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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
PR
58/105

殺伐した……行事?

「ゥオラァ!! 死ねやァっ!!!」

「お前ーが死ねやァ!!!!」

「げほっ、死ぬゥゥ!!!」

「死ぼぉぉ!!!」

 外が、とても騒がしい。相変わらず校庭中では暴力と怒号と断末魔の嵐が吹き荒れていた。

 死ねって。断末魔って。

 これを、学校行事の範疇と考えても良いのだろうか。絶対にダメだと思う。

 でもって、騒がしいのは何も校舎の外だけではなかった。

「死にさらせぇえええええ!!!」

「ぶっ殺したらああああああああ!!!」

 と、廊下側からも聞こえている。

 廊下へと続く教室の出入口は両方とも閉じられている。だから、一体何が起こっているのやら、さっぱり分からない。

 何が起こっているのだろう。

「ね、ねぇ、廊下の様子見てみようよ」

 かなり怖いけど、いや、怖いからこそ怖いもの見たさなのか、廊下の様子が気になって気になって仕方がない。

 だから、作治君と泥沼に向けてそう言ってみたんだけど、

「しっ。静かに。廊下が気になるのは分かるけど、今はこのままじっと待っているんだ。そうした方がいいよ。なぁ、君もそう思うだろ?」 

 と、作治君は私の意見に反論しながら、泥沼に問いかけた。

「ん?」

 泥沼はなぜか、右を向いた。

 右には、特に何もない。なんでそっち向いたの?

「なぁ、僕は真正面にいるんだけど」

「んあ? そうか。わりぃわりぃ、お前の存在感が薄すぎて、一瞬どこにいるかわかんなくなっちまったよ」

「それ、いじめ?」

 私がそう尋ねた。泥沼はぶんぶんと頭を振る。

「ンな陰湿なことするかよ!! ガチでどこにいるか分かんなかったんだッつの!」

 ……泥沼は、嘘をついているようには見えなかった。

 本気でそう言っているんだとしたら、どんだけその、単純なの?

 た、確かに作治君は存在感が薄いけど、さすがにそれは……。

「まぁいいよ、良くあるから」

「良くあるのっ!!?」

「オウコラ!!! 馬鹿女っ! 大声出すんじゃねえよ! ここにいるの気付かれるじゃねえかっ!!」

 と、泥沼が一番大きな声を発した。

 その途端、ガラっ! と廊下にでるドアが開かれた。

 もちろん、私たちの誰かが開いたわけじゃなくって……。

 見てみると、開かれたドアの向こうに、ドアを開いたであろう人達が立っていた。

 学ランを着た三人。一人は教室前方のドアの所に立っていて、後の二人は教室後方のドアに立っていた。

 両方のドアからの侵入を許してしまった。

「きゃっ!!」

 思わず、驚いてしまった。そのせいで手に持っていたカラーボールを落っことしてしまう。

「見つけたぞおおおお!!」

「ちっ! おめぇの使うぞ!!」

 即座に泥沼が動いた。泥沼がしゃがんで私が落としたカラーボールを拾う。

 そして、その直後には二つのボールを教室後方の二人に投げつけていた。

「うげっ!」

「げふっ!」

 その二つが、カラーボールを投げようとしていた二人の顔に見事に命中する。

 すごっ! 泥沼、意外とやる……。

「ぐはっ!」

 続いて、またも断末魔が聞こえた。

 聞こえた方を見てみると、教室の前方。こちらも顔にカラーボールが命中していた。

 投げたのは、どうやら作治君だったみたい。

 作治君の方を見ると、持っていたはずのカラーボールが無くなっていた。

 い、いつの間に……。

「とりあえず、一難去ったってところかな」

「ったく、足引っ張るなって言ったばっかじゃねぇかよ!」

「ご、ごめん……」

 つい謝ってしまった。

 謝った直後に、私は気が付いた。廊下がかなりしんとしている。さっきまで聞こえていたはずの断末魔やら怒号やらが完全に聞こえなくなっていた。

「よしよし。いい具合に運が向いてやがらぁ。こういうのを一団去ったって言うんだよな」

「一難去っただよ。それ、さっき僕が言ってたんだけど」

「んあっ? そんなことお前言ってたかぁ?」

「いやいや言ってたよ。私聞いてたもん。っていうか、さすがにそれは無理があると思うんだけど、やっぱりわざとやってる?」

「まぁまぁ、気にしなくていいよ叶恵ちゃん。良くあるから」

「コレも良くあるのっ!?」

 作治君、いったいどんな星の元に生まれてきたの?

