表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
PR
60/105

二階で……意外?

 二階の廊下の様子はこんな感じだった。

 まず、私たちがいるのがちょうど片側の端の方で、背後には教室一つ分のスペースと、一階と三階に繋がる階段がある。

 正面には教室から運んできたであろう、机と椅子で作ったバリケード。椅子や机の足の部分がこちらに向くように倒して、それを何個か重ねている。

 横の方にも広がっていて、人ひとりも通れないスペースだけが空いている。

 そこを覗けば、廊下の奥の様子が見える。

 結構な人数がいた。同じように机や椅子でバリケードを作っているみたいだけど、人数がいるから、そこまで防御をする必要がないと思っているのだろう。

 学ラン姿の他のクラスの代表者、とりわけ懸さんとは敵対するグループの人達がまとまった、敵のチーム。彼らは私たちのバリケードの隙間を目がけて、カラーボールを何度も何度も投げていた。

 中には、バリケードの隙間を通ってくるカラーボールもあった。

 もちろん、懸さんたちもやられてばっかりではなくて、バリケードの上からとか、隙間からカラーボールを投げて反撃をしていた。

 でも、それもなかなか芳しいせいかを上げられているわけでもなくて、しかも、カラーボールの数もかなり減っている訳で……。

「つまり、俺達の青春は大ピンチってわけだ」

 バリケードに隠れながら、私たち三人は懸さんからの状況説明を聞いていた。

「俺達の分のカラーボールも、投げ続けてたらすぐになくなっちまうなぁ、こりゃ」

「味方の数も、私たちを含めてたったこれだけだと……」

 辺りを見渡して目に入る人数が味方の総数になるんだけど、

 私たち三人と懸さんの四人と、その他に六人がいるだけ。つまりはたった十人。

「うげっ!!」

 あ、カラーボールが一つ命中して、減っちゃった。

「たった九人だけじゃ……勝ち目が……」

 うーん、と考え込む。このまま正面からカラーボールを投げ続けていても、勝てる兆しは見えないと思うし……。

「それなら、上から攻めるのがいいんじゃないかな」

 考え込んでいると、作治君がそう提案した。

「上から? 屋根でもつたうってぇのか? おいおい、そんなバカな」

 馬鹿な、と言いながらも、その発言をする泥沼の方がちょっとお馬鹿な感じだ。私も、懸さんも彼が言いたいことは分かっていた。

「懸さん。三階にはもう敵は誰もいないから、安全に通ることができるよ」

「なるほど。そいつはいい考えだ! さっすが叶恵ちゃんの作戦だぜぇ!」

「いやいや、作戦立てたの作治君だから」

「大丈夫大丈夫、良くあることだから」

「これもっ!!?」

「つーことはよぉ、三階から敵の後ろの階段とこまで行って、後ろから奇襲をかけるってぇことか?」

 泥沼もやっと、理解してくれたようだ。

「よし、そうと決まれば、作戦決行だ」

 やる気を入れて、立ち上がろうとする懸さん。

 それを、作治君が止めた。

「待った。竜美さんはこのままここに残った方がいい。こっちの人数はそもそも少ないんだ。奇襲のために人数を割いてしまって、人が減っていることが分かると、敵にも奇襲がバレてしまうかもしれない」

「おいおい! おめえ、えっと……名前は忘れたがよぉ! それじゃあ奇襲ができねぇってことになんじゃねぇか?」

「話は最後まで聞いてよ。で、残って欲しいのが顔も名前も知られた竜美さんってわけ。彼がいて、攻撃の的になっている間は、注意は嫌が応にも彼に向けられる。そうすれば、他の人数が減っていたとしても、しばらくは奇襲を悟られる心配はなくなるよ」

