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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
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38/105

寝る前までの……私のこと!

エコバックが随分と重たい。明日明後日の休日のために、結構買い込んでしまったからだ。おかげで、エレベーターの無いマンションの階段を登り切ったときには、手の肉にエコバックの持ち手が食い込んでしまって、かなり痛かった。

 やっと私たち家族の部屋の前に到達する。お母さんはもう帰っていた。中からテレビの声が聞こえてきている。すっかり遅くなってしまったなぁ、と思いながら、ドアノブを掴んで戸を引く。もちろん、鍵はかかっていないことはよそうがついていた。

「ただいま」

 靴を脱いで、急いでリビングへ向かう。

「おかえりぃ~……叶恵~、お腹空いたぁ~」

 お母さんはソファにぐったりと寝転んで、まるで小学生の男の子のようなことを言う。

「遅くなってごめんね、今から作るから」

 立場が逆だと思う。普通はソファに寝ているのが娘の私で、仕事帰りのお母さんが今からご飯を作るんじゃないのかな? ま、もう慣れている事だから、私にとってはこっちの方が普通なんだけどね。

 それに、いつも通りならば、こんなに遅くなることはない。遅くなってしまったのは、私が真虎君の家に行っていたせいだ。文句なんて言う権利なんてないと思うし、私の方に非があるんだ。それに、お母さんは体調がそれなりに回復しているとはいえ、お仕事をしている間に、いつ倒れてしまってもおかしくはない。かなり働いてきているみたいだし、ここは私が頑張らなくっちゃ。

 私はダイニングキッチンに向かって、料理を始める。手軽に作れるものにしなくっちゃ。これ以上お母さんを待たせるわけにはいかないもんね。

「あ、ご飯炊かないと……」

 まずはそれをしなくっちゃ。こればっかりは時間の短縮の使用が無いから急いで・・・・・あれ? 炊飯器を見てみると、ご飯はもう炊けているみたいだ。リビングの方のお母さんを見てみると、お母さんがソファに寝転びながら、したり顔を見せていた。

「ご飯ぐらい、お母さんにだって炊けるわよ」

 ご飯ぐらい、というかそれだけしかできないよね、お母さん。でも、おかげで助かった、これで、後は他を作るだけだ。

「ありがと、お母さん」

「いいのいいの。いっそのこと、全部お母さんに任せてもいいのよ?」

「ダメ。お母さんの健康に悪いし、何より私が食べられないんだもん」

「お母さんは買ってくるわよ、コンビニとかで」

「それこそ健康に悪いよ。いいの、ご飯のことは私に任せてよ」

 そう言いながらも、いつもよりも何時間も遅れての悟飯になってしまっているから、お母さんにはかなりの迷惑を掛けていると思う。明日も仕事なのに、寝る時間をかなり奪ってしまっているんじゃないかな……。

「叶恵、気にすることはないのよ?」

「え、何が?」

「アンタ、とぼけなくっていいの。すぐに顔に考えていることが出て来るんだから。ごまかしたって、お母さんにご飯を作ってあげるのが遅れたのを気にしてるって、よくわかっちゃうんだから」

 すっかり見透かされていた。っていうか、そんな細かい事まで分かるくらい表情に出ていたのかな? いや、さすがはお母さんって思うべきかも。お母さんにはなかなか隠し事ができないや。

「ごめんね、本当に遅くなって」

「だから気にしなくていいのよ。お母さんは勝手に何か食べるし、無理に時間を作って家に帰ってくることなんてないの。青春は一度きりなんだから、若いうちにできることはなんでもやっときなさい」

 なんだか、懸さんみたいなことを言ってるなぁ、お母さん。お母さんのことを放っておけるわけじゃないけれど、私も頑張らくっちゃいけないね。

「何なら、一泊や二泊くらいの外泊は許してあげるわよ」

 ……お母さん、なんだか勘違いしている気がする。

「あ、そうだ。叶恵。レコーダーの容量がそろそろいっぱいだから消しとかないとこれ以上録画できないわよ」

「え? そんなに溜まってたの?」

 最近はなかなか時間が作れないから、つい録画したドラマを見損ねていた。今日はもう見れないだろうし、休みの明日か明後日かなぁ……。




「はぁ~、疲れた」

 ご飯を食べた後に言うことじゃないと思う。もっとお腹いっぱい、とか美味しかった! とか言いたいよ。でも、食べた後に一人っきりになって感じたのは、今日のこれまでのことで積み重なった疲れだけだった。