「って、そんなことより聞いていいかな?」

「なんだい?」

「どうして、さっきカラーボールを当てられた人達、みんな倒れたままなの?」

 さっき教室に入ってきた三人。みんなカラーボールを当てられてからその場に倒れて、ぴくりとも動かない。まるで気絶しているみたいに。

 いや、カラーボールじゃ気絶しないでしょ。気絶するような変な薬とか入ってる? そんなわけないよね。ただのカラーボールだよね、これ。

「まぁ、そういうものだよ」

「そういうもの!? どういうものなの!?」

「ノリだノリ。ノリで倒れてるんだよ。まったく、こいつらの気持ちを考えてみろよ。分かるだろそんぐらい」

「いや、分んないって。っていうかノリなんだ」

 つまりは気絶しているフリ。どんだけノリがいいのよ、このカラーボール戦争においては。

「つーかよぉ、もう廊下も安全なんじゃねぇか。様子見て行こうぜ」

 泥沼の提案に、私も作治君も従った。

 廊下に出てみると、これまた衝撃的な光景が広がっていた。

 ちなみに、カラーボールは何かにぶつかると炸裂して、絵具なのかなんなのか分からない塗料をまき散らすんだけど、その色は赤。

 思い浮かべて欲しい。学ランやセーラー服を着た学生たちが廊下に倒れて、ぴくりとも動かなくなってしまっていて、その顔や胸、背中や足元辺りに、真っ赤な塗料が沁みついている。

 まるで、学校で何か猟奇的な大量殺人でも起こっているかのような光景。

 いや、みんな気絶しているフリで倒れているだけらしいんだけど。ほんと、みんなどんだけノリがいいの? ここまでやる?

「どうやら、廊下で大激突があったみたいだね。廊下に出ていた他の代表者たちは入ってきたやつらを除いて、全滅しちゃったみたいだ」

 冷静に、作治君が分析する。

 れ、冷静すぎない? この状況で平常心を保てるって、やっぱり作治君もこの学校の生徒なんだなぁ。

 って、私も感心している場合じゃない!? 

「ど、どうすればいいのかな、これから……」

「おい、おめえらも手伝えよ!」

 私が疑問を告げようとすると、泥沼が私と作治君に声をかけた。

 泥沼の方を見てみると、彼は倒れ伏している他のクラスの人達が身に付けている網袋の中から、カラーボールを奪い取っていた。

「ねぇ、あの人何をしてるの?」

「ああやってね、カラーボールの在庫を増やそうとしてるんだよ。僕たちが渡されたのは一人五つだけど、さすがにそれだけじゃ足りないんだ。だから、他に倒れている人を見つけたら余っているボールを奪う。カラーボール戦争を勝ち抜くためのセオリーの一つだね」

「ルール上はありなの?」

「しちゃいけないってルールはないからね。大丈夫じゃないかな」

「おめぇら! しゃべってねえで手伝えっての! まったく、ただでさえ脱落時にカラーボールを尻に敷いて潰してるやつらも多いんだぞ! 今のうちに集められるだけ集めとけい!」

 泥沼がそう怒鳴るので、私も一応集めることにした。

 ただ、私が取ることができたのは、ほんの五個だけ。泥沼の言う通り、網袋をわざと自分の下に置くようにして倒れている人が多かった。

 多分、そうやってカラーボールを奪って行こうとする勝者たちの妨害をしようというのだろう。

 敗退するときにも、こんなに気を使っているだなんて、やっぱりこのゲームにかける他の人達の意気込みは凄まじいものだ。

 でも、カラーボール戦争ってクラス対抗のはずだよね。

 見たところ、三人ずつで倒れている人達が多い。つまりは、クラスの代表者みんなが脱落してしまっているのだ。

 もちろん、倒された時点では他のクラスメイトが残っているから、そうやってカラーボールを潰して倒れたってことも考えられるんだけど、それにしては、ほとんど全員がカラーボールを自分で潰しているような気がするの。