「つまり、俺は青春的な囮になればいいってことだな」

「青春的って何っ!?」

「まぁ、そんなとこだね」

「俺が青春的囮になっていれば、半分以上を奇襲に割いても大丈夫そうだな」

 作戦がどんどん決定していく。

「私も、ここに残っていた方がいいかな? ほら、私のことも噂になっているんでしょ。だったら、私も十分に囮の役目を果たせると思うんだ」

 というか、それぐらいしか役に立ちそうな方法が思いつかない。

 だって、奇襲に一緒に行ったところで、私がカラーボールを投げて、命中するかどうか分からないもん。

「危険だよ?」

 作治君が心配そうな顔をする。

「大丈夫! 俺がいる! 俺がいれば、どんなことがあっても、叶恵ちゃんには指一本触れさせないぜ!! うおおおおお!! これぞ青春っ!!!」

 どう青春なのか、さっぱりわからないけども、懸さんのその言葉はとても心強かった。

「ってなわけだ。えっとお前と、泥沼。他の奴らを四人連れて、奇襲をかけてくれ」

「竜美よぉ、テメェ、この俺様に命令するたぁよぉ……言っとくがな! 俺はおめぇの派閥に入ったわけじゃあねーからなっ! あいつら倒したら、次はおめぇの番だ!」

 泥沼がそんなことを言って立ち上がった。

「オラッ! テメェらいくぞっ!」

 でも、ちゃんと作戦通りには動いてくれるみたいで、他の仲間と作治君を引き連れて、階段に向かって行った。

 もう、余計な事言わなければかっこよかったのに。素直じゃないなぁ。

「さて、俺達もやつらの注意を引きつけようぜ、叶恵ちゃん」

 懸さんがぐっ、と力を込めて言う。

「うん」

 私も返事をして、網袋の中から、カラーボールを取り出した。

 よし、私も気合を入れて、頑張らないと。 

「叶恵ちゃん。何個かカラーボール投げるぞ!」

 懸さんが立ち上がった。

 そうすると、頭がちょうどバリケードの上の部分から見えるようにひょっこりと出る。

「いたぞっ!! 竜美だああああ!!」

 そうすると、相手の人達も当然懸さんに気が付く。

「あいつ目がけて投げろおっ!! 俺達でぶったお……すべっ!!」

 言っている途中に、懸さんが放り投げたカラーボールが顔面に命中した。

「へっ、俺がそんな簡単にやられるとでも思ったかっ!! これぞせいしゅ……」

 懸さん目がけて、無数のカラーボールが飛んできた。

「うおっ! あっぶねっ!!!」

 さすがに懸さんも攻撃を中断して、しゃがみ込む。カラーボールはバリケードの上を飛んで行く。

「くっそぉ~。やっぱ数じゃ敵わねぇか~。でも、こっち側に集中してるぞ」

 懸さんの言う通り、カラーボールは懸さんのバリケードの方に集中している。

 私たちは隙間を挟んで、左右のバリケードに背を預けていた。

 ぼんぼんどんどん、カラーボールが当たっているのは、懸さんがいる左側のバリケードばかり。

「チャンスだぜ、叶恵ちゃん」

 私に向けて、懸さんがにっと笑う。

「うん」

 隣に集中している以上、大暴投しないかぎりは、こちらにカラーボールは来ないだろう。

 そう踏んで、私も立ち上がる。何人もの学ランを着た相手の代表者たちがいた。

 彼らも、私の顔に気が付いた。でも、何か言ったり、何か行動をするまえに……。

「えいっ!」

 適当にボールを投げた。

 ボールが何かに当たる前に、私はすぐにしゃがみこんだ。

「おいっ!! 今の女っ!!」

「間違いねぇ! 番長どものボスだああ!! ねらえっ! ねらえええええ!!」

 どどどだだだだだ!!!

 カラーボールがぶつかっているとは到底思えないほどの激しい音が、激しい振動が、私の背のバリケードに伝わる。

「あわ、あわわわわ」

 思った通りの反応ではあるけれど、思った以上の反応でもあった。

 やばい、やばいよこれ。当たったら痛いんじゃないの?

