作戦会議と・・・・・・始動?
「これから、どうしよう……」
三階に逃げ延びた私たちは、そのうちの一つの教室、カラーボール戦争がスタートしたときに待機していた教室に逃げ込んだ。
背をかがめて、窓から見えないようにしながら、二人に話しかける。
「ったくよぉ~。こいつはまずいんじゃねぇかぁ? 竜美の奴もすぐにやられちまうだろうしよぉ~」
泥沼が悔しそうに口元を歪ませた。
そんなこと……ない、とはさすがに言いきれない。
相手の数も、懸さんたちと比べると多かったし、カラーボールの数もそんなに残っていなかった。多勢に無勢、多分、懸さんは倒されてしまうだろう。
「時間もそんなに残されていないかもね。僕らも覚悟を決めないと」
「テメェ竹次郎!!! 俺様たちに負けろってぇいいてぇのか!!?」
泥沼が作治君に掴みかかる。
「って、作治君だよ! 竹次郎って誰!! 懸さんの言い間違いに引っ張られてるし、次しか残っている文字ないよ!!」
「……はぁ、僕は負けろだなんて言ってないよ」
あ、作治君がスルーした。
「待ち伏せしよう。今の僕らに出来るのは、それぐらいしかないんだ。僕にいい考えがある。できれば、言う通りに動いてほしいんだけど、どうかな?」
作治君が私たちの出方を伺うように、交互に顔を見た。
「おめぇの考えだぁ? どこの誰だか分からねぇテメェみたいな奴の作戦なんざ……」
泥沼は作治君の提案が面白くはないらしい。
でも、
「私、作治君の言う通りにするよ」
私は賛成だった。
「おうコラ! テメェ!!!」
「だって、もう待ち伏せをするしかないんだもん。泥沼には何かいい案でもあるの?」
「俺様かぁ? 俺様は……」
しばし、泥沼が黙る。顎を?いたり、眉を顰めたりしていると、次第にこめかみのあたりに汗が浮かんだ。
「考えるのは専門外だ! しかたねぇ、今回だけは任せてやらぁ!」
泥沼はあっさりとさじを投げた。うん。こう言ったらなんだけど、だろうね。うん。
「それじゃあ、僕の言う通りに……」
私たちは作治君から説明を聞いた後に、それに従った。
作治君は窓際に立った。カーテンを少し引いて、外から見えないようにしながらも、その位置は教室の前後の出入口のちょうど真ん中の辺りで、それらの箇所からであれば、ドアを開いてすぐに真っ先に目に入る場所になる。
そして、私たちがいるのは、ドアのすぐ横。それぞれにスライド式のドアが動いてこない方、教室の内側になる場所で待機をしていた。
「そこでじっと待って、敵が入ってきてすぐにカラーボールを投げるんだ。僕の方に視線は向けられているだろうから、君たちには気が付かないよ」
というのが、作治君の作戦だった。
とても単純だけど、効果はありそう。
私は教室の前側、泥沼は後ろ側のドアの横で、息をひそめる。もしも、下の階から上がってくれば、それぞれの教室を当たっていくはず。
たった一回だけの作戦ではあるけど、もしも相手の人数が少なければ、一気に二人をリタイヤさせることができる。
懸さんたちなら、何人も倒してくれているはず。ある意味、それに賭けているような作戦だった。
でも、私たちには今はそれしかない。そんなに多くない人数で来てくれることを信じて、音を立てないようにして待ち続ける。
そうして待っている内に、足音が聞こえてきた。
真虎は逃げていた。彼はたった一人。しかし、彼を追う人数は総勢で十人は超えている。
校庭で散々喧嘩をしていたせいか、もう随分と立っている人の数は少なくなった。立っているのは彼らぐらい。真虎の仲間たちも、倒れている人数に入っている。もっとも、海鞘蕗はこの校庭には倒れていなかったが。彼は中庭の方に走っていた。いや、真虎がそうさせた。