 どういう意味があるんだろう……うーん。

「クラス対抗なのに、どうしてこんなに真剣で本格的にやるんだろう」

 考えている内に、つい口に出てしまった。

「おいおい、おめぇよぉ……」

 と、私の声を耳にして、泥沼が何かを言おうとしたときだった。

 ブーブー、とブザーが鳴った。

 どこから鳴っているのか。それは、カラーボールと一緒に配布してもらって、私が持っていた無線機からだった。無線機も網袋と同じように腰に括り付けている。

 私はその無線機を取って、通信ボタンを押した。

 誰からの連絡だろう。

「叶恵、アタシよ」

「このみちゃん?」

「そうそう」

「だ、大丈夫だったの? 校庭かなりやばかったんじゃない?」

「ぜーんぜん平気よ。さっさと校庭を離れたもん」

 ほっ。それは良かった。もしかしたら、このみちゃんも巻き込まれていたんじゃないかって、不安だった。

「っていうか、暴力行為って禁止じゃなかったっけ?」

 私は、校庭で起きていたことを思い出して、当事者になっていたこのみちゃんに尋ねた。

「あー、それね。あくまでも屋内での暴力行為は禁止だから」

「それは、つまり?」

「屋外では殴る蹴るいくらでもオッケー」

「ちょ! それってかなり不味くない!?」

「まぁ、学校も許可してるからいいんじゃない? 見逃されているし。それにそんくらい許可してもらわないと、この学校の馬鹿どもを黙らせることなんてできないわよ」

 それは……そうだとは思うけど。

「そんなことより叶恵。アンタ、今廊下にいるわよね」

「えっ!?」

 私はとっさに辺りを見渡した。このみちゃんがまるで本当に見ているように言うものだから、どこかで監視しているんじゃないかと思ったから。

 でも、周りを見ても廊下には赤い塗料まみれの死屍累々があるばかり。

「あ、言っとくけど、ここからじゃ丸見えよ」

「えっ!? うそっ、どこにいるのこのみちゃん!!」

「そんな怖がってきょろきょろしなくてもいいわよ~」

 またも、私の行動をぴたりと言い当てられた。監視カメラとかあるの?

 この無線に内蔵されてたりとかする!?

「正面」

「えっ……」

 このみちゃんに言われたとおり、私は正面を見た。

 私の目の前には、教室に並行するように設置されている、廊下の窓があった。

 廊下の窓は途中で途切れてはいるものの、廊下の突き当りまで続いている。

 そこから見えるのは中庭だ。中庭と言っても、噴水とか小学校にあるような飼育小屋なんてなくって、ただただベンチと木とかがあるだけで、普通に生活していたら、なかなか行く機会のない場所だった。

 私は窓に近寄った。そして、その窓から中庭を見下ろす。

 その中庭に、このみちゃんがいた。中庭の一番奥の方にいる。

 そこからなら、ちょうど私たちの姿が外からでも見えそうだ。

「なんで、そんなところにいるの?」

「なんでって、アンタ達をサポートするためでしょう? そういうルールで、そのために今使っている無線機を受け取ってるってこと、忘れてないわよね」

 あ、そう言えば校長先生もそんなことをルールとして言っていたような気がする。

「で、廊下に出てきたアンタに伝えておこうと思ってね。今下の階、二階と一階じゃ、かなりの混戦が起こっているみたいなの。詳しい様子はまだまだ見えないけど、ひとまずはまだ階下に降りない方がいいわね。しばらく三階で待ってなさい」

「あ、うん。分かった」

「オッケー? 他の仲間二人も聞いてるでしょ? いい! アタシの言うこと聞きなさいよ!」

 このみちゃんが大き目の声で言う。外を見てみれば、無線機に怒鳴りつけていた。

「あーもう! うるっせぇなぁ! わぁーったよ! つーか、簡単に負けるような真似するわきゃねーだろ!」

「僕のほうもりょ……」

「じゃ、また後で連絡するわねー」

 このみちゃんは、作治君の返答を待たずに切ってしまった。

「作治君……」

「大丈夫……よく、あるから……」

 さすがに、これは良くある事例じゃないみたい。作治君が若干落ち込んできた。

 さ、作治君のフォローをしないと……。

 そう思った時だった。

 また、無線機がぶーぶーと鳴った。

「ま、またぁ?」

 またこのみちゃんかな。早くない? もしかして、早く連絡が必要な位に階下の状況が進展しているんじゃ……。

 作治君は可哀そうだけど、それよりもまずは無線の連絡に応答しないと!