「よしよし、狙いは叶恵ちゃんに集中してきてる。次は俺の番……」

 と懸さんがカラーボールを取ろうと、網袋に手を入れる。しかし、すかっ、すかっ、と何もつかめない。

 見てみると、彼の袋はすっからかんになってしまっていた。

 そうだ。

 私は自分の袋の中からカラーボールを二つだけ取り出す。そして、五個くらいは残っているその袋を、

「懸さん、これっ」

 懸さんの方に投げた。

「それ使って」

「叶恵ちゃん。でも、叶恵ちゃんの分は……」

「いいの。どうせ私には誰かに命中させられるだけの力はないから」

「叶恵ちゃん……」

 懸さんの目に、じーんと涙が浮かんだ。

「ちょ、なんでっ!!?」

「よっしゃああああああああ!! 任せてくれっ、叶恵ちゃん!! この青春の

 証、大事に使ってやるぜえええええ!!」

「青春の証って何っ!!? っていうか、大事に使わないで、どんどん使ってよっ!!」

 懸さんがまたも立ち上がる。

「うおおおおおおおっ!!!」

「ぐへっ!!」

「どふんっ!!」

 そして、ボールを投げてどんどん命中させていった。

 時間もいい具合に進んできている。

 もうそろそろかな。

「ぶほっ!!」

「ふぶぅっ!!」

 懸さんはボールを投げていない。それなのに、ボールが命中したらしい、相手方の断末魔が聞こえてきた。

 ということは、つまり……。

「どうしたっ!!? げふっ!!」

「おめぇらああああ!! かかれええええええ!!!」

 泥沼の叫びだ。 

「うしろだあああ! 後ろからも敵がはっ!!!」

 ここからじゃ、様子は見えていないけど、泥沼たちがどんどん攻撃を加えているみたいだ。

「よし、頃合いだっ! お前らもいけぇっ!!」

「はいっ!!」

 それを合図に、今までずっと待機していた、バリケードの裏に隠れていた懸さんの仲間のみんなもカラーボールを持って、バリケードを自分達で崩して、突撃して行った。

 私もそれに続く。

 カラーボールが飛び交う。たくさんいた相手の人達も、前後の挟み撃ちに、どんどん倒れていった。

 私も一つくらいカラーボールを投げてみたけど、当たらなかった。

 そして、あっという間に……。

「よっしゃあああ! これで全滅だぜっ!! さっすが俺様だあああ!!」

 泥沼が、まるで戦国時代の武将みたいに勝鬨を上げた。

 まぁ、確かに泥沼は今回かなり活躍したと思うけど。

 とりあえずは、これでよし、かな。

 私たちも移動して、廊下の中央辺りで泥沼と作治君たちと合流する。私たちの中で、倒されてしまった人は誰もいなかった。

「二階の制圧完了。後は一階だな。一階の様子はどうなっているか、分かるか叶恵ちゃん」

「一階はまだ、あまり分かんないかなぁ」

 一階のことを話していると、無線機が鳴った。

「あ、外からの連絡だ。もしかしたら、一階の様子が分かるかもね」

 期待を込めて、通信ボタンを押す。

「通じてますか」

 聞こえてきた声に、すぐにはピンと来なかった。

「おい、海鞘蕗じゃねぇかっ!?」

 通信が耳に入った泥沼が言う。

「その声は、泥沼っ。まだ倒れていなかったんですね」

「おいコラっ! なんだその言い方はっ!! 俺様が倒されて当然みてぇじゃねぇか!!」

「まぁまぁ。それはどうでもいいでしょう」

「いいわけあるかっ!!」

 泥馬の言う通り、通信の相手はあのメガネの海鞘蕗だ。

 でも、海鞘蕗って確か……。

「ねぇ、真虎君はどうしたの?」

 彼は、真虎君と一緒にいたはず。それに、無線機も真虎君が持っていたはずなのに、どうして海鞘蕗から連絡が来たのだろう。

「それなんですが……湯川から無線機を預かっている間に、はぐれてしまって」

「はぐれてって……何かあったの?」

 嫌な予感がする。彼らがいたのは校庭の方で、校庭と言えば、とんでもない大混戦になっていたはず。

「何があったか、は今は置いておきましょう。それよりも、校舎内にいる方々に耳に入れておいてほしい情報が……」

 と、彼が言いかけた途端。

「ぐわっ!!!」

 断末魔が聞こえた。他ならぬ、海鞘蕗の声で。

 とっさに動いた泥沼が、私の手から無線機をひったくった。

「おい!! どうした!! 何があった!! 海鞘蕗、海鞘蕗ぃいいいいいい!!」

 返答は何もなかった。

「泥沼、通信が切れたみたいだよ」

