その後の……二人?
「ごめんね、ここまで送ってもらって」
「いいや。これくらいどうってことないさ。店を手伝ってもらったことに比べたらさ」
「ふふっ、ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ、また学校で。同じクラスの俺の仲間のこと頼んだぜ」
「うん……じゃあ、またね」
そういうと、叶恵が駅に中に向かって行った。
彼女の後姿を、懸は見えなくなるまで見つめていた。
見えなくなった途端、彼はがっくりと肩を落とした。
これでも懸も普通の高校生だ。自分の好きだった人にフラれて、ダメージを受けないわけが無く、叶恵を駅で見送るまではずっと気丈にふるまっていただけであった。
「……はぁ」
ため息も零れる。
「何青春してんのよアンタは。結果はどう? って聞くまでもないわね」
と、懸に声をかけたのはこのみだった。彼女が海を離れてから随分と時間が経っていて、もう既に日も暮れかかっているのに、彼女はまだ家には帰っていなかったようだ。
その目的は、なんてことは明らかにするだけ無粋というものだろう。
「フラれちまったぜ~」
振り返った懸が、残念そうな顔で言った。
「言わなくても知ってる。ま、そこまで含めて青春じゃないの……ほら、良く言うじゃない。女の数も星の数ほどいるって、だから……」
こんな慰め文句しか言えない辺り、素直じゃないな、とこのみは自分で自分を憐れんだ。他のことを、具体的には自分の気持ちを告げてしまえば、今の状況を大きく変えられそうなのに。
「いーや! まだまだ俺の青春は終わっちゃいねーぜ!!!」
懸が急に元気を取り戻した。
まだまだ終わらない懸の青春。それが意味することはこのみにも分かった。
「……やっぱり」
このみが口を尖らせた。
「移り気はしねぇ!俺は青春一筋の男! つまり、フラれようが何されようが叶恵ちゃん一筋だ!!!」
「いや、つまってないからそれ。っていうか繋がり全くないし」
結局、フラれても懸は諦めるようなタマではなかったのだ。やれやれ、とこのみは切れたように首を振った。
「呆れるほどに一途ね……人のこと言えないけど」
一途、それはこのみも同じで、そんな懸のことも好きなのだ。一途な一面も含めて。
だから、彼が叶恵のことを諦めないからと言って、気持ちが変わることはない。
「それにしても、お腹減ったわね。ちょっと、ラーメン作ってくれない?」
「え? 今からか? 俺も疲れてるし、お前も終電が……」
そういう懸の手をとって、このみが歩き出す。
「いいでしょ? 終電無くしてもアンタに送ってもらえばいいじゃない。さ、早くアンタの家まで行こ?」
「……ま、いっか。俺も腹空いたぁ」
二人が並んで歩く。手を取っているこのみは少しどきどきとしていたが、表情にそんな様子は出ていない。
今日の事で、ちょっとは自分が変わったのかもしれない。もちろん、変らない点もある。
落ち着いた気持ち。心に定着した思いと、冷静な思い。
「ただ付き合ってもらうだけってのもなんだし、愚痴でも聞くわよ? 特に、叶恵に関して」
それらがちょっとだけ、このみに勇気を与えた。あまり触れなかった懸の恋愛にちょっとだけ手を出して見ようと、言葉にして見た。
「ねーよ、んなもん」
しかし、返ってきたのはこんな言葉。懸もまた、変っていないのだ。
折角、私なりのアプローチをしてみたのに。ま、だいたい予想していたけれども。
当分、懸は叶恵のことが好きなままなんだろうと、このみは思う。
だけど、それも待つことに決めた。もしかしたら、懸が叶恵のことを諦めるかもしれない。叶恵も好きな相手がはっきりしていて、その相手も好意を持っていることに間違いが無いのだから。
お互いに思い合っていても、本当にうまくいくかどうかは分からない。そのせいで、懸と叶恵が急接近することが無いとも言えない。
それでも、このみは信じて待つと決めたのだ。それが、一途な人を好きになった、一途なこのみの恋なのだから。
作者です。
一旦ひと段落ですね。
この8部分はいったいどういった話しにしようか、そんなことを考えていた時に、
とりあえず懸の話を書きたい、懸メインのお話を繋ぎに使いたいと思って生まれました。
もともと、懸の実家のことは書き始める前のプロット時点からあって、
漠然とこのことは書こうかな、とキャラクター作りをしている頃から思っていたので、
書けたは書けたので、良かったです。思いっきり、要素としては使っていないんですけどね。
しかも、こういうお話にしようかと漠然とイメージを広げ始めたのが、去年の夏でしたからね。
あのときは、まだ真虎に苦しめられつつも、続きを早くかきたいと思っていた頃だった……ような、そうじゃなかったような……。
まぁ、昔のことですから、忘れましたね(笑)
さて、次回以降も更新はできそうですね。8回分、2か月分はストック済みです。
続き、書かないと……。




