第61話 ミステリーの時間2
気を取り直し、改めてライン騎士に問う。
「グランバッハ一族の序列はどうなっているの?」
これにライン騎士は居ずまいを正し応じる。
「さて、ラムダ殿の方が詳しいやもしれませんが、常にアウグス大公閣下が君臨しておりました。今後どうなるかはともかく、私の認識ではまず長兄ミゲルが常にこのエーガー城におります。続き長姉エミール、次兄グスタフ。次に三男クリスティアン、次女エリザベート。とまあ後はどうでもよろしいかと」
おや、フリートの名前が出てこない。しかし閣下への敬意は感じられる。アウグス閣下亡き後、ライン騎士団と揉めなければいいけれど。まあ私には関係ないか。
「ミゲル、エミール、グスタフ、クリスティアン、エリザベートでいいのね」
「そうなります」
ならばこの五人の序列か合議制。もしくはそれぞれの側近が加わった力関係。そうだ、と今度はラムダも含め確かめる。
「グランバッハ一族にも側近はいるわよね」
「当然だ」
あっさりとラムダが応じたので彼に問いかける。
「だけど閣下は護衛も付けず、側近もいない状態で会見に臨んだわ」
「そうだったな。だけれど有力者はこの城に今もいると思うぞ。それぞれの側近だ。顔を見せない戦略だろう。君らが何をするか分かったものではないからな」
ラムダは小馬鹿にしてくるが、これで大体の結論は出る。
「皆に問います。答えられる者だけ応じて下さい。あなた達はグスタフ氏をどう評価しますか」
これにまずロイドが声を上げた。
「そこのライン騎士が挑発したと耳にしておりますが、立派な対応と思われます」
「同じく。さすがはアウグス閣下のご子息と心得ます」
続けヴィクトルが応じ、最後にライン騎士が語り出した。
「ギルド領が近く腕に覚えはあるのでしょう。戦歴こそありませんが、ハンターとしては一流です。ちなみにですが、エルカ様の顔を潰す者には我らライン騎士、容赦致しません。名前と顔を覚えていただかなければ、帰る場所がなくなりますので」
なるほど、ライン騎士団上層部からそういう指令を受けていたのか。どうしても私に近づきたい。と、名乗ってもいない男の冗談を真に受けても仕方ない。
「では連れ歩いた側近達はどうです」
これにロイド、ヴィクトル、ライン騎士は、
「使いようもないかと」
「あれが演技なら、大したものです」
「二名のみ有能。それ以外は雑魚過ぎて語りたくありませんが、あえて言うなら捨て駒です」
辛辣な評価を並べた。二名のみ、私の認識と一致している。これでグスタフの評価は定まった。そしてあちらのやり口も。加え尋ねる。
「閣下に側近はいましたか? 影響力を発揮出来る程の」
「いません。グランバッハはアウグス閣下のみ。アウグス閣下とライン騎士団にて、この領土を治めております」
ライン騎士が断言し、ラムダを含め誰も否定しない。つまりそういうことなのか。ライン騎士団半端ないな……まあそれはいい。
では次だ。ここからが本題である。
呼吸を整え口を開く。
「改めてお尋ねします。私は今回の不幸を事件と考えています。あなた達の見解を教えて下さい」
今までよりも踏み込みんだ問いかけに、すぐ応じる者はいなかった。ラムダは宙を見つめているが、騎士達はどうだろう。
「しかしそれでは、不可解過ぎます」
教会騎士の一人が沈黙を裂き言葉にした。頷き続きを促す。
「我々も現場検証は行い、閣下のご遺体も確認させていただきました。もちろんエーガー城側の後ではありますが、寝室に不可解な点はありません。目立ったものもワインや酒などに限られ、ご遺体に不審な点は見当たりませんでした」
そうだろう。不自然な点が不自然な程存在しない。ただし、エーガー城側対応後の話なのだ。皆もだが、ロイド、ヴィクトルの二人まで口を閉ざし語らない。意識的にライン騎士の男に視線を向けると、彼は自分の出番かと自覚したらしい。そして、
「まあ、どうでもよいのでは?」
臆面もなく実に彼らしい回答を披露した。どうでもよい、か。しかしそれで、ゲッツア殿下が納得するだろうか。このままただ帰ることが許されると。
違う。そもそも彼らは一つの可能性を考慮していない。
この世界において絶対になってしまった現実。
そして、我々がここにいるということ。
だから、
「私はこう考えます」
私はこの言葉を口にした。
「犯人はここにいる」




