このみちゃんが……信じる?
「アタシ、何してんだろ」
砂浜を走っていく二人を眺めながら、このみが上体を起こす。
確かに疲れてはいたが、正直なところ、遊んでいるうちに急に胸がもやもやとして、自分があまりにもばかばかしいと思って、ふてくされているだけだった。
自分はいったい、今日は何をしに来たんだろう。
今、何をしているんだろう。
何をしたかったのだろう。
うまく結論が見つからない。夏の熱気にやられているせいだ、とこのみは思いたかった。
「お前、追いかけないのかよ」
いつの間にやら同じパラソルの下で休んでいた順一が、このみに尋ねた。
このみはその問いにすぐには答えられなかった。
自分がこれまでに感じていた感情の正体は、すぐに分かった。
温度差が生まれたのだ。あの日、叶恵と電車の中で会話をしたときに。
いつもはてんで気にしなかった。懸がどれだけお熱になっていても、叶恵の心が動くことはないと信じていたはずだった。冷静な気持ちで、そう判断していたんだけど。
それなのに、煮え切らない叶恵の態度を見ていたら、彼女の決心も知っていたはずなのに、胸の中が熱くなった。いやな想像が浮かんだ。叶恵と懸がくっつく。そんな風景。
そのイメージがこのみを熱くさせてしまった。
やきもち。
そんなことで、今日の二人の目的を邪魔した。だけど、楽しかった。
自分のしたことは途方もなく無駄なことだったのだ。
無駄でないとしたら、自分自身を傷つけていただけだろう。
叶恵の想いも、答えもはっきりとしっていたのに。二人っきりになったとしても、何も、変なことが起こらないと分かっていたのに。
それなのに、自分がやってきたことって。
二人を信じられなかった。友達と、自分の好きな相手を。
ふと、そう言うことじゃないかと思って、邪魔をする気が失せてしまった。
「いいの。言ったでしょ。疲れてるのアタシ。あの懸を追いかける体力なんて残っていないわよ」
このみがぶっきらぼうに言う。
「なーんでぇ。簡単に諦めちまうんだなぁ」
下中が伸びをする。彼にとってはどうでもいいことなのだろう。むろん、それが当然なのだが。
「バカ言わないでよ。諦めるんじゃないわよ。まかせるだけ」
「任せる?」
彼にはどうでもいいことであるはずなのに、深く訊き出そうとする。それが、今のこのみには嬉しいようで、うっとおしいことでもあった。
「アンタと話すの面倒ね。先に帰るわ、じゃあ」
このみが立ち上がった。荷物を持ち、そのまま更衣室へと向かっていく。
本当に帰るのか、と下中は不審げに思っていたが、出てきた私服姿のこのみが海水浴場から出て行ってしまったのを見届けて、その時になってやっと本気だったんだな、と気が付いた。
「……ほんとに帰っちまったよ。さぁて、一人になったしナンパするか!!!」
さて、下中は一人、自分のやりたいことをやりたいように始めるのだった。
ども作者です。
短いですねぇ……。