自分達が無線機を持っていると知られてしまい、外からのサポートを防ぐために、真虎が優先的に狙われ始めていた。
そこで真虎は無線機を海鞘蕗に託して、自分が囮になろうとしたのだった。
これも全て、叶恵の役に立つため。
現状もあまり良くはなかった。校庭からその他の学校中の敷地に仲間たちは分散し、それぞれにサポートをしていたものの、懸が倒されてしまったことが知られると、仲間たちは急激に戦意が低下してしまったのだった。
結果、仲間たちは続々と倒れて、屋外でも圧倒的に不利な状況になっていた。
むろん、真虎には懸が倒されようがどうでもいいことだった。
心配なのは叶恵の身一つ。
あの利根田が代表者になっているからには、ただの学校行事だけでは終わりそうにもなかった。
叶恵に危険を及ばせないようにするためにも、別の無線機を持っているクラスメイトに会わないと。
そうは思うも、ひょろひょろのもやしっ子の真虎にとっては、一定の距離を話して逃げるだけでもいっぱいいっぱいなのだった。
巻けないし……結構ピンチだし……。
走っているだけで、足がもつれそうになる。息切れも激しい。体力も限界だ。そろそろ倒れてしまうかもしれない。
真虎が諦めかけた時、視界の端に一つの希望が見えた。
一和だ。大神一和がそこにいた。
いったい、どこに姿を消していたのだろうか。
彼は紙パックのコーヒーを飲みながら、悠々自適に歩いていた。完全に、カラーボール戦争とは無関係そうな様子だ。
「……」
そんな彼と真虎の目が合った。
ちゅーっと相変わらずコーヒーを吸いながらではあるが、その眉間にしわが寄ったのを、真虎は見逃さなかった。
これは、ラッキーだし。
真虎は最後の力を振り絞って、全速力で走り出す。
「待てコラァ!!」
もちろん、追いかける奴らもギアでも上げたかのように速度を上げる。
絶体絶命。まさに、真虎はピンチだ。
そんな様子を見ながら……、
一和はストローから口を離して、まだ中身も残っている紙パックをぎゅうううっ!! と握り締めた。当然、ストローや差し口からコーヒーが溢れ出てくる。
全く、なんてところに遭遇してしまったんだ。
一和は手も拭わずに、ため息を零した。
そして、走った。走る。走る。真虎を追いかける奴らに追いつく。殴る。蹴る。投げる。ねじる。
……とまぁ、あっという間に一和は真虎を追いかけていた奴らを全員はったおしてしまったのだった。
所要時間、わずか数秒。もはや敵なしである。
「……ちっ、めんどくせぇことさせやがって」
嫌そうな顔で、一和が零す。
「君が、勝手に、助けた、だけ、だし」
体力を使い果たしてしまった真虎も、他の死屍累々に混じって、校庭に倒れていた。もはや、しゃべるのも大変なくらいに憔悴しきっていた。
「ついでに、これも、自由、だけど、叶恵に、連絡、して、欲しいし……みと、このみ、が……無線機、もってる……はず、だ、し……中庭に……いる、はず、だし……」
はぁはぁ、と真虎の息が荒くなる。呼吸をするだけで精いっぱいだ。
けれど、伝えることは伝えてしまった。
一和は案外、お人よしなところがある。
真虎は、それを知っていた。自分を見捨てなかったし、それに……。
「……ちっ」
舌打ちをしながらではあるが、一和は歩き出した。
中庭に通じる近道がある方を目指して。
全く、めんどうな、奴だし……。
真虎は舌打ちがしたかったが、それ以上に今は、胸いっぱいに酸素を吸い込む方が、彼にとっては重要だった。
ども、作者です。
なんやかやでPV数が1万越えたようです。ついにと喜ぶべきかやっととほっとするべきか、良く分かりませんがとりあえず喜んでおきます。やったー。