 もう一度、無線機の通信ボタンを押す。

「このみちゃん?」

 無線機に向かって尋ねた。

「違うし、僕だし」

 けれど、返答は男の子の声だった。

「その声、真虎君?」

「そうだし。無線連絡は一番乗りじゃなかったみたいだし」

 真虎君の声はちょっと残念そうだった。

 真虎君の声を聞いていると、無線機からは別の声も聞こえてきた。

「オラァ!!!」

「ごぼふっ!!」

 聞き覚えのある怒号と断末魔。校庭の方で聞いたのとだいたい同じものだ。

 かなり小さな音声だけど、そんな声が聞こえて来るってことは……。

「真虎君、もしかしてかなり危険なところにいない?」

「さぁ。危険と言えば危険だし、安全と言えば安全だし」

「いやいや、危険だよね。いろいろと変な声聞こえて来てるよ」

「心配してくれてる?」

「え? そ、そりゃあ、まぁ。真虎君が危険なところにいるっていうのなら、心配するけど……」

「そう……残念だし。一応、僕だけは安全だし」

「ど、どうして?」

 そう問いかけると、真虎君の返事の代わりにこんな声が聞こえてきた。

「湯川。そろそろ殿面がやられそうです。場所の移動を始めましょう」

「うおっ! 海鞘蕗ぃ!!? あいつ、湯川と何やってんだ!?」

「湯川!! お前は海鞘蕗と先に移動しとけっ! 殿面の援護は俺がやっとく!」

 その声は、下中君のものだった。

 つまりは、真虎君の周りには何人かのクラスメイトがいるらしい。

「多分、彼は守られているんだろうね。僕たちとの大事な懸け橋になる、連絡要員を湯川君が担ってくれてるみたいだね」

 作治君が分析する。

 ということは、真虎君が安全ってことは、みんなから守ってもらえるからって意味なんだね。

「こっちも早く逃げなくちゃいけなくなったし。その前に、叶恵に伝えておきたいことがあるし」

「何?」

「君たちのいるフロア。そこの右端と、君たちが最初に待機していた左隣の教室に、まだ他のクラスの代表者がいるし。待ち伏せをしているはずだし、もしかしたら、突然教室から出てくることもありそうだから、気を付けて欲しいし」

「左隣と右端の教室、だね?」

「そうだし。じゃあ、僕は急ぐし」

 と、伝えることだけを伝えると真虎君は無線機を切ったようだ。

「ったく、待ち伏せがいやがるのか……」

「ここも安全じゃないね」

「まぁったく、奴らを倒すまでここも安全じゃあねぇなぁ!」

「……」

「作治君、落ち込まないで。そんなこともあるから、多分」

「ありがとう、叶恵ちゃん。僕、そろそろ心が折れそうだよ」

 なんだか、作治君がやつれてきたような顔つきになってきた。

 あ、そういえば、真虎君たちは校庭側にいたみたいだけど、ワンちゃんはどこにいるんだろう?

 ワンちゃんも、やっぱり校庭で喧嘩してるんだろうか。

 うーん。やってそうだなぁ、喧嘩。

 だけど、ワンちゃんは好き好んで喧嘩しているような感じじゃないし……。

 そんなことを考えていると、またも無線機のブザーが鳴った。

「まただ……」

 もしかして、ワンちゃんかも……。

 そう思いながら無線に応答してみる。

「叶恵? 聞こえてるー?」

 このみちゃんだった。嬉しくなくはないけど、ちょっとがっかり。

「どうしたの? 下の階の様子が変ったの?」

「ううん。二階一階の様子はちっとも変ってないみたいだけど、朗報よ。アンタのいる階の、一番端の教室に他のクラスの代表者がいるんだけどさぁ。そいつらね、アタシらと同じグループなのよ」

「グループ?」

「要するに、懸の仲間ってこと。で、そいつらがアタシらに協力してくれるって言ってるから、合流して頂戴」

「きょ、協力って、これって……」

 クラス対抗なんじゃないの?