 作治君が泥沼に言うと、クソッ! とやつあたりをするように、泥沼は作治君に無線機を押し付けた。

 外で何が起こっているんだろう。

 不安が胸をばくばくとさせ、焦燥感を募らせる。

「あ、叶恵ちゃん」

 作治君に声をかけられた。その理由はすぐに分かった。作治君が持っていた無線機がまたなっていたからだろう。

 私は作治君が持ったままの無線機の通信ボタンを押した。

 誰からだろう。また、海鞘蕗かもしれない。

 ううん、誰でもいい。今は、外の状況が分かる新しい情報が欲しかった。

「叶恵っ! 聞こえてるっ!!?」

 このみちゃんからだ。

「うん、聞こえてるよ!」

 私が答えると、ほっ、と息を着いたのがわかった。

 聞こえてくるこのみちゃんの声も、なんだかせっぱつまっているようだった。

「いい! 今すぐそこから……って、ちょっとっ!!! 何すんのよっ!!」

 このみちゃんが叫んだ。私たちへ向けてではない。

 思わず、どきりとした。嫌な予感がする。

 本当に良くないことが起こってる。

「このみちゃん!」

 私が無線機に向けてそう言ったときには、もう無線機の通信は切れていた。

「不味いな……外からの通信が断たれたと思っていいね、これは」

 作治君が冷静に言う。

「しっかし、水戸の奴、俺様たちに何を言いたかったんだぁ?」

 泥沼が首をかしげる。

 このみちゃんは何かを言いかけていた。

 今すぐそこから……って言いかけてたけど、これってまさか、というか、間違いないっ!

「みんなっ、ここから離れようっ!」

 ちょうど、私がそう言った直後だった。

「げうっ!!」

「ばほっ!!!!」

 私たちの仲間、懸さんと一緒にバリケードに隠れていた人達の内、二人にカラーボールが当たった。

 彼らが今いるのは、さっき私たちがいた方。

 つまりは、一方の一階三階に続く階段の方なわけで……。

「やっべぇ!! 一階から敵が上がって来てやがるっ!!」

 泥沼が叫んで、私も振り向いた。

 その方向からは、敵が三人歩いてきていた。

「や、だ、わぁ~~~~」

 その中の一人。

 とても特徴的な人だ。スキンヘッドで、いかつい顔なのに化粧を施していて、忘れようにも忘れられない容貌をしている。

「あ! 真虎君を攫ったオカマ!!」

「と・ね・だ!! よ~~!! ちゃんと名前で呼んで頂戴っ!!! も~~~~、やだわ~~~~」

「おいっ! こっちの階段からも敵が上がって来てるぞっ!!」

 泥沼が階段を覗きこんでいて、下に続く階段の様子を見たらしく、慌てた声を上げる。

「これは……挟み撃ちをかけられているね……」

「やだわぁ~やだわぁ~。アタシの愛する番長仇だけじゃなくって、あのとき邪魔してくれたにくったらし~~い小娘もいるなんてぇ~~。運が向いて来たわぁ~~。アンタらっ!!! さっさとやっちゃいなさい!!!」

 オカマ、え~~と、利根田がそう言うと、またカラーボールが飛んできた。

「叶恵ちゃん!! 上に逃げろっ!!!」

 懸さんがカラーボールを投げながら、私に言った。

「で、でも、懸さんは……」

「俺達は後で上に向かうっ! 泥沼っ! あと、えっと……その……」

「作治君?」

「そう、作次郎!!」

「なんか微妙に違うっ!!!」

「良くある良くある」

「もう適当に言ってるよね、作治君もっ!! 投げやりだよねっ!!」

「叶恵ちゃんを頼んだっ!!!」

「分かった。さぁ、叶恵ちゃん、逃げるよっ!」

 作治君に手を引かれる。私も、ここは逃げるべきだと思う。

 でも、懸さんを見捨てるなんて。

「大丈夫だ、叶恵ちゃん」

 私が心配しているのを知ってか、懸さんが振り返った。

「俺は絶対に死なねぇよ」

 うん、死なないよね、ただカラーボール投げてるだけだもんね。

「……分かった。先に上にいってるから」

 でも、覚悟はなんとなく伝わった。

 懸さんなら大丈夫。

 私も覚悟を決めて、階段を駆けあがった。

 懸さんと、他の仲間たちはその場に残っていた。

 カラーボールを投げる時の雄叫びと、当てられた時の断末魔が聞こえてくる。

 それを背に、私たち三人は三階を目指して、全速力で進んで行く。

ども、作者です。


サブタイ迷走中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