表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
ミステリーの時間編
PR
63/84

第63話 ミステリーの時間4

 本会議場が静けさに包まれる。

 終わりという言葉を聞き、騎士達は内心安堵しているだろう。かつての同僚など、エーガー城内には彼らの知り合いがいる。その伝手を使い見取り図を用立ててもらったのだ。これ以上継続するなら彼らと対立しかねない。

 沈黙は透き通るよう静謐を運び、事の終わりを告げていた。

 長く静かな時間。

 だが、いつまでもこうはしていられない。


「ヴィクトル、一つお願いしていいかしら」


 沈黙を裂き、教会騎士ヴィクトル・クーベリックを見て取る。当初優男に見えた彼は今では頼もしく思えた。丁寧な所作で立ち上がる彼に、


「居館で叫んだあれなんですけど、本心と受け取ってよろしいですか」


 騒ぎの発端となった、あの所属騎士団に対する愛の発露を確かめた。彼はらしくもない笑みを見せ、


「はい。教会騎士団には私の愛する仲間がいます。永遠であれと、心から思います」


 誇らしげではあるが、どうやら照れているらしい。そうか本心だったか。では一つ頼み事といこう。


「あれ、もう一度ここでやってもらえますか」

「はい?」


 途端、ヴィクトルは怪訝な表情を浮かべ戸惑いを隠せずにいる。それでもお願いする。


「最後に、これにて会議を終了する、と付け加え再現していただきたいのです」


 無理な頼みは承知の上。さすがに皆苦笑してヴィクトルに同情を寄せている。ラムダだけは興味もなさそうだが、


「やれよヴィクトル。教会騎士団は最高で最強なんだろ」


 ロイドにからかわれ、


「会議の締めを任せられるとは羨ましい。次はライン騎士団が受けもとう」


 ライン騎士に背中を押された。

 ヴィクトルは露骨に顔に出すタイプではない。そんな彼が口を真一文字に結ぶ姿はとても愛らしく思えた。溜め息一つ吐き、彼は首を縦に振った。


「エルカ様のお望みとあれば、今一度ご披露致します」


 恨み節も込められたそれを見て、やはり可愛いと思ってしまうのは仕方がないことだろうか。女性が私しかいないのが残念だ。話に花を咲かせたかった。

 皆が耳を塞ぐ仲、大きく息を吸いヴィクトル・クーベリックは心からの叫びを声にした。グランバッハの旗の下、これで会議は終了となる。


 正面玄関が開くと、朱色の空が広がっていた。陽の傾きは激しく夕暮れが始まりつつある。警備を任された病院騎士団員三名が出迎え、


「問題ありませんでした。グスタフ様が早々に立ち去られたので、誰も手出しは出来ません」


 唯一まともと思われる病院騎士が告げ、外の様子を報告してくれた。礼を言い、話し合いの末調査は終了と決まった、そう告げると彼は周囲を窺いながら声を潜めた。


「待ち人がいます。居館入口をお確かめ下さい」


 言われた通り視線を向けると、遠くにフリートの姿が見て取れた。あのガキ……今更なんの用だ。もう終了と決まった、話すことはない。まあいい、と小さく嘆息し病院騎士団員三名に確認する。


「本当に何も問題はありませんでしたか」


 三人は顔を合わせ、それから皆で首を縦に振っている。そうか、何もなかったか。些細なことが一つも。


「エルカ様、私が先導致します」


 ロイドはそう告げ居館の入口へと歩み始めた。残る者は私の周囲を固め警護という名の監視を実行する。庭園を横に私も歩を進める。朱色に染まるエーガー城は美しいだろう。だがそれを愉しんでいる場合ではない。徐々に居館の入り口は近づいてくる。

 入り口には衛兵がいなかった。どうやらフリートが追い払ったらしい。何もこんなに目立つ所で待たずともいいだろうに。互いの距離が縮まると、ロイドとヴィクトルが私の前に立ち遮る姿勢をみせた。グランバッハ一族との話し合いの内容は彼らも説明を受けている。これ以上のいざこざは困るということか。

 そのフリートに表情はなかった。我々を手玉に取ったあの姿からは想像が付かない程、普通の少年に見える。関わりたくもないが仕方なく声をかける。


「何か用ですか」

「はい。居館の地下室にてお話ししたいとのこと。案内は衛士が行うので、そちらに従って下さい」


 無表情な少年はそう告げ頭を下げた。そして姿勢を戻し続ける。


「エルカ嬢、ラムダ殿のみで入室下さい。騎士の皆々様はここでお待ちを」


 彼は入口に腕を伸ばし、自然私と目が合った。揺るがない視線から、偽りではないことが読み取れる。

 どうやら本当に待ち人がいるらしい。

 ラムダを確かめると目を細めていた。いかにも訝しげだ。

 騎士達は私に判断を委ねるらしい。動揺は見て取れない。

 ならばお誘いに乗るとしよう。


「役目ご苦労。案内させよ」


 フリートに告げ私から居館へと向かう。ラムダが続き我々は再び居館の内部へと入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