 そう尋ねようと思ったんだけど、

「協力者が出来るってことか。よっしゃ、なら行ってみるぜ!」

「うん。十分に価値があると思うね」

 と、泥沼と作治君が賛同する声で途切れてしまった。

「じゃ、そういうわけだから、頼んだわよ~」

「あ! ちょっとま……切れちゃった」

 結局、私の疑問は伝えられないまま。

 クラス対抗のはずなのに、他のクラスの人に協力をしてもらう?

 んん? んんん? あー、なんだか良く分からない。腑に落ちない。

「端だから、右端だね。さ、行こうよ叶恵ちゃん」

 でも、泥沼は先に歩いているし、作治君もその気みたいだ。

 これじゃあ、私が反対してもどうにもなりそうにないし……。

 とりあえずは、会うだけ会ってみよう。

 私も覚悟を決めて、二人に従った。

 三人で到着した、一番端の教室。扉はしまっていて、開けるのはちょっとためらわれる。

「おい! 協力者あ! いるんだろぉ!」

 はずなんだけど、泥沼は何のためらいもなく、ドアを開けて入って行った。

「アァン!! 誰だテメェは!!」

 あ、これは間違えた? すんごいどすの利いた声だ。

 でも、どこかで聞いたことのある声だ。

 泥沼を追って、私も教室の中へと入る。

 そこには、実に特徴的な二人の姿があった。

 彼らも私の姿を見ると、目を丸くした後、すぐに破顔して、

「姐さーん!」

 と二人揃って言った。

 その二人は、九十年代のアーティストみたいなモヒカン頭の子と、顔中ピアスだらけの子。

 たしか、モヒカンの田中君とピアスの山田君。一年生の、年下二人だ。

「姐さんも代表者になったんスね!」

 とピアスの山田君が言う。

「あ、うん。っていうか、姐さんって私?」

「それ以外に誰がいるんスか」

 モヒカンの田中君がさも当然に言う。

 姐さんって……いったいいつからこんな風に呼ばれるようになっちゃったんだろう。

 私が何をしたっていうの?

「いやぁ~、ちょうど良かったッスよ~。俺達も代表者になったはいいものの、スタート時の大混戦で仲間も一人やられちまって」

「田中と二人で待ち伏せしていたんスけど、これ以上役に立てるかどうか怪しくって、もうダメかと思ってたんスけど、くぅ~、まさか姐さんの役に立てるなんて……」

 二人がとても感慨深そうに目に涙を浮かべる。

 いやいや、そんなにしなくたっていいからね? これクラス対抗でしょ?

「俺達も旧番派を抜けて、完全に懸さんの派閥に入りましたから、いわば俺達は姐さんの部下も同然ッス! ささ、何なりと命令して欲しいッス!」

「ふふ。叶恵ちゃん、完全に竜美さんたちのボス的な存在だって思われてるね」

 と、作治君が言う。

「笑いごとじゃないよぉ……はぁ。っていうか、その……ほんとに協力してくれるの?」

「当たり前じゃないッスか! 俺達は姐さんの手足も同然ッスよ! なぁ山田!」

「おう、田中! もう他の派閥の奴らに幅を利かせるわけにもいかねぇ! 番長派として、いやいや裏も表の番長をも従える姐さん派として、ぜひともお力にさせてくれッス!」

 ん、んんん!? なんか、変なことになってない?

