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侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
第2章 侯爵令嬢の華麗なる推理劇
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29/84

第29話 秘密会議

 こちらの心情などお構いなく、ラムダは熱く語る。


「まずはお味方と情報の分野におき一戦と及ぶ。あえて言いますが、上申された内容いかんで、皆さんの今後の処遇にも障りましょう」

「分かっている。皆、覚悟の上ここにいる。貴公も同様であろう」


 先日、王宮内で諸侯の極刑を主張し、ラムダをかばったライン騎士団の一人が応じた。ラムダは騎士に視線を送りゆっくりと頷いて見せる。

 続いて、同様の立場を取った神殿騎士団の者が口を開く。


「諸侯の半数はエルカ・ライン・アールブルト侯爵令嬢により調略済み。いや、我々と意を共にする。しかし、残る半数は未だ旗色鮮明ならず。問題はこちらであろう」


 ラムダはそれを受け取り応じる。


「教会勢力は各騎士団によって指揮を執り行うことが皆様の意思。現状軽々に我々が口を出すことは避けたい。言わずともお分かりでしょうが、王家、或いは陛下直々の裁断となるでしょう」


 そうだろう、と誰かが零し皆頷いている。

 確かに、教会と向き合うには陛下ほどの人物でなければ務まらないか。私がやってもいいけれど、それは殺戮の道へと続きかねない。司祭を告発し生け捕りにした私が矢面に立てば、波風どころか色々吹き荒ぶ。よくよく考えずとも、怒りと勢いに任せて派手にやり過ぎた。ま、今となっては仕方ないのだけれど。

 そもそもライン王国における教会の勢力図は複雑で、私が担当することはないだろう。追放決定してるし。


 私は終始げんなりした顔でそれら眺め、居心地の悪さを誤魔化していた。

 各騎士団は教会から主導権を奪わねばならない。拝み屋を引きずり下ろし実働部隊が執り仕切る。張り切るのも理解しよう。

 殿下の部下、官僚や地方役人の中には貴族家の人間も含まれ、彼らが励むのも分かる。大事に関わり出世栄達を目指すのは当然だ。女性の割合が低いのは気になるが、今取り掛かる問題ではない。

 しかし、ラムダは彼らと根本的に立場が違う。

 今彼は、殺戮勇者の北ルナリアでの実績、南ルナリアでの活動について滔々と語っている。続けて、奴が聖ナルタヤに付いた事実をどう捉えるかを皆に問うている。が、そもそも問わねばならないのは、


「私に突然婚約破棄を通告し、悪魔崇拝だと告発騒ぎを起こした挙げ句追放だのと主張して、そこから半狂乱の道化染みた振る舞いを見せておいてからの、なんか実はいい人だった的なムーブで退場した奴が、どの面下げて私の前にいるのか……」


 と、自身に問うことではないだろうか。一体、恥の概念はどこにいったのだ。そんな私の長く小さな独り言を、


「エルカ嬢、意見があるなら手を挙げ大きな声でお願いしたい」


 ラムダはやはり、こちらも見ずに拾い上げた。完全に向き合うお見合い状態で、よくもここまで視線を逸らせるものだ。窓の外ではなく私の目を見ろ。手を挙げ大きな声で話せとか、子供に言い聞かせるような文言並べやがって……。

 頭にきた。もういっそ立ち上がり、


 ――なんかみんな張り切ってるね! でも私は追放確定してるから、お味方と一戦に及ぶとかそんな内輪の出世争いどこまでも無関係! さっさと帰らせろ! こちとら後輩二人と税金でフルコースディナー食べに行く一大イベントが待ってんだ!


 と、声を大にしてやろうか。

 もちろん、本来恨むべきはゲッツア殿下だと分かってはいるが、対象は今ここにいない。代わりとばかり、とことん目を合わせようとしないラムダを強く睨みつけていると、


「しかし、殺戮の勇者はなぜ南下したのだ。魔族により陥落したという北ルナリアを守り切れなかったのは分かる。だが北に留まらず南ルナリアを頼る理由が定かならない」


 病院騎士団の者が空気を一変させるよう、あえて私に問いかけてきた。その時、初めてラムダがこちらを確かめた。様子を窺うような視線を、今度は私が外し返答とする。だからラムダは、


「北ルナリアの実状は分かりません。あちらは海を越え軍勢を送り込んできましたが、現状こちらからは渡れない。海の魔獣は陸の魔獣を上回る。ですが全ての情報を総合すれば、殺戮の勇者は国家の支援、軍勢を求めていると考えられます」


 代わりに応じた後、更に続ける。


「ではなぜ軍勢を求めるのか。奴の強さは誰しもが認めるところ。しかしそれでは対応出来ない、出来なかったということ。ならば答えは一つ」


 そう、答えは見え透いている。


「奴が求めるのは点の破壊力ではなく、面の支配力」


 この日二度目、ラムダと視線が交わり私はゆっくりと頷いた。

 そうして内心で告げる。

 言っとくけど、別に許したわけじゃないからな?

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