 ベッドに寝転ぶ前に、鞄からスマホを取り出す。寝転びながらメールとかのチェックをしておこう。いつも、この時間帯になるとお嬢からのメールが届いているからだ。

 疲れた体をベッドの上にぽすんと投げ出すと、ベッドが柔らかく受け止める。ベッドの柔らかさに、疲れが溶け込んでいくみたいだ。

 スマホを見てみると、お嬢からメールが来ていた。SNSではない辺り、まだこういう電子機器になれていないんだな、と思う。家や順一君が厳しいとこの前お嬢が言っていた。

 お嬢のメールの文面はこうだった。

【私、インターネットがこんなに素晴らしいものだとは思いませんでしたわ。最近はケータイ小説というものが流行っているらしく、ついつい時間を忘れて読んでしまいましたの。でも、それを順一に言ったら、お嬢は悪影響を受けるから止めろ、と私の携帯電話を奪われてしまいましたの。家に帰るまで返して下さらなかったのよ? 酷いと思いませんか? あ、でもこのお話をあなたに言ったら、草が生えてしまいますわね。草が生えるとはご存知ですか? 笑えると言う意味らしいですよ】

 お嬢がとびっきりの笑顔で話しているのが想像できる文面だ。そして、早速悪影響を与えられている。順一君が懸念するのも良く分かるなぁ。それに、ケータイ小説って、結構前にブームがあったんじゃなかったかな? ちょっと時代遅れな感じのあるところも、お嬢の可愛いところかもしれない。

 メールに返信をすると、ぜひケータイ小説を読んでほしいと、URLが送られてきた。折角だから見てみると、見る見るうちにハマってしまった。

 全く自分に振り向いてくれないバカな年上に片思いをしている、ちょうど私と同い年くらいの女の子の物語。等身大で、なんだかこのみちゃんが置かれている状況に似ているようで、思いのほか感情移入できた。

「叶恵、そろそろお風呂入りなさいよ」

 リビングの方からお母さんの声が聞こえた。つい、時間を忘れて読みふけってしまった。時計を見れば、いつもならお風呂に入って、上がっているはずの時間だった。ただでさえ、帰るのが送れたのに加えて、ケータイ小説に時間を割きすぎてしまったみたいだ。急いで、お風呂に入らないと。



 お風呂上りに部屋に戻ると、スマホに誰かから連絡が来ていた。見覚えのないアドレスだったから、迷惑メールなのかもしれないと警戒しながら開いてみる。

【勉強やれよ 一和】

 ワンちゃんからのメールだった。まだ、アドレスの交換とかしてないはずだから、目を丸くしてしまう。どうして私のアドレスを……あ、そうだ。千和さんと、ワンちゃんのお姉さんとはアドレスを交換し合っていたんだ。もしかしたら、千和さんがワンちゃんに教えてあげたのかも。

 初めてのワンちゃんからのメールだ。ふふ、と自然に笑みがこぼれる。

「でも、勉強やれよって……」

 ワンちゃん、らしいのかな? 

作者です。ちょっと今回のあとがきは長めです。むしろ、この回のお話には全く関係ない(これまでもそんなことは何度もあった)ことをつらつら~と書きます。


レビューをしていただいたり、感想を頂いたり、ブックマークをして下さったりと、PVも全体で5000を超えて、自分がこれまでに書いた中でも一番読んでもらえている作品になりました。


とても、とて~~~~~~~も、嬉しいです。まだまだ続きますし、ほぼ確定で更新が停止することがあると思いますが、これからも読んでいただけるとより嬉しいです。



より多くの人に読んでもらいたい、あわよくばこれを読んで楽しいと思ってもらいたい、稚拙な物を書いている自分にはまだまだ分不相応の考え方かもしれませんが、それを信条にすることが何かを作る志であり、醍醐味でもあると自分は考えております。


ですので、これからも楽しいと思いながら読んでいただけるものを作れていけたらなぁ、と思っています。


読んでいただき、ありがとうございました。今後も「コワモテ!」をよろしくお願いいたします。






……今気付いたけれど、更新し始めてからとっくに1年経過しているんですね(笑) 叶恵たちとも長い付き合いになったなぁ。

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