 姐さん派とか、その辺りも十分におかしいんだけど……、

 それ以上に、他の派閥に幅を利かせないとか、これじゃあ、まるで……。

「ね、ねぇ、二人とも……」

 なんだろう。ずっとずっと引っかかってきたけど、このカラーボール戦争、先生たちが言っていたルール上のことばかりじゃなくて、何か裏がありそう。

「はい、なんスか!?」

 二人がびしっと背筋を伸ばす。

 よし、尋ねてみよう。ずっとずっと気になっていたことを。

「どうして、協力をしてくれるの? これって、クラス対抗のゲームなんでしょ?」 


 一方、校庭では。

「見つけたぞぉ、大神一和!!」

「お前をぶっ倒してぇ、俺達も名前を上げてやるぅ!!」

「へっへっへ、俺たちゃよぉ~、全員別の派閥だがよぉ~、大神ぃ!! テメェを倒すためだけに組むことにしたんだぁ!!」

「どうだ! この人数を相手にビビッて何も言えまい!!」

「俺らも名が上がる。校舎の仲間たちも勝ちやすくなる、まさにウィンウィンよぉ。ぜってーにぶっ殺してやる!!」

 と、他のクラス、学年の不良たちが口ぐちに挑発する。

 言葉を向けられている一和の方は……。

 校庭にあった、サッカー部などが使いそうなベンチの上で、座っているままだった。

 一和は、このカラーボール戦争になど一切の興味が無かった。

 学校行事自体にも特に興味も湧かない。

 その上、こんな行事だ。派閥だのなんだの、そんなのは自分に全く関係ない。

 一和はそう考えているための、無興味であった。

「テメェ、クールを気取りやがって……!」

「行くぞっ!! ぶっ殺してやる!!!」

 一和を取り囲むのは、学ラン姿の不良十人。

 彼らが一斉に一和に襲いかかった。

 しかし……。

「べほっ!」

「がはっ!!」

「げふっ!!!」

「だほっ!!!!」

「ぬーんっ!!!!」

 と、一斉に襲いかかるまでは良かったものの、ベンチから立ち上がった一和に、赤子の手を捻るかごとくかる~く、ちぎられては投げられ、ちぎられては投げられ、ものの数秒で全滅してしまった。

「……ふん」

 一和は不良たちを一瞥して、鼻を鳴らしてベンチに座りなおした。

「へぇ……相変わらず強いし」

 そんな一和へ背後から声がかかった。

 一和が振り向いてみると、そこには真虎がいた。

「君も大変だし。こんな三下たちに自分達の派閥を勝たせるために勝負を挑まれるなんて」

「……」

「だんまりだし。まぁ、君が狙われるのも仕方がないし。君、知っている? 君と竜美懸が手を組んで、学校中を占めるとんでもない派閥ができそうになっているって、噂になっているし。そして、それを束ねるのが、叶恵って話」

 叶恵。その名前が聞こえた途端、一和の背がぴくりと動いたように見えた。

「まぁ、叶恵はそんなつもりも全くないだろうし、ただの噂の域を超えない与太話だし」

 でも、と真虎が続ける。まるで、一和に向かって諭す様な口調で。

「叶恵にいろいろと火の粉が降りかかるかもしれないし。こんなゲームだけど、他の奴らが狙っている事、君だって分かっているはずだし。叶恵にもしもの事が無いように、僕だって頑張っているし」

「……何が言いたい」

 一和がやっと零したのは、不愉快そうな声だった。

「君にも手伝って欲しいし。他ならぬ、叶恵のために」

「……ふん。興味ない」

 一和が立ち上がる。

 興味のないことを延々と続ける、真虎から離れようとしている。

 真虎も一和に対して何かを言ったところで、それが意味を成して、この男を動かすとは到底思ってもいなかった。

「まぁ、いいし。ところで君、何かあったでしょ、叶恵と」

 またも、一和の背がぴくりと反応する。

「……何も」

 一和はそっけなく答える。

 しかし、真虎の方は彼の背に向けてにたり、と笑みを向けた。

「嘘、へたくそだし」

 真虎には、なぜか見抜かれているようだった。叶恵とあったこと。

 あの日に、体育館の裏で起こした、一和にしては珍しく積極的だった行動のことを。細かいことは、さすがに真虎も知らない。

 ただ、日頃の二人の様子が、なんだかぎこちなくなっていた。

 何かがあった。そうとしか、真虎には考えられなかった。

 そして、その何かは……。叶恵にとって、非常にうれしかったことに違いはない。

 それに気が付いているから、真虎は一和に言ってやりたいことがあった。

「僕は諦めないし。むしろ、奪ってみせるし」

 今の闘争とは違う、全く別の闘争の宣戦布告。

「……ふん」

 それに対して、一和は興味なさそうに鼻を鳴らして、背を向けたままその場を去っていった。 




ども、作者です。


何が困るって、サブタイトルを全く決めていなかったせいで、どうしようか悩むところが辛いです。


どうつければいいのやら、勢いで書いたお話はどうも困りがちです。

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