぇ。ちゅーしたくせに。
はぁ、とこのみがため息を吐く。
「どうせなら、アイツの手綱もしっかりと握ってなさいよ」
「……ふん」
「まぁた、それ。はぁ、先が思いやられるわ」
「そんなことはいい。無線機はどこだ?」
「無線機? あー、あの辺のどっかにあるんじゃない?」
このみが中庭の方を指さす。
「こいつらに取られたわけじゃないの。どっかに落としちゃってね。叶恵に連絡するつもりなら、アタシも探してあげるわ」
「……ちっ」
「舌打ちすんな。ほら、愛しのあの子のためにも、さっさと探しなさい」
このみは先立って、中庭へ歩みを進めた。
ちっ、嫌な奴だ。
一和もそう思いながらも、叶恵に連絡を入れるため、このみとともに中庭に向かうのだった。
しかし、彼らが無線機を見つけて、叶恵たちに連絡をすることはなかった。
それまでに、決着が訪れたからだ。
胸がどくどくと高鳴る。
壁にピッタリと背中を預けているせいで、鼓動が伝わってしまうかも、とちょっと心配だった。
けれど、そんな音の代わりに聞こえてくるのは、足音と会話の声だった。
「やだわ~~~。竜美の奴、最後まで抵抗しちゃって。おかげで残ったのはアタシら三人だけ」
利根田の声だ。
「さぁて、アンタ達。教室を一つずつ当たっていくわよ~~」
その声を境に、教室のドアが乱暴に開かれる音が聞こえた。
がらがら、ドーン!
かなり遠い。一番端の教室から見ていくのだろう。とは言っても、私たちのいる教室も、一番端から三つ目にある。
次の次だ。
ガラガラ、ドーン!
大きな音。隣の教室からだ。
次は、この教室。
「……」
前を向くと、作治君が私を見て頷いた。
チャンスはすぐに訪れる。頑張れ。そう励まされているみたいだった。
これまでは全く活躍できなかったけど、今回ばかりは違う。
私だって頑張らないと。
覚悟を決めて、まだだんまりとしているドアの方に視線を移した。
足音が三人分、聞こえてくる。そして、わずかにドアが動いた。
ガラっ!! ドーン!!!
耳をつんざくような音を鳴らして、前後のドアが同時に開かれた。
「いたっ!!!」
「投げろっ!!!!」
二人の叫び声。利根田の手下たちだ。
その内の一人が、私の視界に入る。教室に乗り込んできた。
彼が見ているのは正面。作治君のいる方だ。
作治君の思惑通り。
今しか、ないっ!
「えいっ!!」
私は、利根田の手下に向けて、最後に残ったカラーボールを投げた。
距離は全然離れていなかった。
だから、簡単に命中した。
「ぎゃああっ!!」
「うおっ!」
二人分の断末魔。私が投げたカラーボールも、そして、後ろのドアの横で待機していた泥沼も、作戦通りに動いてカラーボールを命中させたようだ。
「やった!」
嬉しくて、つい口をついてでた。
私は後ろを振り向いた。泥沼の方を見ようとしていた。
でも、ちょうど振り向いた瞬間に……。
「おぺぼっ!!」
と、おかしな声が聞こえた。その声は、泥沼のもので、意味不明な言葉で……。
泥沼は、顔面を真っ赤に汚して、その場に倒れようとしている、まさにその瞬間を私は目撃した。
「泥沼っ!!」
「や・だ・わ~~~~。そんな作戦、見え見えよ~~」
後方のドアから、スキンヘッドの厚化粧の男、利根田が入ってきた。
「アタシらにだって、外に仲間がいるのよ~~。アンタ達の様子、ばっちり聞かせてもらっていたのよ~~~。ま~~~~ったく~~。そんな陳腐な作戦で、全滅させられるとでも思っていたのかしら?」
まずい。私のカラーボールは全部使ってしまった。
「さぁて、残るはアンタ一人。アタシは女だからって、容赦はしないわよっ!!」
利根田が凄んで、ボールを投げようとする。
これで、終わり? 私、倒されちゃうの?
このみちゃんや真虎君にもサポートしてもらって、懸さんにも助けられて、それ以外の人達にもいろいろと手伝ってもらって、泥沼だって、作治君だって頑張っていたのに、こんな、こんなところで……。
あれ? 作治君? 作治君って、倒されちゃってた……の?
それに気づいた、ちょうどその時。
「きゃあああああ!!」
利根田の叫び声と同時に、ぱーん、とカラーボールの弾ける音がした。
見てみると、利根田のつるつるの後頭部に赤い塗料が炸裂していた。
その場に、利根田が倒れる。
その後ろに立っていたのは……。
「残念。僕だってまだ残っていたんだよ。って言っても、僕、存在感が無いから、気付かれてなかったみたいだけど。まさか、そんなことが役に立つなんて、ね」
作治君だった。彼の体には全く塗料は付いていない。
彼は、倒されてなど、いなかった。
ども、作者です。
相変わらずサブタイトルに悩まされます。




