私の知らない・・・・・アイツって?
それは、叶恵が一和からのメールを受け取ったが、結局勉強をすることもなく寝付いてしまったあたりの、夜遅くのことであった。
「次の青春イベントは夏休みだ!! 金貯めてまたどっかにいくぞ!!」
叶恵の通う高校の駐輪場で、懸達が恒例の集会を行っている。大型のバイクにまたがった、学ラン姿の懸は、目前に迫ったテストのことは完全に無視をして、夏休みの予定を立てはじめていた。
このみもその夏休みのイベントは楽しみだった。これはこれでこのみにとっても大きなチャンスに変りはない。いくら頭の中が叶恵一色の懸であっても、必ず自分のモノにして見せると、彼女は人知れず意気込んでいた。
「ねぇ、このみ」
黙って、どうやって叶恵から自分に振り向かせるかを考えていたこのみに、ふーみん、井笠富美花が声をかける。
「何?」
「このみ、懸さんのこと考えてぴりぴりしてるのねー」
「うるさいっ! 分かってるんだったら声をかけないで」
「このみが懸さんのこと考えてるのはいつものことだからねー。そんなことだけで声かけたりするはずないよねー」
「……なんかあんの?」
「うん。あのねー、実はねー、私的にはねー、特になにか意図があるわけじゃないけどねー、なんていうかねー、ちょっと気になってねー」
「何がよ。勿体ぶらないで早く教えなさいよ」
「うんとねー、そのねー……アイツと連絡が取れた」
アイツ、と聞いて、このみはもしやと思った。
「アイツって、あの?」
「そう。今日ちょっと気になってねー、まだアドレス残ってたから連絡してみたらねー、返信が帰って来たんだけどねー、どうしたらいいかな?」
「どうしたらって……」
「私はねー、そんなあのこのことなんて気にならないんだけどねー、でもねー、やっぱり湯川のことを一番知ってるのはアイツだからねー、もしかしたら、あの子の役に立つんじゃないかなってねー、思ったの」
アイツ。去年のことに大きく関わっているアイツだ。確かに、彼に連絡をすれば、自分も何か役に立てるかもしれない。叶恵が今悩んでいる湯川のことを解決する糸口になるかもしれない。
「後で、アタシが話すわ」
ちょっとだけ、手を貸してやるか、とこのみは思った。他ならぬ、自分の友達の叶恵のために。
第八部 新たな一歩の……出会い?
休みの日の朝だけは、ゆっくりと寝ることができる。何か夢を見ていた時は、もっともっと寝たいと思って、二度寝をするけれど、最近はぐったりと疲れが出てしまうせいか、夢を見ることなく、気が付けば10時近くまでぐっすりと寝てしまっていた。
体全体がすっきりとしている訳ではない。やっぱり、昨日の疲れがまだ残っていた。だから、もう一度寝てしまいたいと、体全体が訴えかけてくる。
でも、それを押しのけて、私は体を起こした。今日も、真虎君の家に行こうと思っている。だから、ゆっくりとし過ぎている暇なんてないんだ。
休みの日は録画したドラマを見るのに時間を使いがちだけど、今日はそんなことはしない。絶対に、真虎君に話を聞いてもらうんだ。レコーダーの容量がいっぱいだってお母さんが言ってたけど、それも今はどうでもいい。今日も、明日も、思いっきり真虎君のために時間を使うつもりだ。
時間的な余裕があると、すんなりとバスに乗ることができる。しかも、休日のバスだからか、人も少ない。駅前のバス乗り場から、大体10分から20分くらい。それで真虎君の家の最寄りのバス停に着く。そこからまた歩かなくちゃいけないけれど、昨晩に比べれば楽だ。
今日は、真虎君に会えるのだろうか。何が何でもあってみせると意気込んではいるけれど、それが本当にできるかどうかは、難しいと思う。本当に、できるのかな。
いやいや、ネガティブに考えちゃダメだ。なんとか、頑張ってみないと。
一度考え始めると、嫌がおうにもネガティブ思考になってしまうから、気分転換をしなくっちゃ。そうだ、昨日のケータイ小説の続きを読もう。
そう思って読みだしたけれど、読んでいる間にも、やっぱり真虎君のことを考えてしまって、内容が全然入らなかった。自分に本当にできるのか、悩みに悩んでいる内に、あっという間に目的のバス停まで到着していた。
バスを降りたら、後は真虎君の家まで一直線で向かう。今日は絶対に、と思えば思う程に、緊張感が胸を圧迫する。でも、引き返すわけにはいかない。
鼓動の高鳴りが収まらないまま、真虎君の家の前に着く。ここも、昨日と全く変わっていない。人の気配も全くしないし、真虎君の部屋はカーテンが閉められている。
よし、行こう。そう思って、インターホンに指を掛けた時だった。
「あの、咲宮さん、ですか?」
突然、声をかけられた。声のする方を見ると、金髪のお兄さんがいた。あれ、どこかで見た覚えがあるような気がする。
「はい、そうですけど」
ちょっと失礼だと思ったけれど、顔をじっくりと眺める。そうだ、昨日立ち寄ったスーパーでぶつかったあの人だ。でも、どうして私の名前を知っているんだろう?
「どうも、初めまして」
「は、初めまして」
向こうは覚えていないのか、よそよそしく頭をぺこりと下げて会釈をする。格好に似あわず、凄く礼儀正しい。
「あの、どちら様ですか?」
気になって、尋ねてみると、金髪のお兄さんはちょっと戸惑ったように間を置いて、こう答えた。
「立木丈って言います。去年の暮れまで高校に通ってて、今では建設業の仕事してます。それで、湯川真虎の親友だった者です」
ども、作者です。来週でこの章は終了(章の管理してないけど)です。
そして、来週の更新でちょっと間が空きます。続きかけていないのです。




