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侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
2章最終編 華麗なる推理劇
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第82話 彼らの旅の終焉3

 ヴィクトル・クーベリックは冷静に分析してみせ、そして付け加えた。


「今一つ、アウグス大公閣下自身が果たしてその戦いに耐えられるのかという疑問が残ります。この決闘は、ご子息ご息女にそれを証明する為のものであった。そういう側面も持っていた、そう言って差し支えないと心得ます」

「なんと無謀な……親子で殺し合うなど、アウグスに子殺しなど出来るはずがない」


 殿下の表情は歪み、そして力なく瞼が閉じられた。意を決すかのよう拳を握り締め、ロイド・ヴァレンシュタインが最後の言葉を差し出した。


「話し合いは決裂、双方同意の下決闘となりました。ですが我々は見ていられなかった。何度も助けに入ろうとしましたが、大公閣下に手出し無用と拒絶され、ただただその場で見届けることしか出来なかった」


 二人の騎士から口惜しさ、苦悩と苦渋が溢れ出す。これ以上彼らに語らせることは出来ない。全ての責任は私が持とう。事の元凶であり、追放が確定している私こそがそれに相応しいのだから。

 一歩踏み出し私は告げる。


「偽りを述べた二人の騎士は後程私が処罰致します。まず、実行犯は上のご子息ご息女の五人、及びエーガー城の精鋭部隊。議事堂という密閉空間に誘い込み、精鋭部隊での総がかりが実行された。でなければアウグス大公閣下を仕留めることは不可能です。精鋭部隊及び五人の内、深手を負い未だ苦しんでいる者がおりました。三男のクリスティアン氏です。彼は結局、我々に一言も発しませんでした。首、頸部の損傷は聖魔法でも回復がおぼつかないのでしょう」


 エミールも深手を負っただろうが、これは報告しないでおく。粗は目立つが努めて前に出ず、弟妹に対応させた手腕は評価していいだろう。だからこそと堂々と胸を張り口を開く。


「加え主犯を申し上げるなら長姉エミール、次いで次兄グスタフ、更に側近達と言わざるを得ません。クリスティアン、エリザベート、フリートにも言い分はあるでしょうが、格上二人とその側近らに言われては従うほかない。ちなみに戦闘のプロであるグスタフは無傷でした。時代を変えるに相応しい逸材かもしれません。この眼ではっきりと確認しております」


 欺瞞に満ちた説明にそれでもゲッツア殿下は応じた。


「全員か……確かに訴えは五人の連署、側近の名もあった」

「激戦だったのでしょう。議事堂本会議場は、聖魔法による修復と隠蔽工作が大量に施されておりました」


 これにライン騎士が同意を示した。ラムダは蚊帳の外だが当たり前である。


「犯行の動機はあくまで代替わりを実行する為。また莫大な相続権を欲した彼らの都合によるもの。ですが、これにより殿下の意向に逆らう者は処断されました。また、新たにグランバッハ大公家を担う資格も証明されたことになります」


 虚言溢れるそれを差し出し、全ての者に対し言って聞かせる。


「そして私は言いました。犯人はここにいる、と」

「その心、聞かせて欲しい」


 殿下の嘆願に応じ、


「ここにいる全ての者、私も含め全てが咎人です。グランバッハ一族及び側近らの計画的犯行に気づかず、阻止する手立ても講じず事実止められなかった。これは私エルカ・ライン・アールブルト、そして各騎士団の落ち度。法的な罪はなくとも、その無力を自覚し痛感すべきであると断じざるを得ません」

「相分かった。その旨ハラルド陛下に伝えておく。また王家、宰相を務めこの件を差配した私からも詫び状を出す。ライン騎士団は必要とあらば告発状を出されるがよい」

「受け取ろう」


 ライン騎士の男が毅然と応じたことで、告発劇の幕は下ろされた。そこにやり終えた達成感や清々しさはなくとも受け入れるしかない。ライン王国、南ルナリアを魔族の手から死守する為にこそ我々は存在する。


 だからこれでいい、これで良かったのだ。

 亡きアウグス大公閣下が望んだ結末なのだから。

 ゲッツア殿下のお顔をこれ以上は見ていられない。

 我々の旅はここで終わり、そして再び始まる。

 新たな時代を迎える為に私達は踵を返し第二執務室を去る。

 言葉にならぬ音が耳に届こうと、決して立ち止まり振り返らぬようにと。

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