表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
PR
105/105

エピローグ

 空は快晴。冬の空に似合わないほどに晴れ渡っている。空気はからっとしているけど、空気はしんと冷めているけれど、今日はいい日になりそう。

 あれから数日が経った。

 懸さんはまだ入院中。いくら元気になったと言っても、お腹を刺されたんだから当然と言えば当然だ。

 このみちゃん曰く、それでも元気が有り余って見まいに行くたびに早くここから出たい、青春がもったいないとうるさいそうだ。

 このみちゃんったら、毎日お見舞いにいってるんだよ。学校が終わったらすぐに。ちょっとは二人の距離も縮まっているのかな?

 そんなことを一度尋ねてみたんだけど、

「順一もなぜか毎日やってくるから無理ね」

 と言っていた。多分、嘘。だって順一君、別の病院に通院してるから毎日は懸さんのお見舞いにはいけないはずだもん。それに、私が読んでいたネットの小説に、ちょっとだけ甘酸っぱいことも書いてあったし。

 きっと、あの二人は順調。

 そんなことを考えながら、学校へ向かう。いつもいつも、毎朝通る駅の前に着くと、そこで珍しい物を見た。

「……やぁ」

 私服姿の真虎君だった。

「あれ? 学校行かないの?」

 尋ねると、真虎君は後ろを指さした。そこには同じく私服姿の海鞘蕗と殿面と、こっちはいつも通りの学ラン姿の泥沼がいて、何やらパンフレットのようなものを見ては楽しそうに話していた。

「あいつらが隣の県にくるバンドのライブに行くから、僕も付き合ってサボるし」

「いや、学校くらいいきなよ。別に昼間からするわけじゃないでしょ?」

「泥沼が真っ先にいきたいって興奮中。全員五時に叩き起こされて集合させられてるし」

「うわぁ……迷惑」

「ほんと、迷惑だし。ま、僕らは彼の留年に付き合う気はないから、今日だけだし……それに」

 そう言って、真虎君は後ろの三人組を見ながら、

「案外、楽しそうだし」

 嬉しそうに一言付け加えた。

「……サボるのはほどほどにしなよ?」

「分かってるし……じゃあ」

 真虎君は泥沼たちの元へ戻って行った。

 はーあ、サボるのを見過ごすなんて、前の私じゃ考えられなかったかも。そこまで委員長してるわけじゃないけどさ……あの学校じゃサボるのも日常茶飯事の人多くて。やっぱり、私も大分あの学校の空気に慣れて来たかも。

 とはいえ、私はサボる気はない。引き続き学校に向かって歩く。

 液を通り過ぎて、デパートの前を通りかかると、

「おはよう、叶恵ちゃん」

 今度は作治君に出会った。

「おはよう。久しぶり」

「あれ? 普通に挨拶してくれるんだ」

 不思議そうに大げさに手を挙げる。

「普通にあいさつするよ。友達だもん。最近はずっと休んでたけど」

「僕のあんな姿を見てそう言ってくれるのは、きっと君だけだよ」

 あんな姿、とはチンピラを率いて、ワンちゃんと喧嘩していたことだろう。

「そーいう人だってことは意外だったけど、別にどうってことないよ。似たような人たくさんいるもん」

「ヤクザの子供が?」

「ワンちゃんだってそうだったでしょ?」

 そういうと、作治君は愉快げに笑った。

「君もたくましくなったなぁ……ま、そういうとこが魅力的なんだろうね」

 褒められてる?

「ところで、今日は学校に来るの?」

「行かないよ。今年いっぱいは休むつもりさ。親父に組の下っ端を使ってたことがバレちゃってね……その後始末と償いをしなくちゃならないんだ」

「そっか。じゃあ、年が明けたら学校にくるんだね?」

「学校に行かせたがるね君は。ま、そうしなくちゃいけないんだけどさ」

「そのときはまた挨拶してあげるよ」

「そりゃどうも……今日はさ、今年最後になるだろうから、一度会っておきたくてね」

 それだけを言うと、作治君は歩き出した。学校とは全く反対の方向に。

「大神によろしく伝えといて、ごめんって」

「……うん」

 私は彼の背中に返事をした。作治君も作治君で、いろいろと複雑なんだろうし、プライドとかもあるのかな? 男ってめんどくさいね。

 さぁ、気を取り直して学校に……と思ったのだけど、私の歩いている歩道の脇に、車が一台止まった。

「おはよう、咲宮さん」

 道路側のドアが空いて、車の屋根の向こうからひょっこりと顔を出したのは先生、大神志波さんだ。

「おはようございます、先生」

 挨拶をしていると、後部座席のドアが開いた。

 大きな体を小さく丸めて、外に出てきたのは……。

「おはよう、ワンちゃん」

 ワンちゃんだった。

「……ああ」

「ああ、じゃないだろ一和。あいさつくらいしろって……」

「るっせぇな……」

「人前では口のきき方にも気を付けろ! 仮にも先生なんだぞ!」

「ちっ」

「舌打ちをするなぁ!!」

「朝からデカい声だしてんじゃねえよクソ親父!」

 ……普通の、親子のやり取りだ。

「ここまで送ってもらっといて何て言い草だ! ったくぅ……はぁ、後は歩けよバカ息子」

 ワンちゃんは返事もせずに、ばたんと乱暴に車のドアを閉める。

「じゃあ、咲宮さん、あとで学校で」

 先生も車に戻って、すぐに出発して行ってしまった。残されたのは私とワンちゃんだけ。

「ワンちゃん、おはよう」

 私が笑顔で言う。

「……ああ、おはよう」

 そっぽを向きながらも、ワンちゃんはやっと言ってくれた。私が笑顔を向けると、ワンちゃんはすぐに別の方に目線を向けてしまうのだ。最近、分かってきたことなんだけどね。きっと照れてる。

「じゃ、いこっか」

 もう一つ分かった、というか変ったと言った方がいいのかな?

 そっと手を差し出してあげると。

「……」

 黙ったままだけど、ワンちゃんも私に手を差し出してくれて、繋いでくれるんだ。

 ちょっと恥ずかしい。ワンちゃんはかなり恥ずかしがってると思う。でも、こうやって二人で手を繋いで歩くのは二人でいるときに、いつもすることだった。

 懸さんのいう青春ってこういうことなんだろうね。嬉しいんだけど、ちょっと恥ずかしい。それが連続で起こって、胸に湧いてくる幸せを実感する。

「ねぇ、ワンちゃん。こんどのクリスマスなんだけどね……・」

 そして、この幸せはいつまでも続くんだろう。いつかお腹いっぱいになって、幸せから普通のことになっていくまで。

 その時は遠いのか、近いのか、私には分からないことなんだけど……。

「ねぇ、聞いてる?」

「聞いてるよ」

「じゃあ、さっき言った予定通りでいい?」

「うん……あと連れていきたいところがあるから、付いてきてくれるか?」

「連れていきたいとこ……どこ?」

「……言わない」

「内緒? ……まぁ、いっか。楽しみにしてるからね」

 私は確信してる。ずっとずっとできるだけ長く、続いてくれるって。

ども、作者です。最終回です。


書き終えたのが一週間か二週間前だったと思います。

最初はただひたすらにロスを味わいました。あ、終わったんだなって、自分の作品で、ましてや自分で作り終えた時に、たいしていい出来であるとは言えないものであっても、ロスってあるんだなと、こんな感情を作品を書き終えたときに感じるんだなと感心しましたね、我ながら。


それから今日のこの時間にいたるまで、書き終えて、更新を続けて、丸々4年くらいですか、それくらいやってきたことに終止符を打つ、ついに完結設定を「この部分で完結します」にするときがやってきた事に対して、複雑な気分になりますね。

どちらかといえばネガティブな複雑さというよりは、ポジティブとネガティブがうまい具合に混ざってる複雑さです。


終えられて良かった。もっとクオリティを上げれれば良かった。

キャラクターたちの扱い方が分かって良かった。キャラクターたちの心情をもっと理解できていれば良かった。

とりあえずやりたい書きたいことは書けて良かった。もっと別の書き方や表現を身に付けられれば良かった。エトセトラエトセトラ……。


こんな感じの複雑さです。

多くの人も読んでいる訳ではなく、ひっそりとこつこつとマイペースにやり続け、努力して向上させた部分よりも、やり易さや簡単さを選んで妥協した点が多々あり、出来栄えは自分でもなんだこれと思うようなものです。


それでもまぁ、そんな出来栄えの良くない作品でも、自分の子供のような、例えは悪いですけど出来の悪い子供のような存在なんですね。なんですねというか、書き終えてそんな出来の悪い子供になったんだと思いますけど。


そんなバラガキに触れ、読んでいただいて、意図してか意図せずかは分かりませんがブックマークを付けて下さったりとか、点数を付けて下さったりとか、レビュー感想を書いて下さったりとか、いろいろと反応をして下さった方々に、あとは伝えるだけでしょう。


最後までのお付き合い、誠にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